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早稲田大学 シンポジウム 仮想通貨はどこへ向かうのか 2018/11/28

シンポジウム「仮想通貨はどこへ向かうのか」

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久保田教授

今回は多くの一般の方に加えて国際取引法をとっているためにレポートのために来た学生も居ると思いますが気楽に聞いていただければ。

最初に私からするとコメントいただく岩原先生は大学院の指導教官。元上司でもある、黒沼先生は日銀時代に来ていただいて公演いただいた。

ゼミ発表のようなところがありますが発表させていただきます。

皆さんのほうが進んでいる面もありブロックチェーンのサークルや企業サークルがある。Ethereumのホワイトペーパー読んだりしている。

仮想通貨とはなにか、光と影、規制はどうあるべきかをお話したいと思います。

新聞報道でビットコインなどの相場が安値をずっと更新しているのをご存知だと思います。一方で法定通貨に裏付けられたステーブルコインは上がっている。

仮想通貨とデジタル通貨で何がどう違うか、お話していきたいけれども。

去年は育成から、今年は規制強化されている。海外でビジネスする人も増えている。

仮想通貨とはなにか。金貨とかはよく見たことがあると思いますが、ビットコインはそのようなものではなくて、暗号のようなものです。

去年は相場は2017年12月にかけてどんどん伸びてコインチェックでどんどん下がった。

仮想通貨とはなにか考えておきたいが、電子マネーとどう違うか。

電子マネーは円やドルなどの見合い資産があるもの。仮想通貨にはない。

Suicaは例えば、“500円分”と日本円で裏付けられている。

ビットコインやEthereumは円建てではなくて、BTCとかEtherだとか、それぞれの貨幣単位がある。

ビットコインが半分ぐらい、2位がEthereum、半年前はビットコインの6割の取引が日本円。

仮想通貨交換所のハッキングが相次いで国際的に規制方向にある。

仮想通貨と言ったときに最近は法定通貨の裏付けのある、仮想通貨のような技術を使った電子マネー、デジタル通貨と呼ぶが、それも含めて仮想通貨と呼ばれるようになってきています。

仮想通貨は本来マイニングするようなもので、資金決済法2条5項で「電子マネーを除く」と書かれているが、電子マネーでもあって仮想通貨の技術を用いたデジタル通貨も議論している。

中央銀行のデジタル通貨はどうか、大口はUAEサウジアラビアウルグアイは小さな例で、実現してしまっている。多くの国は実証研究段階。一応日本でも研究しているが関心は高くない。

海外旅行でお札を払おうとすると、受け取りを拒否されたりするが、日本は現金社会。スウェーデンの10倍現金が流通している。

仮想通貨の特徴ですが、法定通貨と比べて、あるいは電子マネーと比べて、管理者が居ないのが一番の特徴です。本人確認が一部のみ行われているけれども匿名取引ができる。その結果犯罪に使われる。この点が重要。

送金とか商品購入とかに使おうと思っていたが実際には投機に使われている。

メリットは安い手数料で迅速に送金可能。欠点は、資金洗浄。犯罪や人身売買、麻薬取引で得たお金を金融機関をいろんな経路で取引することできれいなお金に見せかける。

現在の論点として、規制か育成かでわかれる。

ブロックチェーンは振興するが仮想通貨については禁止する国、例えば中国、日本も17年は育成だったが今は規制方向。育成が明確なマルタなどもあります。

マルタはEU加盟国。EUの中でどうやって産業振興するかというときに、EUより規制がゆるいほうが良いわけです。仮想通貨とブロックチェーンのハブを目指している。

仮想通貨は信用の担保がブロックチェーンという技術への信頼。管理者がいない。法定通貨は国家の信用、電子マネー法定通貨

皆さんはビットコインにはご存知だと思いますが、第二位の仮想通貨についても確認してまいります。

ビットコインは取引の記録のみ書き込めます。Ethereumは開発プラットフォームで様々な記録を書き込めて、スマートコントラクトといわれる自動執行契約が可能です。

ブロックチェーン BLC の確立した定義はありません。中核技術によく言われることに、従来の中央管理型の仕組みに対して、分散型台帳管理技術と言われます。

ブロックチェーンは何が良いかというと、安いコストで高いセキュリティを実現できる点です。いままで、高いコストで高いセキュリティはいくらでもあった。

決済がブロックチェーン1.0、国際送金・証券決済がブロックチェーン2.0、スマートコントラクトが3.0

すべての情報を一つで管理していた従来のシステムから、中央管理者不在で各管理者がそれぞれチェックする、P2Pシステム

ブロックにした記録をつなげていく、ブロックチェーン

ブロックチェーン技術がもたらす将来のイメージですけれども、中央管理者不在で低コストで高いセキュリティを実現できるということで、衣料、物流、エンタメなど、様々な方向で活用の検討がされています。

ゲーム業界のOBがいて、ブロックチェーンを活用したゲームに携わっている。ゲームは一度ヒットが出ると革命的に広がるという話をしていました。一つヒット作が出るかどうかだと言っておりました。

