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Enigma Protocolが変えるブロックチェーンの使い方 | BlockChainJam2019 09 #BCJ2019

Yoshinori Hashimoto 氏

Enigma MPC - Enigma Collective日本代表

東京大学大学院経済学研究科金融システム専攻を修了し、日本取引所グループにてQuantitative Analystとして従事した後、bitFlyerにいる間にEnigmaと出会う。ブロックチェーンの世界における秘匿計算技術に革新性を感じ、日本での普及活動のためEnigma Collecvive日本代表に就任する。現在はBUIDL リサーチャーとして活動しつつ、Turingum COOとしてもEnigmaの開発を行っている。

まもなくメインネットがローンチされるEnigma Protocol。スマートコントラクトが秘匿化されることで可能になる3つの重要なポイントとは?!

Enigma Protocolが変えるブロックチェーンの使い方

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Enigma Protocol

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  • ブロックチェーンの歴史と現状の正しい理解
  • 現状の課題を解決するEnigmaという仕組みについて
  • ブロックチェーンの世界で新しい世界を作っていこうとしたときに必要になるブロックチェーンの思想

サトシが見ていたせかい

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彼はビットコインを通して、こうした事を実現したいと考えていた

  • 中央管理者がいなくても実現できる電子マネー
  • 銀行口座がなくても送金、受け取りができる
  • 動き出したら誰に求められないし歴史を変えることもできない

こうした声質を持つ物を作りたかった

ビタリックブテリン

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単純なお金の送金だけでなく、スマートコントラクトと呼ばれる条件付けでの資産の移転が可能な仕組みを作った

それを使って独自トークンが無数にあるが、それを誰でも発行でき、コントラクトに書かれたとおり移転できるので、銀行や証券会社がなくても資金調達できるように

ブロックチェーンの世界は2017年に無法地帯に

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誰でもトークンを発行して、このトークンには価値があると言ってお金を集める。

やる気ないのにお金だけ集めるとか、実現できないと思いながらも集めちゃう。そういう世界が繰り広げられた。

金融機関がいらないのでマネロンに使われているとか、一部には正しくない分析もあるが、そういうこともある

ビットコイナー反省会で2ヶ月に1回なにもない月があったらこのコーナーはやめようと言っていた今月のGOX、結局ずっと続いている。

こうしたなか規制は強くなってきた。

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交換業者への強い規制が課せられていて、来年からトラベルルールが。

bitFlyerからBitPointに送金したいと思ったら、ビットコインのアドレスを指定したらよかった。

来年からは何をするかと言うと、どこに送金するかを書く。他の交換所に送るのなら、その口座は何者なのか、というのを書いて、それを相手方に確認してもらって、OKなら送金できる。KYCと送金情報を紐付けていくという世界観になっている。

送金のたびに本人確認情報が必要なのは、既存の銀行感想金の仕組み。

既存の仕組みにビットコインの世界も当てはめていこうという動き。

既存の体制、SWIFTの運用の煩雑さ、を解決するために技術を使っていこうという流れ。

スマートコントラクトが自由にかけるのだが、規制の内容をコードに落とし込むことも可能で、セキュリティートークンという概念が登場してきた。

このあたりは色んな所でご存知かと思う。

規制とブロックチェーンは相性が良い側面もある

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規制の内容を自由に表現できるし、強制力を持って実装できる。

ブロックチェーン上のデータは公開されているので、不正な送金を検知できるという性質もある。

仕組み的に相性が良かったりする側面があります。

その結果として管理の効率化という観点でのブロックチェーンマネーというのが出てきたりしました。

中国がブロックチェーン上でマネーを発行するとか

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現金での送金が無くなってみんなブロックチェーンで送金するようになったらあらゆる情報がブロックチェーンに乗って、全て見られている。

それが行われようとしているのではないか。

ここで何が起きているか

技術は確かに使われている。様々な技術が生み出されてきた。

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しかし一方で、サトシナカモトはそんなものを見ていたかったのでしたっけ。

