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情報ハイディング技術とブロックチェーンによるコンテンツ管理プロトコル #BCJ2020

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Artreeの芦沢と申します。

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弊社は非金融かつオフチェーンに特化したブロックチェーンの開発を行っております。

今回はインターネット上のコンテンツのブロックチェーンを使った流通管理のお話です。

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たくさんのプロジェクトがクリエイターの権利を保護するために取り組んでいますが、実現には大きな2つの課題を解決する必要があります。

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著作権保護:著作者の意図しない形でコンテンツが使用されることを防ぐ仕組み

還元金決済:コンテンツが複数のプラットフォームで利用された場合に著作者に還元金を送金する仕組みです。

クリエイター目線で見てみましょう。

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著作権保護の仕組みについて、現状のインターネットの課題として、コンテンツが不特定多数の人に無断で利用されてしまうという問題が発生しています。実際にインターネットを利用した著作権侵害の事件数は年々上昇しており、深刻な課題となっています。

インターネット技術はコンテンツ拡散には適している一方、複製や二次利用が簡単にできてしまいます。

コピーされたコンテンツに対して収益が発生した場合、もとのクリエイターには収益が発生せず、無断転載を発見することも既存の技術ではかなり難しいものとなっています。

権利を守るには自身で盗作を発見する必要があり、届け出などを自分でやらなくてはいけない。時間とコストがかかり現実的ではない。

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還元金決済は、クリエイター自身がビジネスを始めるには決済手段を整備する必要がある。IT知識が必要、手続きが煩雑で余分なコストが発生してしまう。

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これらの課題のために、中央集権的な機関にコンテンツ管理を委任せざるを得ない状況になっています。

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そのような構造のため中抜が発生しクリエイターへの還元金は少なく、自身の作品に対して利用規約を自身で決めることができなくなってしまっています。

これは中央集権的なサービスを利用した場合に発生した弊害であるため、クリエイター自身でコンテンツに対して決定権を持つことができ、政党な報酬を受け取ることができる分散化されたあたらしい選択肢が必要だと考えます。

今回はブロックチェーンを用いてインターネット上の著作権管理の課題を解消し、著作者に対して、コンテンツが二次的に創作や流通が発生した場合に直接利益が還元される仕組みを実現しました。

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具体的にどのようなことをしたか見ていきます

主に技術で可能にしたのはこれらの3つです

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無断転載の検知、クロスプラットフォームでのコンテンツの仕様、還元金決済の手段です。

1つ目の無断転載の検知に関しては、ステガノグラフィーという技術を用いることで解決しました。

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この技術はコンテンツに対して暗号化された情報を埋め込むテクノロジーです。

暗号化された権利情報が埋め込まれたコンテンツをブラウザの拡張機能をインストールしたユーザーがデコードすることで、無断転載を検知します。

実際にこちらがステガノグラフィーを用いてデータを埋め込んだ例になります。

左の画像が元のデータで、右の画像が、利用規約など400字の情報が埋め込まれている画像です。

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専用のデコーダーを用いることで内部に埋め込まれているデータを復号することができます。

クリエイターがコンテンツをNFT化する際に、利用規約やロイヤリティーレートなど著作権に関する情報をブロックチェーンに登録します。

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その際にステガノグラフィーを用いて、ブロックチェーンに登録する情報と同じものをコンテンツにも埋め込みます。

無断転載の検知の際にはブラウザの拡張機能として専用のデコーダーをインストールしたユーザーのブラウザが、ネットサーフィンの度にコンテンツ内のデータを自動でデコードします。

図で表すとこちらになります。

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専用のデコーダーをインストールしたユーザーのブラウザが、ネットサーフィンの際に無断転載を発見し、仮にコンテンツが利用規約に違反した使われ方をされていたら、法的機関に情報が送信され、著作者に確認を促します。

著作者が削除依頼や賠償金を希望する場合は法的機関に対して依頼し、何らかの措置が取られます。

この際に法的機関が報酬を受け取った場合、その一部が無断転載を検知したユーザーに支払われます。

そうすることで無断転載を発見するインセンティブが生まれ、検知の仕組みをオートメーション化することができます。

そうすることでインターネット上でコンテンツに対して唯一性を維持する方向へと行動を統制することができます。

次に流通管理に関してシステム化しないといけないことは、コンテンツのクロスプラットフォームでの利用と還元金決済の仕組みです。

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これらをオープンソースのパッケージとシステム認証を提供することで実現しています。

クロスプラットフォームで利用する場合、予めコンテンツを利用したいサービス事業者はクリエイターの利用規約に沿ってコンテンツを利用することに同意することが必要です。

利用規約に同意した場合、サービス事業者はブロックチェーン上に登録されているコンテンツをビジネスに利用することができます。

クリエイターへの還元の手段に関してはオープンソースのパッケージを提供し、収益が発生したタイミングでサービス事業者が著作者アドレスと価格を設定して還元金を送金します。

図にするとこのようになります。

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著作者がアップロードしたコンテンツをサービス事業者は利用規約に同意することで利用できるようになります。

収益が発生した際の還元金に関しては、オープンソースのパッケージを用いることで還元することができます。

これによりクロスプラットフォームでのコンテンツの利用と決済を実現しています。

このようにして今回のプロジェクトでは、クリエイターが自身でコンテンツを収益化させる際に障壁となっていた無断転載の検知と肝現金決済の仕組を実現しました。

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このシステムを使うことに寄ってそれぞれのプレイヤーには様々なメリットがもたらされます。

クリエイターは自分で決済手段や無断転載の監視を行うことなく還元金を直接受け取ることができます。

サービス事業者は自分でデザインを用意することなく従量課金でコンテンツを利用することができます。

法的機関は何らかの措置をとる手続きを自動化し、生産性を高めることができます。

ネットサーフィンをしている人はたまにお金がもらえるようになります。

最後に現在の開発状況についてです。

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現在はERC721とステガノグラフィーを用いたデジタルコンテンツのNFT化の機能を実装して、既に公開されているのでだれでもNFT化することができる状態になっています。

次にブラウザの機能に関しては年内にリリース予定で、来年3月には他のプラットフォームから利用できるクライアントを開発する予定でございます。

以上でブロックチェーンを用いて著作権管理を行うお話でした。

ご清聴ありがとございます。