ただこういうのは一つ間違えると、たとえば中央管理型だと個人情報の移転を中央で管理できます。しかし分散型になると(ネットワークのノードが世界中に分散しているためそのデータのやり取りが)越境になる。EUGDPRとか中国の法律だとかに抵触してくるのではないか。

仮想通貨の光と影

コインチェック事件があります。2017年は日本は仮想通貨の育成に積極的でしたが、この世界最大のハッキング事件に遭遇してしまいました。それ以降金融庁は監督を強化して、日本だけでなく色んな所で起きたので、国際社会は規制する方向です。

仮想通貨NEMは盗まれた先の口座を特定することが出来たが、本人確認は出来ない。行った口座はわかるが、持ち主はわからない。ということで捕まらなかった。

犯人は闇ウェブという、みなさんが普段見ているものと違う深層のインターネットがありますが、(利用者の)本人がわからない(匿名の)、殺人依頼や人身売買がなされているのがあるが、そこで売っぱらわれました。

コインチェックは補償をするといって、だれも信用していなかったが3月に返還を完了した。コインチェックは利益率10%だった。全部保証に当ててもなお63億の利益を確保。ちなみにうちのOGもコインチェックへ転職しました。こないだ会いましたが、元気そうで何よりです。

結局の所、コインチェックの事件の犯人はあまり良くわからないが、臓器売買ネットワークが海外にあって、その組織的犯行と言われています。

金融庁は相次ぐ行政処分を出しました。いくつかは撤退し、自主規制を行う業界団体も出来ました。一方面白いのは海外仮想通貨交換業者であります。Binanceという香港ベースのところがあります。警告したがなかなか言うことを聞いてくれなくて、日本の顧客を相手に商売しているくせに従わない。マルタが仮想通貨立国を目指していると言いましたが、マルタに拠点を移す動きであります。

Coinbase(UFJと連携し2019年に交換業取得計画?)やHoubi(ビットトレードの経営権を獲得)は規制に従ったり、アメリカのペイワード(=Krakenの運営元)とかは自信がないから撤退したりしました。

規制論が高まり、G20はFATFになんとかしろと言った。現状では国によって政策も市場環境も異なる。10月19日に事実上強制力の働くFATF勧告で仮想通貨が対象と言ったが、細かいことはまだ言っていない。

niwatako.hatenablog.jp

改正資金決済法は世界最先端の仮想通貨法と言われたが、コインチェックが起きて、法も課題も先進国になった。

一国が先走ることは大変危険。

英米を始め、諸国は義務化を様子見していた。セキュリティの常識として中途半端なセキュリティが一番危ない。MIWA製縦鍵穴が一番狙われる。鍵があることで安全という仮定が働いてしまうので、中にはいると強盗がやりたい放題ということが起きるが、そういう事が起きたのではないか。

とはいえ相場も交換業の利益も非常に期待があった。しかし、最近は期待がずれてステーブルコインなどの方に行ってしまうかもしれません。

仮想通貨は必要かどうかという議論は世界的に行われています。実用化は簡単ではなく、仮想通貨以外での実用はあまり進んでいない。

ブロックチェーンの発展可能性は世界中で議論されていますが、仮想通貨は賛否両論がある。賛成派としては発展には仮想通貨は不可避と考える。反対派はAML/CFTリスクが高すぎて規制したほうが良いと考えるわけです。

日本は技術と現状追認だったが、議論の方向としては、両者を切り離す方向。

スティグリッツ教授の見解:「なぜ抜け穴を作るのか、履歴がわからなければ取引できないようにすべきだ。」

仮想通貨の副作用として米国による経済制裁対象国のベネズエラは制裁迂回手段として原油埋蔵を裏付けとする仮想通貨ペトロの発行で外貨獲得を画策している。大統領令で自国民の購入を禁止。

北朝鮮は韓国に何回もハッキングを試みて外貨獲得手段にしている。

私の意見は、仮想通貨を完全に管理することは不可能で、仕方ないので規制すべき。

仮想通貨は決算手段なのか金融商品なのかという考え方の違いがあります。決済手段だとすると預金者保護の免許制だが、金融商品だと投資家保護を旨とする登録性が馴染む。

仮想通貨の保有者はアマかプロ化。アマチュアなら適合性原則が関わってくるべきではないか。決済手段なら、預金者保護並みの消費者保護。

イノベーション促進に偏り過ぎではないか、マネロン対策の規制をすべきではないか。

  • 適合性原則に対する考え方
    • 民法学者は販売規制と考える傾向がある
    • 商法学者は勧誘規制と考える傾向がある

仮想通貨について芸能人を起用してコマーシャルで宣伝し、素人の投資参加を会おうる方法はともに問題となりうる。

仮想通貨の規制はどうあるべきか。禁止するのか育成するのか。悪いものなのか、良いものをもたらしていくのか。

AML/CFTなのか産業育成なのか。

国際統一ルールは本当は良いかもしれないがなかなか。

FATFは7月報告で各国それぞれあまりにも状況が違うと言っています。

  • 禁止: 中国インドインドネシア
  • 規制: オーストっラリアフランスドイツイタリア日本スイスアメリ
  • 疑わしい取引報告のみ:アルゼンチン、南米
  • そのほかなにもしていない

