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ビットコインとweb3をめぐる国内外の温度差:ガラパゴス化を回避するには #BitcoinTokyo2024

  • モデレーター 東 晃慈, 共同創業者兼CEO, 株式会社 Diamond Hands
  • 松尾 真一郎, 研究教授, バージニア工科大学/ジョージタウン大学

東 自己紹介をお願いします

松尾 専門は暗号学でCSの教授ですが27年、28年暗号プロトコルの研究をしている。暗号技術とそれをつかってなにか高度なことをやる。最初にやった仕事が日銀電子マネーの設計と実装、90年代。タイムスタンプとか。2017年に米国に移って、いまは大学でブロックチェーンの研究センターを率いています。暗号屋さんの立場で話したい。

私の言うことを信じちゃだめですよ。帰ったら調べて理解を調べてください。

東 松尾さんは日本とアメリカ療法のエコシステムを長く見られている。アメリカのビットコイン事情について伺いたい。松尾さんにとってビットコインの魅力、どういうところがオモシロイと思っているのか

松尾 日銀のNTTの電子現金プロジェクトに関わっていて、日銀がお札を発行する、精巧な印刷をしているが、アレの代わりに電子署名を使う。電子メールの添付ファイルで転々流通できる、オフライン譲渡できる。耐検閲性がある電子マネーというのはこのときに存在した。ただ、通信エラーが起きると誰にも所有できない状態に宙に浮いてしまう。 そういう泣き所があった。 このときは大腸を日銀が持っていた。

これが、サトシのプロトコルで、皆さんが台帳を持って、宙に浮かなくなった。これは負けたと。当時世界中で考えていた人たちが負けたと思ったと思う。

東 ビットコインを「改善した」ものも出てきていると思うが、ビットコインが一番?

松尾 一番は人によるけど、パラメーターがとても美しくできている。足し算引き算だけを刷る。シンプル。支払いしようとかトランザクション増やそうとか無理をしだすと、TrustedThirdPartyをなるべく減らそうとしているのに、もぐらたたきのように出てくる。ビットコインはそういうのが出てくるのが少ない。機能を増やすともぐらたたきが増える。違う競技。ビットコインは開発が遅い。セキュアが大事だからコンサバに開発して安全性が保たれている。トレードオフをわかってストイックにやっているところがいいところだと思う。

東 それを認識している開発者や学者はあまりいない気がする。なんか口で分散してると言うのが増えている。

松尾 TrustLessとか分散というのがミスリーディングでマーケティングワード。ほんとはそのへんをYoutubeとかで解説したほうがいい

東 今度出ますか

松尾 そのへんを使い分けることが健全

東 アメリカの話に入っていこうと思う。最近の動き、ETF・既存金融の参入、トランプの発言など、アメリカは盛り上がっているように見えるが

松尾 私が確かに言えるところはそんなにたくさん無いかもしれないが、アメリカの、というと守護が大きくてアメリカにも色々軍団がある。民主党と共和党、民主党でも東と西で違う。ビットコインの、というのも守護が大きい。ビジネス側とかすでに持っている人とかコア開発者とかで全然方向が違うと思う。

ビットコインETFとかを歓迎しているのはすでに持っている人とかデジタルゴールドに興味がある人。Coreの人たちはどうでもいいと思う。

2番めが聞きた話かもしれないが、これは夢を打ち砕くかもしれないが、トランプがビットコインの国にするんだと言っているのは、本人はそんなつもりはなくて選挙費用を獲得するために、ビットコイン持っている、暗号資産系の人たちがお金を持っているので、リップサービスをしているのが実態に近い。仮に当選したから実行されるかというと疑問符。政治の話もそう、政治も主語が大きくて、行政立法とか別れている。 大統領が生まれて、金融とか科学の制作を決めるところがあるが、実際実行する人たちがそうやるかは別の話。お互い違う話が収斂しながら進んで行く。

東 トランプが有効的とかハリスはどうかとかいう記事をよくみるが意味はない?

松尾 意味がないとは言わない。そのまま実行するかは別の話。メディアもある種のポジションを持って行動されるケースが多い。そこは割り引く必要がある。

東 カンファレンスに政治家をたくさん読んでいる

松尾 最初はトランプだけを呼んでいた。特定の人だけ呼ぶのはその人が選挙に負けたときにいたいからやらないほうがいい

東 アメリカのほうが一般市民も普及率が高いように思うが

松尾 私が専門家ではないのだが、そもそもアメリカには新しい金融商品を作るのがビットコイン以前から盛んでリーマンショックもあったが金融工学が盛ん、そこにビットコインがあるというだけの話。

ニューヨークのビットライセンスもかなり早い。評判悪かったけど。真面目に取り扱うものとして捉えた。既存金融のエキスパートがDay1から入ってきていた。日本は早い時期に入ってきたとは思えない。証券会社をやめた人が大量に行くということは考えられない。既存金融のエキスパートや規制当局のエキスパート、国際機関のエキスパートがアメリカでは移れるぐらいニーズが有る。

東 一部日本の話しが出ましたが、日本ではビットコインよりWeb3が盛り上がっている。国家戦略としてWeb3を押していくと言っているが、そもそもなんなのか、何を解決していくのか

何を解決する?

