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金融庁のデジタライゼーション戦略 ―横断法制と仮想通貨の新しい規制の方向性― | 2018年度フィンテック研究フォーラム公開シンポジウム

2019.03.11

www.carf.e.u-tokyo.ac.jp

金融庁市場局参事官の松尾です。

銀行周りの法制と保険周りの法制とフィンテックを担当しています。

いま植田先生からお話があったあたりを簡単に、金融庁が考えていることをご説明できればと思います。

いままでデジタルではなくてアナログで銀行員なり保険の人達が足で情報を集めて自分の手で商品を作る。お金持ちや大口顧客以外はコストに合わない。

ここにスマホやAIが入ってくるといろいろな情報が自動で蓄積する。こういう行動を取る人にはこういう商品が良いということが非常にコスト安く提案できる。そういう動きが出てきている

勤め先や年収から得ていた情報が、一日何歩歩いてどういう行動をしてということがスマホから情報が入ってくる。生活情報を含めて色々なサービスを提供する形になっていくというのが大きな流れで、この中で金融サービスで切り離せない、健康上のアドバイスまでするようになる。金融と非金融の情報を組み合わせて利活用するようになる。

そういうときにフィンテック企業はどうなっていくかというと、いままで銀行証券保険はすべての商品の品ぞろえをやっていた。利潤が薄いものも儲かるものもやっていたが、儲かる部分を切り離して、決済、カード、P2Pなど、利潤が高いと思われる部分を切り出しているのがフィンテックの最初の形。

それがさらに発展すると、切り出したものを組み合わせて複数のサービスを1つにして提供していくプラットフォーマーのようになっていく。

いろんな技術を提供していてネットワークの姿も変わってきている。いままで金融機関がハブになっていろいろなサービスを提供していたのが、どちらかというとプラットフォームのように、一個のアプリで様々なサービスを仲介する、あとビットコインのように各顧客が直接つながって分散したり、また取引所が仲介したりもする。

そうすると金融行政はどうやって行くか。

基本的には、国民の役に立てばいいというのがベースにある。新しい動きはどんどんやってくださいという形にしなくてはいけないと思います。

そういう意味でデジタル化の障害になるような、新しい動きの障害になるものは、極力法改正含めて対応しなくてはいけない。イノベーションはどんどん進めましょう。整備や障害除去をしていかなくてはいけない。

一方で金融は人のお金を扱うもの。安全性は重要なので利用者保護もやっていかなくてはいけない。

オープンイノベーションで既存金融機関も一緒にやっていく動きが必要。

弊害、イノベーションと利用者保護が金融行政の中心。利用者保護に寄るとイノベーションが進まないので、バランスを良く考えていかなくてはいけないというのが金融庁

いくつか法改正を入れています。

金融庁の金融全体の戦略としてどうやっているのか。行政方針を9月ぐらいに作った。いくつか課題があるわけですがデジタライゼーションへの対応を一番に掲げています。

他の課題も非常に重要だがこれを一番に掲げている。

キーワードはいくつかあるが、情報の利活用、情報を使いやすくしましょうというのがまず1つ必要ではないかということで、既存金融機関を含め情報利活用をしていかなくてはいけない。これは今検討中ですが今度の法改正に入っていく。

また、情報、デジタル化はインフラのデジタル化が進まないといけない。キャッシュレス、証券もそう。さらに大事なのが行政自体のデジタル化を進めないといけない。これは金融庁全体でも優先順位の高いものになっている。

こういう考え方に立って最近どういうことをやってきたか。

3年、5年くらい前に始めたが当時の問題意識と、米銀と邦銀を比べて、アメリカは3割エンジニア、日本はほとんどいない。

決済周りで遅れている。決済からいろんな議論を始めている。

3年前に法改正をして銀行が金融関連IT企業を持てるようにしましょうということにした。産業支配の懸念から金融以外の会社を持てないようにしていたが、そういう時代ではないと考えて、法改正した。

今年また法改正を考えていて、保険もIT企業を持てるようにする可能性が高い。

どうじに仮想通貨交換業の規制を入れている。こういうことを3年前にやった。

2年前にやったのが、決済周りでやったのが進めて、銀行とフィンテック企業が連携してサービスを提供して、顧客からの口座管理や送金サービスをつないでWin-Winで行けるようにしようというオープンAPI

今までは何もやりくり、協同がなかったが、決済についての情報をお互い開放して、安全にやり取りして、さらに高度なサービスを提供してもらおうとオープンイノベーションのための法律改正をしています。