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FATF Report to G20 Finance Ministers and Central Bank Governorsより

アメリカでは分散型交換所も増えている。それに影響されて日本でも増えていくかもしれない。そうすると規制のあり方も変わる。

中国はICOと交換所を禁止してP2P取引も禁止。

日本はAML/CFTで規制を導入、コインチェック以降監督規制を強化。

国ごとに規制が違うとどんなリスクが有るかと言うと regulatory arbitrage というのが起きる。

ルールや価格の違いを利用して設けることが起きたり、 unregulated safe havens 規制のないところに行けば何でもできる。

日本では仮想通貨の交換取引は交換所経由で行わえるので仮想通貨規制=交換所規制となる。

中国は交換と採掘両方が存在しており、仮想通貨規制には交換所規制とP2P規制が必要。

P2P規制は法的には可能か、中国では可能。事前のネット検閲が中国では合法。日本では、事前のネット検閲は日本国憲法上、認められない。著作権侵害の接続遮断でも絶賛議論中。

日本はどういう解決策に向かっているかと言うと、業界団体の自主規制がかなり機能している。資金決済法や金融商品取引法の改正も検討されている。

これに付け加えると、P2P取引のディスインセンティブ(損)という状況を作らないといけないのではないか。取引履歴が確認できない取引は交換所で加算消費税を課すなど。

さらなる日本における監督規制として、いろいろ検討されているようであります。

次に面白い問題として、もしGAFAが仮想通貨を発行し、法定通貨を駆逐したらどうなるか。日本もそうだが、小さな国の法定通貨は駆逐される可能性がある。これに対してどう考えるのか。それは重大な問題だと思います。貨幣法で国家の管理下に置いているが、これが機能しなくなると法律家としては受け入れがたい。

岩村先生は、全く問題ないとおっしゃりそうです。間違ってたらごめんなさい。政府に金銭は管理できない。人民が「何が金銭か」を考える。国家が通貨を決める前から通貨は存在していた。仮にアマゾンが世界通貨を発行してそれで良ければ、中央銀行は不要なのだ、と。

しかし最近の個人情報の越境規制で考えるとGAFA支配はやはり問題なのではないか。個人データの越境規制が問題になっている。GAFAが通貨発行したらこの点がクリアできるのかなというのが気になります。

ほかに法的問題は様々だが、一つは強制執行。裁判所が強制執行命令を出しても仮想通貨に対してそれは執行できるのか。取引所口座の仮想通貨の差し押さえが出来なかったという例が6/14の日経にあります。しかし約款の整備ができているところは出来ているようなので、それを支える法整備が必要なのではないか。

中央銀行のデジタル通貨

メリットは便利、デメリットは管理できなくなる混乱。

米スティグリッド先生は肯定的だが、私は単純化し過ぎではないかと思っている。

デジタル空間の域外適用

国家法の適用範囲は領域内にとどまるというもの。FBIはシルクロード事件の国際捜査(人身売買などの闇サイト)は海外に無断でスパイウェアを設置して捜査して主権の侵害だと問題になった。その後のアルファベイ事件の国際捜査では、関係国との共同操作という形態を取り、相手国の同意を得て行うようにした。

消費者保護

基本的にリスク啓蒙が不足しているのではないか。適合性原則も議論すべきだがあまり議論されていないのではないか。

国民生活センターの報道発表

交換業者の対応が不十分な事例を紹介、登録業者であることを確認しリスクを理解し可能な対策を、リスクを理解して取引しましょう。→これはZaif事件のようなものが、この3、4行で理解できるのか。

国際的なといういつルール作りもまだまだ途上で課題が多い。

駆け足になりましたが以上です。

岩原教授(金融の専門家、金融審議会で資金決済法改正時の座長を務めた。)

私の只今の久保田先生の包括的な問題に対するコメントと言うより、久保田先生がその他の問題としておっしゃった、法的に仮想通貨はどういう問題があるのか、問題点を申し上げさせていただく。久保田先生の補足と考えていただければ。

いろいろな種類があるというのは久保田先生がおっしゃったとおりで、それぞれ法的問題も違ってくる。仮想通貨の中で最も広く、極端な性格が出ているビットコインを例にとってお話申し上げたい。

あらゆる法規制の適用を受けないように作られた通貨ではないかと思います。

通貨を規制する法律の対象になりませんし、有価証券、みなし有価証券にも該当しない。消費者保護のための金融証券取引法の規制も受けません。

わずかに仮想通貨交換所の規制の資金決済法のみの適用を受けている。

さらに私法上でも、物権にも債権にも、民法執行法、倒産法の対象にもならない。

このような法的ルール、国家権力の外で流通する通貨を作ろうというのがそもそもビットコイン。このような性格は国家のコントロール下に通貨をおかず、通貨が競争すべきであるという、ハイエクの主張に沿ったもののように思われます。