松尾 わかんないです。デジタル庁のWeb3.0研究会とか経産省の研究会にいるから怒られちゃうけど、一言でいうとマーケティングワード。Web3とかWeb3.0がこれだというのは言わないほうがいい。

デジタル庁の委員会とかでも言っているけど、ビットコイン以前は普通のエンジニアが暗号技術を使うようなことはなかったのだが、皆さんが喜んで暗号技術をインプリするようになった。これはすごいこと。ゼロ知識証明とかいろいろやっていると思うが、暗号技術に興味を持った人が何千何万人いるのはすごいこと。デジタルアイデンティティウォレットに電子署名つかうのがEUでやっているけど、暗号技術わからないと日本にとって損失。これがわかる暗号技術車が増えることは日本にとって重要。

東 とはいえそこにもう少しクリティカルに入っていきたいんですけど、僕はトークンそのものを否定したいわけではない。DAOって何の話してるんですか?みたいな。それはなんでなんでしょうか。アメリカでは思っているほど盛り上がっていないとか、トランプもリップサービスですとかあったが、アメリカは真剣に金融文脈で捉えてやってきている。日本ではそうではなくてふわふわした議論ばかりしている。日本はビットコインについてもう少し真剣に捉えたほうがいいと思いますか?

松尾 どの質問に答えるのが一番いいかと思ったけど、あとに説明しようと思ったことを今説明したほうがいいかもしれない、日本がどうかはよく知らないからわからないけど、少ないなと思う理由は、アメリカは民主党と共和党の二大政党があって、政権交代が起きるぐらい競争があって、裏でシンクタンクみたいなのがあってシンクタンク同士で制作競争をしなくてはいけない、それぞれの信念で投票するから政策の議論がしっかりしていないと法案がと占い。シンクタンクが種を供給していくから議会や公聴会の質が担保される。政策が競争状態にある点で質が上がる。

東 日本ではじゃあ上がらない?

松尾 日本でそういうことをすればいいんじゃないですか。日本でいうと金融庁はすごくいい仕事をしていると思う。日本の象徴はシンクタンクの役割をしている。経産省がWeb3.0の研究会をやっているが、何をやっているんだと思うかもしれないが、サイファーパンクが集まる機会を作ったりもやっている。

東 表に出てこないだけで、過去はわからないが、ちゃんとやっているし、優秀な人もいるというのは聞きます。 日本で最近聞くことであまり良くないと思うのは、税金が悪い、そこを改善すれば世界で戦えるという。でもそんなことはないと思う。日本とアメリカのレベルの違いはどれぐらい、どこが違うか

松尾 質問の内容をクリアにするために深堀り帯が、どの辺を議論したい?

東 難しい質問ですね 結論から言うと全部。僕は開発者ではないが、ビジネス系の人と話すことが多いが、アメリカの人でビジネス系の人と話すと技術のことをわかっている。日本では、ビジネスの人が技術のことはわかりませんとかいう。アメリカは両方行ける人が多い、日本ではどちらかだけみたいな。日本ではベンチャー起こすような人が、アメリカでは普通に働いている

松尾 それは暗号資産とかに限らずコンピューター系が、そもそも層が薄い。デジタル敗戦とか言われるが。PGP for Cryptoというのをワシントンで月1でやっている。僕はすべてのメールに電子署名売っている。ブロックチェーンやっている人たちが電子署名打っているの見たこと無い。ちょっと違うんじゃないか Pretty Good PrivacyというのがあるがそれをもじってPretty good policy。規制当局やロビイスト、ブロックチェーンの人が定期的に集まって情報交換している。日本の大学でこういうのやっているところ無いんじゃないか。

Scaling Bitcoinというのをやっていてビックブロッグスモールブロック論争が当時あって、ブロックサイズ大きくするとセキュリティが落ちるから開発者は嫌だし利用者は増やしてほしい。アカデミアの流儀で議論するためにやった。2018年に日本に承知。半年ぐらい前から発表を公募したが日本からは1本もなかった。

東 私はビジネスの観点から、アカデミアでも?

松尾 これはエンジニア

東 これは実力不足?

