寄付窓口はこちら

第198回国会における暗号資産関連の改正法案成立と暗号資産カストディ規制のこれから

第198回国会における金融庁関連法律案:金融庁が衆参両院で可決しました。

今後1年以内に施行されます。関係者の皆様、お疲れ様です。

資金決済法の改正により、他人のために暗号資産を管理する、「カストディ」が規制されることになりました。

ただし、法案だけでは具体的なことまで定められていません。細かいことは、今後作成される府令・政省令・ガイドライン等に定められます。

これから、一体何が規制対象となる「仮想通貨の管理」に該当するのか、そして「利用者の暗号資産を利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法で管理しなければならない。」とはどんな方法なのか、などが決められていくフェーズになります。

日本では、取引所やtipbotのような、複数の顧客の暗号資産を一つや少数のウォレットでまとめて管理している事業者が多いです。 しかし海外に目を向けると、顧客ごとに鍵を用意している事業者が存在します。

これからブロックチェーンの応用が進めば、単なる「仮想通貨」ではない「ブロックチェーンアプリ」や「ブロックチェーンサービス」が登場してくるはずです。 それらを利用するとき、利用者の行動は、鍵=アドレス単位で行われます。鍵とは、Webサービスに例えるとログインアカウントにあたります。つまり、「顧客ごとの鍵の管理」は、今後ブロックチェーンの応用が進むにつれ、重要なインフラとなります。

規制する方針自体は国際的な方向性であり避けられませんが、その対象や内容は、きちんと練らなければ、インターネット登場以来のビックビジネスチャンス、かも知れない機会を国家として逃すことになりかねません。 日本では取引所しか生まれませんでした、ということにならないよう、日本にはまだ少ないものの、今後重要な役割を果たすであろう「鍵を預かる事業者」の実態やリスクを適切に把握・評価し、「管理」や「管理方法」の規制について定めていく必要があります。

たとえば、顧客ごとに鍵を用意して管理する事業者の中には、マルチシグを組み合わせ顧客と事業者の間で責任やリスクを分散させているケースがあります。そうした場合に、AML/CFTの責任がどこまであるのか。消費者保護の責任がどこまであるのか。どこまで規制の対象ではなく、どこから規制の対象なのか。

顧客ごとに鍵が異なるのであれば、取引所のように一つの鍵が流出することで多額の、多くの顧客の資産が一斉に流出することはないのではないか。

仮想通貨だけを扱うのではなく、ステークや投票などブロックチェーン上の活動をサポートするものなどがあるが、送金以外にも日頃署名が必要な場合に、どのような管理体制をとっていれば一定の安全性が確保されると言えるのか。

今後、重要な論点について判断を下されていくフェーズになります。

カストディ規制はここからが本番です。

なお、金融について、同一の機能・同一のリスクには同一のルールを適用するべきとする横断法制の検討、そして少額の資金移動について規制の緩和を検討する動き等があり、tipbot等の少額の仮想通貨の移転を行う事業には今後そちらも関係してくる可能性があります。

「決済」手段・サービスの柔軟な提供の障壁となる規制の縦割構造を解消するとともに、「機能」・リスクが同一であるにもかかわらず課される規制が異なることによるアービトラージを防ぐため、規制の横断化を行う。

現行の資金移動業者に対する規制枠組みは、上限額以下の送金を取り扱うことを前提に設計されている。他方、上限額を大幅に下回るような少額の送金に伴うリスクは相対的に小さいと考えられる。このため、フィンテック事業者の新規参入を促進するといった観点から、数千円又は数万円以下の「少額」の送金のみを取り扱う資金移動業者について、適用される規制を何らか緩和する余地がないかを検討する。