こういった、銀行・データ周り中心に、法改正を行って導入も進んでいますが、フィンテック活用の成功のポイントは何をサービス側として金融機関として提供できるかという側からサービスを発想するとそんなに受け入れられない。

フィンテック企業と話していると、Amazonもそうですが、顧客が何を求めているか、顧客からの発送が重要。こちらから行かないといけない。

もう一つ失敗しないのも重要だが、スピード感を持って意思決定して、やってみて考えるぐらいじゃないと、そんなにうまくいかない。

フィンテックの人達は、1ヶ月ぐらいで基本的な考え方を変えたり、3日たって返事がなかったらやめるとかなので、スピード感が大事。

金融機関だと人事権とかもってる経営トップが重要でそこが本気にならないとうまくいかない。

こういうことをやるために対応する例としては、トップに直結した組織で進める、本体だと意思決定が進まないので子会社とかを活用して、権限委譲してやらせるとか。そういうところが、こういう取り組みを成功させるためにキーになっているんじゃないかなと言う気がしています。

次に、機能別横断的な金融規制に向けた検討というのをやっております。

何をしているかと言うと、発想はいろんな形で金融業自体がアンバンドル・リバンドルされている中で、業態ごとに法令があると障害になったり、規制のゆるい業態に移動等を通じ規制を回避する動きが起きる可能性がある。

同一の機能、同一のリスクには同一のルールを適用するのが、いろんなプレーヤーの参入がしやすいのではないか。

何を優先的にやって行くか。

一つが情報の利活用というのが非常に重要で、既存の金融機関もやりやすくするのを優先的に議論する。先程申し上げたように今年の法改正のパーツとしていれることを考えている。

もう一つ、決済の横断法制が重要になっている。

また、いろんな金融サービスを仲介するプラットフォーマーにどう対応するか。あと銀行・グループへの規制が非常に重いので、それが今の時代にあっているかの検討を優先的にやっていく。

機能別横断的な法制ということで決済分野の横断化、柔構造化、いろいろ決済と言うと銀行送金、デビットカード、クレジットカード、資金移動業で非常に軽い規制で出来ている業態など、いろいろある。

資金移動業は100万円までで軽い規制になっていてフィンテックがものすごく入りやすくしつつ、銀行と資金移動業の間の新たな類型による送金の実現に向けた検討。リスクも相当高いですし、いままでの規制を全体を強くすれば今一生懸命競争しているこの辺が非常に困難に陥るところもあるだろうから新たな類型が考えられると思いますし、特に少額のあたりはいろんな規制がありうるが、プリペイドやポストペイを組み合わせたような新しいフィンテックでいろんなサービスができるようにする、それをもっと簡単にできないかというのが検討の一つポイントになると思います。

もう一つ、プラットフォーマーの議論ですが、いろんな保険商品を横断提供する動きが出てくるが、これはいろんなルートが当然あって良い。

その中でアプリで1個簡単に提供できるよな形があれば、それを容認にできる工夫も考えられないかというのがもう一つのポイント。

この辺のことを横断法制でやっています。

キャッシュレスの方で行きますと、あとでまた翁先生からもプレゼンがあると思うが、日本でキャッシュレスを進めていこうとしていまして、世界で比較したときの比率は、クレジットカード、デビットカード電子マネーのもの。口座振替は含まない。ドイツ・日本が低い。日本はこの比率を上げていこうと言っていて、先程のAPI含めて推進している。

銀行というところに着目すると、口座振替は先程のキャッシュレスのケースに入っていないが、給与口座を足すと、結構口座振替を使っている。

そういう意味では先程の定義のキャッシュレス以外のところ、口座振替含めたところの預金受取口座に限定すれば半分を超えるあたりが現金じゃない形で使われている。

先程のキャッシュレスを推進するし、口座振替も有効な手段だと思いますので、銀行さんとかと連携して、こうしたところの使い勝手も良くして、日本でキャッシュレスが進むよう金融庁としても推進していきたい。

あと仮想通貨について、岩下先生からもお話があると思いますので、制度がどうなっているかについてお話します。

仮想通貨自体についてはブロックチェーン技術を使って、ブロックでいろいろな取引を全員が台帳を持つという形で、日銀が中央だと日銀が持つが、全員が台帳を持つということで新しい技術・システムが安価にできる、中央にしっかりしたシステムがいらない。