またマイナーの競争で通貨を獲得していくのは市場主義的かもしれません。

しかし利用者や債権者の利益、社会の利益を大きく損なう危険があると考えています。広く利用されるようになるためには価値の安定性、安全性、利便性、適法な利用が保たれなければなりません。

ところがビットコインに言えば、価値は大きく変動し、決済手段として使われることはほとんど泣く、我が国では、もっぱら投資手段として使われています。

ビットコインは、国によって過剰に発行されることがないように、新規発行されるものが4年に1度半減していき、2100万ドルで打ち止めになって発行されなくなる。

そうであれば過剰発行によるインフレの恐れはないが、主たる通貨になるならば経済の拡大に応じた通貨供給量の増大が出来ないのでデフレの問題がある。

では実際にビットコインの発行量に上限がないと言えるのか?

ビットコインからビットコインキャッシュが分裂し、そこからさらにSVが分裂していることを見ると、本当に発行上限がないのは疑問、そうするとインフレの問題があるのかもしれません。

いずにしても、法的な通貨供給の仕組みはない。

安全性については、デジタル署名やブロックチェーンの技術で偽造や消去はできない。二重譲渡にも対処できる。しかしハッキングや経営者の不正行為で大量に盗まれる事件が続いている。仮想通貨の秘密鍵を取られたり消去で失われると仮想通貨は失われる。

少なくとも自分自身のアカウントを持たず取引所に預けているだけの人にしては安全性が高いとは言えない。

利便性から見てもビットコインの取引は10分に1回のブロック形成が6回行われるまで取引が確定しない仕組み。1時間立たないと取引が確定しないので即時性にかけ、実際の取引には向かないと思います。

ただ我が国では決済手段ビットコインP2Pとりひきがおこなわれることはほとんど無く、交換所での引き渡し請求権を移転することでビットコインを使用しているように思います。

ビットコインマネーロンダリングに利用される可能性が高く問題が多い。

差し押さえも出来ないし利用者を補足することも出来ない。登録機関にアドレスを登録でもさせない限り適法に利用することは難しいのではないか。しかしそうしたことは非常に困難。

さらに法的な問題。投資商品としての仮想通貨の問題、実際上仮想通貨は投資商品として保有されている。しかし投資商品に関する基本法である金商法が適用されず投資家保護からは非常に大きな問題となっている。我が国の金商法は2条1項有価証券または2条2行のみなし有価証券のみとみなされるので、仮想通貨は該当しない。

アメリカでは仮想通貨を新規に発行して資金を集めるICOを証券取引委員会での登録を要求する形で規制が行われている。

我が国においては仮想通貨取引につき、金融証券取引法の適用がないので、交換所の登録が義務付けられ、預かっている金銭・仮想通貨を分別管理することだけが求められている。この分別管理も単に帳簿上区分するということで、アドレスを別にして取られないようにするということは(法的な義務としては)されていない。

金融業者なら適用される規制が適用されていない。投資者保護に反する取引が広く行われている。仮想通貨の交換所などが、仮想通貨の発行や売買で巨額の利益を出している。

金商法なら禁止されるような自己取引を交換所がやっていたから出来たわけで、そのぶん一般消費者が損をしている。

先ほど久保田教授がおっしゃった私法上仮想通貨が補足出来ない問題、まずP2P取引参加利用者が有する仮想通貨に対していかなる形で強制執行が可能か、ものにも当たらないし債権にも当たらないということで、また財産権にもあたらない、MtGox社の破産事件に置きまして東京地方裁判所は所有権の対象ではない、不法行為も認められないということで、MtGOXに仮想通貨を預託していた利用者の返還請求を退けた。

そこで学説上は、なんとかそういう交換所を介して仮想通貨を持っている人を保護しようといろいろな解釈が唱えられています。ただ実際は非常に困難だと思います。差し押さえをするときに、おそらく現行法の解釈としては東京地裁の考え方に基づくとその他財産権にあたるとして強制執行は債権執行の例によるということになると思います。発行者が居ないので、民事執行法167条では、第三債務者が存在せず取り立てを行えないので譲渡命令、管理命令になるが、これのためには秘密鍵の提供を受けざるを得ない。秘密鍵の提出に協力してもらえなかった場合困難である。

秘密鍵の提供が必要で情報提供を拒まれると間接強制せざるを得ないが、資産を持っていなければ差し押さえは出来ない。事実上の差し押さえ禁止財産。そのようなことは市場経済市民社会の起訴を危うくするものである。