世界はその方向性になっているのでしょうか

中央管理組織があって国家が法定通貨を発行して、中央管理体制から解き放たれた自由なお金をこの世界に彼は夢見ていたと思います。おそらくそうだと思います。

そうした技術のうち、公開性、誰でも検証できる、様々な条件をつけた移転が強制力を持って行われる、

そうした技術的な特性のみが切り取られて既存の管理社会の中に、業務の効率化のために使われていく、そういった世界になりつつある。

ただの運用の効率化だとしたら、新しい世界ではなくて、今の世界と構造が変わらない世界になる

この11年、どうして彼の思想が失われようとしているのか

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技術的な特性からそうなっていると考えています。

どういう技術的な特性かと言うと、ブロックチェーン上の送金は基本的に全部見えている。

ビットコインのアドレスを眺めてもその裏にいる個人の名前は浮かび上がってくることはない。しかしながらビットコインをビットフライヤーに送金して換金しようとしたとき、本人確認情報と紐付けられて、このアドレスから送られてきたということはその前のアドレスもこの人かな、これはビックカメラでなにか買ったのかな、と紐付けられてばれてしまうという性質があります。

僕はブロックチェーン上での解析を業務でやっていますが、ビットコインには匿名性は欠片もありません。

ビットコインを取引所を介さずに自分の中だけでぐるぐる送金しているとか、友達グループの中だけで送金するとかでは、他人が僕のアドレスだとはわからない。

でも過去に取引した誰かが僕のアドレスをバラすと、ほかの取引も僕のものだとみんなにわかってしまう。

過去の一つの取引が分かることで、芋づる式に個人情報がわかってしまうようになる。

Moneroを使うと、そういうことはない。友だちに送ってその友達が何を喋ろうが、ブロックチェーン上の情報はわからない。

しかしながら現実的にMoneroが使われているシチュエーションは極めて限られている。

Coinhiveやダークウェブぐらい。ここにいらっしゃる皆さんは、投資目的で持ったことはあっても、使おうとしたことはないと思います。いても数人だと思います。

それはなぜかと言うと、純粋な匿名送金だけでは有用性が極めて低いからです。

経験的にも分かると思いますが、なかなか、結局使われてこなかったという経緯も踏まえておわかりいただけると思います。

改めてブロックチェーンで何を実現したかったかといったときに

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ブロックチェーン上のデータは公開されていて検証できる。

でも公開するという性質がほしかったのではない。

実行された内容が正しかったことを担保したい。それが大本だった。

実際に一番簡単な実装はすべて公開する、そうすれば検証できる。

しかしながら秘匿計算技術というのは、秘密鍵公開鍵みたいなシンプルな世界ではなくて、あらゆる計算の過程を秘匿したうえで正しい結果を得る技術。

計算過程自体が開示されなくても、正しいロジックにしたがって計算されていることを証明できる。

こうした技術を使うと、送り元のアドレスを隠す、送る金額を隠す、のように、スマートコントラクトの処理の中身を秘匿することができる

秘匿計算には2つの種類がある

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準同型暗号を使って、暗号理論的に行う方法。でもこれは計算コストがすごくかかる。計算一つで何十秒かかるだけでなく、メモリ上に何GBと必要になるなど、汎用化が困難。

もう一つは、Trusted Execution Environment内で計算する。

いまお持ちのPCにも殆ど入っています。インテルの新しいチップにはだいたい入っている。SGXなど。

暗号理論とはあまり関係ないもので、ハードウェアの技術を使ったもの。

TEEと呼ばれるものの内部の計算は外から観測できない。

TEEの秘密鍵があって、公開鍵が外に公開されている。公開鍵で暗号化してTEEの中に入れると、TEEの中で複合され、計算される。中の計算を外から観測できない。

普通に復号して計算しているので一般的な計算と変わらない速度で計算できる。

Enigma

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2017年7月ぐらいに公開された

SGXをつかったノードがあって、Ethereumのノードやビットコインのノードは普通のPCで運用しているが、EnigmaネットワークはSGXを使ったノードだけが立っている。