松尾 ビットコインは無国籍だからアメリカ人だけじゃない。OSSコントリビューターが薄かったということは言えると思う。

東 Web3もそう?

松尾 似たような状況だと思う。 2023年にReal Wrld Cryptographyをやった。日本で開催。Bitcoin Coreエンジニアが日本国外から参加したが、日本人のブロックチェーンエンジニアは不在。IETF Meeting 116が横浜で開催されたら、ブロックチェーンエンジニアが不在。Financial Cryptography 2024でも日本からの参加者はブロックチェーンの人間はいなくて暗号プロトコルの人間だけ。

アメリカで活躍するのは世界の土俵だとブランディングする国。NISTが世界中から暗号を公募してコンペティションで勝ったものを採用する。

政府機関をやめたやつが大学に行ってインナーサークルで将来どうなるみたいな話をする。たとえばゲンスラー。DARPAの資金でやる。

研究テーマになって政府の予算がつけられて民間でも物になりそうだとなったら民間からの資金で研究していってスタートアップ企業でビジネス化されていく。

こういうパイプラインができている。ブロックチェーンに限らず。デジタルの世界の日米の差の根幹。

東 他にも色々聞きたいことがある。今日の話を受けてまとめと提言

松尾 あ、まとめのスライドの前にここ止めて、トランプの言葉よりも、米国はデジタル資産エコシステムでこういうことをやるというのを政府が出している。こっちのほうが大事。じゃあ最後の話活きましょう

東 日本ってどうするのがいいのか、アメリカが上手くやっているとして、その差は縮められるのか。このままの構成でWeb3やっていくのは良くないと思う。どこかで軌道修正刷る必要がある。もう少しビットコインにアンテナを貼るべきだと思う。レギュレータもそうだし業界全体として。というのは個人的にあるが、松尾さんはどう思うか

松尾 一言でいうと、どこが弱いかと言われて全部といったが、全部を強化しなければいけない。どれももうちょっと、Web3をディスるとかじゃなくて、ふわふわとした議論じゃなくて、お金とリソースをかけて真面目にやりましょう、政策議論もそうだし技術者もそうだし。王道をやる。人のこともそうだし。税金を解決すれば世界で勝てるというのはおかしい。日本のサッカーチームの税金をまけてあげたら世界一になるということはない。なにかの役に立つかもしれないが、そこだけにフォーカスをしてもだめ。

東 全体ということになるかもしれないが、注力するところは。。。

松尾 人材育成、政府のお金が入ると日の丸マークが付く。でもビットコインはグローバル。多国籍、無国籍。他国性競争するようなことに政府のお金、民間のお金を投じないといけない。

僕のいる研究センターはアメリカのNSFからお金をもらっている。金融庁や日本企業から人材が来ている。 Eric Burgerなど政府でデジタル資産の方針を書いたひとが降りたときに大学で採用して一緒にやっていく。

今年の春、SCISという日本の暗号学者が集う会があって、ブロックチェーンに従事する研究者とエンジニアがSilidityHouseにあつまった。こういうことを地道にやっていったらいいと思う

東 アカデミックがもう少し、コミュニティ視点では、アカデミックの人に、これはだめでしょみたいな意思表示を出してほしい。なんちゃって専門家のところに話が言ってよくわからない議論を出す。日本のアカデミアにも責任があると思っているが。今日は松尾さんに来ていただいてこういう議論をして有益だと思うが、冷静に考えておかしいことって日本にはいっぱいあると思っていて、そういう立場の人にもっと発言してほしい

松尾 アカデミアが社会にどういう関係を持っていてどういう価値を出すかは文部科学省が考えなければいけないが、それは価値がある話だと思う。

明日の予告、サイファーパンクの歴史の話がある。ビットコインを作る強力なモチベーションの一つはサイファーパンク運動。9.11でAMLKYCが厳しくなった。97年にサイファーパンクが始まって?

ここにQRコードが有る。暗号戦争アメリカという番組。これを明日までに見ていただくと。

Financial Cryptography Conference 次回は日本。2025年宮古島。研究成果がある人はここに是非、締め切りすぐだけど。

東 サイファーパンク運動について知っておくことでレギュレーターとの付き合い方とかがクリアになる?

松尾 このときも、暗号技術は武器だからアメリカから輸出できなかった。輸出できるように戦ったのがサイファーパンク。そのときも海外のテロ組織に使われるかもしれないから輸出規制だった。

いまはE2E暗号化、禁止しようとオーストラリアやヨーロッパで言っている。テレグラムの話とかもつながってくる。政府は監視したり、テロ組織に対してなにか悪いことが起きないようにしたい。ビットコインもテレグラムもそう。10年後20年後も繰り返すのでそのことを理解しておくのは大事。