つまり仮想通貨は、強制執行や倒産手続きから逃れる財産隠匿手段となる。

強制執行倒産手続きが出来ないので結局通貨として使えない。

唯一の方法は、秘密鍵は登記所に登録しなければならないというようにしない限り難しい、しかしそれは非常に難しい。

最後に、P2P取引が行われることはほとんど無く、交換所を通した取引で、彼らの権利が非常に難しい、結局間接的に保有している場合に一種の交換書に対する債権を持っている、しかしその債権とはなにかというのが非常に難しい。

かつてのMtGoxのようなものだと救済に実効性はない。関節保有についても保有者を保護するためにいろいろな解釈論、信託を利用するとか、アメリカのアーティクルエイトのような解釈を導入する考えもあったが無理だろう。

最低限、交換業者は単に帳簿上顧客保有分の仮想通貨を分別管理するだけでなく自己保有分は別のアカウントにするということがまず必要になるのではないか。

さらに顧客保護をする場合には預託を受けた仮想通貨を供託させる、保全契約を締結させるとか、資金移動業者のような規制が必要になってくるのではないかと思います。

短い時間ですが以上でご清聴ありがとうございました。

岩村教授(貨幣論金融論専門、ナカモトサトシではないかと記者に尋ねられたこともある)

今日はコメントということでお受けいたしました。コメントされた岩原先生がどうしても私がリファーしたい人の名前を上げてくれたので冒頭に物の考え方という点でお話したいのが、ハイエクという、ご存知の方多いかもしれないが、ケインズの批判者として知られている。マーガレット・サッチャーが熱烈な信奉者だった。

書いたものを読むと厳しいことを書いているのでこういう人が周りに居たら嫌だと思うが、内容は尊敬する他ない。

1970年台、貨幣を国家の統制から外すべきだと、中央銀行が貨幣を独占発行するのは良くない、70年台のインフレを前に、モラルが損なわれていると、だから彼らにも競争と競争による理性を導入すべきだという議論。

ハイエクに対する経済学者の一致した反対は、「そこはわかるけれども、そんなことをしたら金融政策が機能しなくなるじゃないか」ということだった。

しかし金融政策はいま機能しているか。マネーを2倍、4倍にしてもインフレにならない。改めて金融政策の重要性は問題になっている。

自由主義経済と社会主義経済の批判からなる本、長期的には金融政策は無駄だと彼は断言している。そのことを含めてかれは貨幣の自由発行を唱えている。

かつては金融政策への期待が大きかったが、いまはこれを読むと、改めて感じることが多い。

ちょっと話を変えて、久保田さんの非常に充実した、充実しすぎてすごい勢いで話が進んでしまった、この資料に沿っていくつかお話したいと思います。時間がないと思うので超過したら止めてください。

そうですね。こういう、中を見て色々書いてあるなと思うが、たとえば仮想通貨は電子マネーとは違う。

すぐ私達は疑問を持ってほしい、貨幣論研究者ですから。円やドルは何を見合いにして発行されているのか。

法制度の発展史的にははっきりしていて、もともと金属貨幣を見合いにして発行されていた。金属貨幣を見合いにしない例外的な強制力を法律の中で最初に書いたのは多分アメリカで、1862年南北戦争の最中に政府紙幣をLegal Tenderと言い切った、それがLegal tender actです。

ちなみに今のFederal Reserve Actはlegal tenderという言葉は部分的にしか使わない。彼らは、自分たちの発行するマネーをlawful moneyと言っているんですね。全部意味が違う。ちなみに今の話について言うと、アメリカはいくつか他に法律があるのですが、legal tender は lawful moneyの部分集合だという考え方になっている。日本銀行法も、法貨として無制限に通用すると書いちゃっているのですが、その法貨は英語になおすときにlegal tenderなのかlawful moneyなのかというのは迷うところがある。ちなみに、たしか日本の法律の公式訳は legal tender になっている。私としては rawful money と約しておいてもらったほうが良かったのですが。

それはそうとして、円ドル、見合い資産は何なのか。見合いはなにか、無いという考え方もあります。無いからこそインフレになるという議論が普及する。サトシ・ナカモトも彼のペーパーを読むと、そういう考え方に基づいて書かれている。だから私と同一視されることはないと思う。私は別のものが見合い資産になっていると考えている。

それも説明せよとあれば説明したいと思いますが、時間もありますのでいくつかのポイントをご紹介しましょう。

価値の保証という言葉が書かれていますけれども、ここも気になるところ。政府は流通の仕組みを保証するのか、価値の有り様を保証するのか、貨幣論では大きな問題。

みなさん眠くなってきていますか?