秘匿シークレットコントラクト的なものを送ると、ノードに送られて、TEEの中で計算されるという仕組みのタイプ。

発送としてはセカンドレイヤーで、スタート段階では、少なくとも現在は、Ethereum上のスマートコントラクトから呼び出される。

Ethereum上の様々なアセットの送金を、ロジックは分かるが、どういう過程で行われたかの条件の情報を秘匿した上で送金できる拡張が可能になる。

スケジュール感としては年末ぐらいからテストネットで利用できるようになります。

ENGトークンがGas的なものとして使えるようになる。来年春にメインネットで稼働してEthereum上での秘匿計算が可能になる。

スケーラビリティにも貢献するという副次効果があって、Ethereum上ではみんなが計算しているが、Enigmaでは一部のノードだけが計算を割り当てられるので、スケーラビリティも意識したものになっている。

そのうちEthereumだけでなく、皆さんの好きなコントラクトがのったチェーンで利用できるようになる。Libra上でも、中国のブロックチェーンであっても(その場合使えないように向こうが工夫するかもしれないが)、秘匿計算機能を付与できる。

秘匿スマートコントラクトが実現できることで、実現可能うなサービスが増える。

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すべてのデータが公開されることで実現できなかったものが、実現できるようになる。

多様なメカニズムがデザインでき、様々な金融商品ができる。

わかり易い例ではオークション

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いままでEthereum上でやろうとしたらトリッキーな仕組みが必要だった。

みんなこっそり価格を出し合って、一番高い価格だった人が落札できますみたいなものだと、Hash+罰則みたいな仕組みがひつようだったが、シークレットコントラクトを使うと数行のコードで汎用的な形でできる。

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www.youtube.com

ブラウザ上でシークレットコントラクト付きのEthereumコントラクトにコインをデポジットし、ミキシング後に受け取るアドレスをネットワークに暗号化した状態で投げる。2人がそれぞれの送金先に送金したが、どっちがどっちに送ったのかわからない状況になる。

Enigma Tor Bairからのメッセージビデオ

「グローバルなプロジェクトを目指す上で日本は重要なコミュニティーの一つ。来年メインネットローンチの後、Enigmaのチームは日本へ行きます。みなさんと協力しどのようにプロトコルを使うのか、それぞれのノードのオペレーションについて説明したいと思います。プライバシーのプロトコルと申し上げていますが、プライバシーをデータに関して守る。インターネットに関して重要なことです。電話やコンピュータのアプリケーションはプライバシーを保護していません。DWebのためには分散化したプラットフォームで、アプリケーションを開発するために重要なのはデータを保護しない、ブロックチェーンは世界に開示してします。エニグマはそれを解決していきます。データプライバシーを確保する。皆さんの関心が高ければ、そのような世界を目指すのであれば、すべてのブロックチェーンにそうしたことが必要だと考えるのであれば、Enigmaに関心を持っていただきたいと思います。そしてノードを走らせてください。テストネットワークを今月末にローンチします。メインネットは来年です。お目にかかれることを楽しみにしています。」

これからメインネットローンチするということで、マーケティング活動が活発化していくと思います。

様々な企業がそれを使ったアプリを開発してきたので、同じようなタイミングで様々なアプリケーションが出てくると思います。

送金だけでなく様々なコントラクトを秘匿化できることで、ブロックチェーンの世界観が大きく変わると思っています。

ブロックチェーンの世界は何を成し遂げようとしていたのか、そのためには何が足りないのか、新しい技術で何ができるのか、

大本の思想を理解真ながら、皆さんご自身で考えていけたらと思います。

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