あと偽造がしにくい。ブロックがつながっていくんでどっかのブロックを変えると全部変えないといけないので非常に偽造に強いと言われている。

秘密鍵というのを、台帳でものを動かすのに使う。これを忘れて死んじゃった業者がアメリカにいて、そうすると取り出せないということがあったようですが、この秘密鍵の管理が重要で、コンピューターにつないだままでいると、コインチェックとかで取られてしまったのは秘密鍵をオンラインで管理していて仮想通貨が抜かれるということだった。

なぜこのビットコイン、仮想通貨の法整備をしたかと言うのを簡単に申し上げると、平成27年に、これはマネロンやテロ資金の供給に匿名性のため使いやすかったので、透明性を高めていこうとG7で、そしてFATFで、仮想通貨と法定通貨の交換を行う交換所に対して登録・免許性を課すとともに、顧客の本人確認とAML/CFT策をとりましょうと言ったのが契機になった。日本はこのアイディアを真面目に一番最初にこれをやったので法制ができている。

交換業に登録制をとっているのが今の制度。本人確認を義務付けているし一定の利用者保護にもなっている。

この辺について、色々あったわけですが、仮想通貨の基礎的な係数が出ているので後で見ていただければ。

各国の規制がどうなっているかも、各国中銀がどういう対応をとっているかによって、価格が下がったりする。中国でICOが禁止されたり。

あと面白い、というかなんというか、仮想通貨の取引は、赤が現物、黄色が先物・証拠金。全体の中で現物は2割で先物証拠金信用取引が8割。もともと仮想通貨は非常に値動きするものなので、先物証拠金取引をするのは一体何者なのかという気がするが、こういう使われ方をしている。

仮想通貨の現物取引は若い人しかやっていない。

普通の金融商品だと高齢者が中心プレーヤーだが、それが、高齢者はコンピュータ使えないということがありますので、こういう様になっている。

被害が出たときに高齢者がいると大きな騒ぎになるのだが、このような構成になっている。

これが証拠金取引になると50台も出てくるが、それ以外がほとんど。

最近出ている新しい取引は、何かと言うと、ICOと言われていますが、仮想通貨で、普通事業をしようとすると株券を発行していろんな金融証券取引法のいろいろな規制を受けた上で、ディスクローズもしてやるわけですが、頭のいい人は仮想通貨で払い込んで、こういうことをやれば、金商法の適用はないんじゃないか、ということで、世界中でこういう物が出ている。

相当部分が規制を逃れるためということが多いのではないかと思いますが、ということでグローバルでみて1年のうちに8割が破綻する。

こういう新しい類型が出てきて、金商法の適用がなかったので、いろんな事件があったので金融庁で審議会、スタディグループを作って、新しい仮想通貨に関する法規制をどうやったらバージョンアップできるか話し合い、報告書がでて、法案化に向けた作業をやっている。

ポイントがいくつかあって、右から行きますと、先程申し上げたように、仮想通貨を払い込んで事業をやるというのが金商法の対象になっていないので、そのへんについては、50名以上に勧誘する場合は公衆縦覧の開示規制をかける、仲介をするときには証券会社みたいな規制をかけますよといった、ICOについての規制の枠組みを入れるのが大きなポイント。

先程、利用者のところで申し上げましたが、証拠金取引先物取引が、現金で差金決済になるので金商法の対象になっていない、利用者保護が効いていない状態になっていないので、利用者保護の規制体系に入れるというのが2番めの大きな柱。

3番目の大きな柱は、だいたい仮想通貨で盗まれる類型は、秘密鍵をオンラインで保管しているところから盗まれるので、それはどうするかと言うと、オンラインで秘密鍵を管理する部分は、非常に盗まれやすいので、そういうことをするなら同じ額について別にオフラインの場所で持っておいてください、そうすれば盗まれても弁済できる。

もう一つ、面白いと言うかなんというかあれですが、法令上の呼称の変更ということで、国際的な動向を踏まえて仮想通貨という名称をやめて、暗号資産と呼ぶ。中銀とか財務大臣会合とかでもCryptoassetと呼ばれていますので、そういうふうにしていきましょう、ということでこれらの法改正を準備しています。

最後になりますが、ブロックチェーンと暗号資産というのは、ぜひ分けて考えていただければと思いますが、ブロックチェーンというのは色々な軽いシステムとして、関係者で同じ原本を持てるので汎用性があるということでみんな力を入れているところです。

金融庁はこのように、最近はイノベーションを進めることを一生懸命やっておりまして、そういう意味では、いろんな実験をやっていきたいというところも、余り止めないので、日本のためにやっていきましょうということで、イノベーション、デジタライゼーションというところでやっているところでございます。