トーンを変えると、2000年ほど前にその話が出ている。聖書です。

エスが、ユダヤのxxx(聞き取れず)者に対して、「あなたは納税を認めるのかどうか。」と言うときに、彼はデナリオン銀貨を持って、この形はシーザーのものだ、この輝きは神のものだ、神のものは神に、シーザーのものはシーザーに返せ、という言い方をするのですが、これぞその貨幣を考えるときに、流通の仕組みとか、取締の仕組みを軸に考えるのか、それとも、貨幣の価値の由来を軸に考えるのか、大きな意味が2000年前に提示されていて、殆どがキリスト教徒であろう経済学者がそれを忘れているのは面白い話。

ビットコイン、Ethereum、ブロックチェーンということで言うと、ブロックチェーンは本当に良いシステムなのか。

良いというのは、安く安全で証明力が高いものなのか、ということについては、技術系の人ではそうではないと思っている方が遥かに多いです。

一つの記録をたくさんのコンピューターが確認するほうが、一つのコンピュータが確認するより絶対効率は落ちる。

ではなぜ分散なのか。

サトシ・ナカモト派の気持ちは、たくさんの、ばらばらで動いているから統制できない。暗号が統制できないというのは少し違います。秘密鍵程度でプライバシーを守ろうとすると当然相手によっては対応が難しくなるが、暗号理論をやっていた時代も少しあるのでそうしたものに頼らないことも知っている、ゼロ知識証明。なんとか秘密鍵をと言っても、そういう話まで持ち出されると技術的にどうかなと思います。

一気に強制執行の話に持っていってしまえば、強制執行はある意味強制執行は暴力行為。実力行使ですから。そうするとビットコインなり他の仮想通貨を運用する人、作ろうとする人、扱おうとする人の持っている力を超える力を何らかの形で国家が行使できなければ、規制できないのは当たり前。

暴力団を規制するには最後は銃が居る。悲しいですがトランプが言っている通り。

そうすると暗号通貨を追跡する、あるいは一部の処理を無効にすることは、できるに決っている。ほどほどのコンピューターパワーを集中すれば必ずできる。

ただそれをするほどの合意基盤が世の中に存在しないからそれをしないのだろうなと思います。

僕は話しだすとどんどん長くなってしまうのですが。。。

スマートコントラクトという言葉も、誤解を得やすい。スマートコントラクトはコンピューターサイエンスでは昔からあった概念。プログラムとプログラムが参照するデータの中で閉じて実行されるものがスマートコントラクト。それが現実世界に入ってくる。そのためには仲介がなにか必要。

Ethereumとスマートコントラクトというとなにかすごいことができると思ってしまう人がいるようですが、そのすごいことは普通できません。普通できないことをできるようにしようとするから技術者としては面白いし、規制する側は頭を悩ますのですが、可愛そうなのは名前に踊らされてマジカルパワーのようなものだと思ってしまう人です。もう少し技術を勉強したほうが良いなというのは常々思っています。

あとは先生が私に話してほしいと思ったのは、GAFAでしょうかね、私は「中央銀行不要でいいという派」ではないかと。

結論、不要になっていいと思っています。

しかし今のようなGAFAのような主体が発行することには非常にネガティブです。

私は中央銀行という世界に居たわけですけれども、中央銀行中央銀行と尊敬されるには、自らに対する厳しい節度が必要で、その節度の中には、人の取引や人の懐の中を覗き込まないと。それをどうしても覗き込むんだったら国家権力をもって覗き込んでほしい。

日本銀行は長い間続けていた考査という、銀行への立ち入り調査をほとんど辞めている。道義的にはそれは、国家権力の範囲で金融庁の仕事になっている。

それで、GAFAは膨大な個人データを持っている。それが通貨を持つのはグロテスクそのもの。

ビッグブラザーという言葉があります。すべての情報を管理する、1984に出てくる。

国家権力から個人データを管理するのが良いか、資本の力によって存在する主体が管理するのが良いか。どちらも私はあまり良くないと思うが、しかしまだ国家のほうがまだまし。

アマゾンが世界通貨というのであれば、Amazonは個人データの管理を諦める必要がある。またそうでなければ、誰がアマゾンの通貨を信用するか。そうしなければいずれ揺り返しが出てくるだろう。


それではここで休憩を頂いて、その後登壇者間のディスカッション、質疑応答の時間にしたいと思います。

16:30再開


黒沼: それぞれからコメントがありましたので、応答していっていただきたいと思います

久保田: 解説しつつ答えていきたいと思います。岩原先生からさまざまな詳しい分析をいただきました。2つほどお伺いしたいのですが、ICOIPOの仮想通貨番、WhitePaperをつくってトークンを発行して資金調達する)、世界各国では証券としてSEC登録を要するようにされたりしている。日本では、金商法不適用というお話でした。日本では立法論が出ているし、金融庁の中でも検討されているようだが、一部分だけ適用されるのか大きく改正されるのかなどがありますが、現行では不適用だが、適用される立法論があればどのような形のものなのか。第二に、倒産の局面に置いて、所有権性がないということで取り戻しが出来ないという判決があったが、MtGoxが規約で信託として管理すると書いてあるのでこの情報をつかって、信託法に基づく、信託財産なら倒産手続きから除外されるので、これを適用できないかとされているが、信託も困難として気があったが、規約に信託財産だと書くことで問題をクリアできないのか。

岩原: 最初のICOに対して金融商品取引法を適用できるようにする立法論にどのようなものがありうるか、むしろ黒沼先生に教えていただきたいが、金商法における有価証券の募集、とみなしてそれに関する金商法の規制を適用するのも考えられることだが、これはICOトークンを登録というか、有価証券として登録させてどういう情報を開示させたらそれで投資者の保護になるのかと言うと非常にわからない、仕組みを開示するぐらいがせいぜい関の山。会社なら事業内容を開示して、こういった収益が期待できるということをディスクローズしてそれを見て投資家が投資することが期待できるだろうが、ICOでそこから上がる収益がどうなるかを理解させるような開示は、何を開示させたらリスクや収益性を理解して投資できるか、非常に難しいと思うのですけどね。さっき申しましたように記入証券取引に関する規制、執行義務、デリバティブなど、を課すことは可能だと思う。アメリカ型のICOを証券法に適合させて登録させることは一定の抑制になっているようだが、それが投資家保護としてうまく機能するかはかなり難しいと思います。業者の取引規制のほうがもし考えられるとしたら、考えられると思います。信託構成ができないか、東大の教授も唱えておられて、考えられるとは思うが、実効性を持つためにはアドレスを別にしてそこに資産が確保されているようにして、その上で資産管理、排他性を持てることが出来ないと、単に信託だと言っただけでは十分な保護にはならない。

久保田: 岩村先生にも、2点、まず1点目はGAFAは、中央銀行ではだめだがGAFAはだめだというのは、中央銀行は国家権力の行使に踏み込んではだめだということだと理解したが、日本の場合は政府と中央銀行の独立性がある。中国中央銀行であればほぼ国家イコール。国家の最強部隊として活用する議論もあり得る。日本の銀行法の中の中央銀行の独立性であれば、安倍政権からすれば財務省の手足でないのだから、独立性は小戸に任せて日本銀行は違うよという議論もなりたるのでは。2問目は、暗号の専門家として、ゼロ知識証明とかつかって、仮想通貨をトレースできるはずだということを興味深くお伺いしたが、危惧しているのは、P2P取引がないにしても、アメリカで分散型交換所が流行っていて、コインチェックの人に言わせると中央集権型取引所はコストが高すぎて分散型取引所に転職する動きがあるようであります。日本でも分散型の取引所が来たときに中央集権的取引所の規制では厳しいので、何らかの、技術的手段でなりたつものでないと厳しいと思いますが、暗号学として、仮に分散型とかP2Pが主流になったときに暗号学的な解決策はありうるのか。産総研と開発することになって考えているが方法がないので知見があれば

岩村: 国家と中央銀行、久保田さんの思う通りですよ。ジョセフスティーブ、多くの銀行や金融の人が反発しているが、私は一里以上のものがあると思っている。「金融政策に未来はあるか」、岩波新書だした。そこでやっぱりスティーブスは鋭いことを言っていて、世界が縮小するときはすべてが反対だ、中央銀行の独立は私は成長経済の中で生まれた国家間競争を勝ち抜くモデルの一つだったと思います。そうしたなかで中央銀行市中銀行を区別した。ハイエクの言い方をすると全体主義、の国家体制では中央と市中銀行の違いは本質的にない。そういう事がいい悪いは別として存在することは認めたが良いし、日本も財政と金融の区別はなくなっていくと思います。そうすると何が起きるのか、財政や政府との競争相手が新しく生まれてくる。それぞGAFA。私が例えばAmazonが何処までもというのはグロテスクかなというのは、一方では日銀金融政策さえコントロールすればすべてが解決するというのがグロテスクというのと同じ、自由や民主主義の基本の姿、すべてを撮ろうとしない。それを忘れないでほしい。暗号技術でなんとかなりませんか、というのは、なんとかなります。でも技術では攻める側と守る側が同じ。何かを守らせようとしたらそれなりの覚悟がいる。暗号通貨の価値は数年前にディスカッション・ペーパーを書いて、社会学系のネットワークに上げといたら、この分野ではダントツ一位を続けているのだが、ステーブルコインとは別の方法で価値を生み出せるということを論じているのだが、何かを守ろうとしたらコストは掛かる。1兆ドルのものを作ろうとしたら1兆ドルのコストがかかる、だからビットコインは長期的には成長しない。1兆ドルを取り返そうとしたら、ビットコインネットワークを圧倒するパワーが居るし、すればできる。一定の地域のちあんをどうしても守りたければ自動操縦を持った将兵を投入する必要がある。理想的な世の中を想像する人には不都合な事実だが、それは受け入れないといけない事実。z cryptoで検索するとZ-cashが出てくる。ゼロ知識のZ。どんな世界でも人を特定するのは消して簡単なことではない。もともと私達が特定できると思っているのは、だいたい黒沼先生は髭をはやしていたな、知的な風貌だなと、メガネを除いて私と正反対だが、そういうことが分かっているからです。黒沼さんは本当に黒沼さんなんだろうか、というと難しい。文字で契約する分野はメソポタミアが古い。どこそこに住んでいる背がこれくらいで目がなにいろでどんな人間が、ここをもって、ロバ何頭を、こんな風貌のこんな人がこれを認めたということが石版に書いてある。バーチャルスペースの世界でのレベルでは確実に確認できる。バーチャルスペースにサトシは居る。だが誰だかはわからない。現実の人の行動とクリプトカレンシーとの間を結びつける、インパルス、推論が必要。今度は突然通貨の世界に戻ってくると、通貨の世界でも本当はラクラクと可能なんです。全部番号がついているので、どこでどんなものがどんなふうに使われているか推定はできる。その先は推論。それが現実の誰かを特定することは別の話。この世界で取引を取り消そうとすれば大きなコンピューターパワーを使えばいい。現実と結びつけることは難しい。マネーロンダリングのために膨大なリソースを使っている。マネーロンダリングを暴くことに同じリソースを使っていない。重要じゃないと思っているからじゃないかな。あと産総研が勝てる知識をもっていない、知識を持っていたら自分で始める人のほうが多い。これもまた認めざるを得ない不都合な事実。

会場: きょうは久保田先生に濃い内容をまとめていただいてありがとうございます。3つあるが一つに絞らないといけないかと思いますので、クリティカルに考えるためには、危険性、基本的なビットコインブロックチェーンの経済性とかセキュリティの安全性でいうと、岩村先生は否定的、実感できる数値とかを上げて言うと役立つのではないかと思うが、そのへんはどうか、

岩村: ビットコインは何故5千ドルで買うのか。自分で作ると5千ドルかかるから。マイニング競争に参加してくじを引き当てる計算パワーには平均5千ドルかかるから。それが今の価格を大きく支配はしている。分散マイニング型のブロックチェーンは非常に不経済。1000ばかりの取引をサポートするためにそれだけのコストを掛けないといけない。ビットコインは何に似ているかと言うと実物に似ている。仮想空間において黄金のふりをしている。金が高いのは掘るのが高いから。金は貨幣の主流の地位から滑り落ちていく。金融システムの中にリザーブとしておいておいて何倍にもして扱うほうが効率的だから。もっといくと、なんなら何もなくてもいいじゃないかとなった。では何故ビットコインなのか。結局今の、国の側から言えば、国の規制から逃れたいだろうという話になるし、一方で自由派からいえば、いまの通貨制度があまりにもひどすぎるからだと。私が長く居た中央銀行の世界には競争相手があったほうが良い。ただビットコインはどうせそんなに大きなものにはならない、それがビットコインの不経済性

会場: 大きな電力が使われている。というのが言われている。かなりのお金が使われている。スピードに関しては、ビットコインとVisaと比べて

岩村:一言で言うと、ビットコインはとっても遅いです。分散にこだわるから。大事なことはどういうスピードにするか、性能にするかは、どういう相手と競争するかによる。それは技術そのものが持っている宿命ではない。はっきりしているのはブロックチェーンは優れた技術に違いない、だから仮想通貨と切り離してでも育成しようということは技術に対する誤解。

会場: 日銀が異次元緩和をして久しいがここで中央デジタル通貨を導入したら異次元緩和にメリットが有るか、それとも対して無いか

久保田: 中央銀行デジタル通貨を発行してインフレ緩和政策を進めるのは中央銀行デジタル通貨を発行するとすれば(個人に対して)、一人ひとりに別の金利を付けられる、マイナス金利を付けたりもできる。中央銀行がもし今後インフレにしたいとすれば、ひとりひとりの口座をどんどんマイナス金利にするとか、あるいはちょっと使う人にはプラスにするとか、それぞれ完全に管理できる。良い社会科は別として、中央銀行の目標達成にはかなり便利なツールができると思っていますが、たぶんこれは、だいぶ岩村さんに叩かれると思います。

岩村: まず1つは中央銀行は何のために金融政策をしているのかを整理しなくてはいけない。実は中央銀行の伝統的な考え方は貨幣価値の維持。通貨は大きく分けると価値尺度としての貢献と、決済手段(価値保存手段)としての供給。価値尺度がより本質的で、ハイエクが繰り返し言っているところ。いまは価値尺度の金融政策と、決済手段としての金融政策がごっちゃになっている時代だと思う。決済手段としてのマネーを大量に供給すれば、価値尺度に影響があるだろうと思って始めたのが異次元緩和でしたが、結論から言うと影響は小さい、あるいは0かもしれない。もっというと逆の影響すらあったのかもしれない。これが事実だと思います。 価値尺度と決済手段は分けて考えるべきと言い出した人はとても古い、1931年から2年にロバートアイスラーという人がそういう事を言っている。それは非常に偉大な著作だが多くの人は貨幣の維持とかに気を取られていく。アイスラーの著作が非常に重要だと言うことを強調している人が居て私も知った。自分で考えついたつもりだったのですが。 あとエピソードを言うと、それを言っているアイスラーの本というのが、Stable Moneyです。