モデレーター 宮原 海, 事業開発, Breez 練木 照子, フルグル合同会社
宮原:最近暮らしが苦しくなった方は手を上げてみてください。 インフレってなんなのか、考えたことがあまりなかったので深堀りしたいと思います
練木:インフレとよく聞くが物価上昇と思われがちだが、英語のインフレートから来ている。何を増やす?膨張する?というと貨幣の供給量。市場に流通するお金の量が増える。市場で購入可能なものやサービスの量は変わっていない。そういうものに対して手に入れるために利用できるお金の量が増えている。そうすると1単位あたりの価格が上がる。お金の供給量が増える結果、物価が上昇している。
宮原:適度なインフレが好ましいという話はどう思うか
練木:企業が努力をしなくても利益が増えると野口先生がいっていた。 貯蓄者の立場からは好ましいことは全然ない。100万円が5年後には90万円分の価値しかない。知らないところで価値を掠め取られているようになる。消費者には決して好ましいことではない。
宮原:生活を維持するために仕事を掛け持ち
練木:掛け持ちなんてしていないと、みなさん意識していないかもしれないが、勉強したくもないのに勉強してリスクを取って投資をしていると思う。賃金がインフレを上回るペースで増えていればいいが、そうでないときに投資に駆られる。不動産や株に投資しておけばインフレ率を上回るリターンを得られるので購買力は維持される、増える。でもドル建てで表示するとそうでもない。 この2年ぐらい円は減価速度が早くなっている。給料が増えていなければ食費が膨らんで自由に使えるお金が減っている。海外で暮らしていると自由に使えるお金はこの5年間で半分になってしまった。
宮原:私はNYに住んでいますが海外では関係ないかと思いきやそうでもないんですよね
練木:原油価格・金とドルのチャート。ドルと金という2つの貨幣を比べるとドルが負けている。
宮原:お金について
練木:お金には3つの機能がある。
「価値貯蔵手段」購買力を保ちながら目減りせずに価値を持っていることができる。なにかが貨幣になるための第一歩。その認知が広がるとそれをそのまま受け取るお店が出てくるそうすると
「交換手段」に進化する。受け取るビジネスが増えてくると、それを単位で物の価値を表すようになる。最後に貨幣として完成するには
「価値尺度」になる。これで3機能揃えた貨幣になる。
宮原:注目したいのは希少性のこと
練木:お金の要件を並べた。耐久性、携帯性、代替性、検証性、可分性、希少性、実績、検閲体制
珍しいということが価値貯蔵手段になる。多くの人が持っていたいという所有欲を掻き立てなければ価値貯蔵手段にならない。絵画がある意味価値貯蔵手段になるのはある意味そういう面。何が希少性の要件か?それを作るのが難しく、作るのにコストがかかる。そうすると希少性を持つ。ハード(作るのが難しい)マネー=健全なマネー。作るのが簡単だとイージーマネー=不健全なマネー。円とドルの流通量の推移を見るとすごく増えている。増えているということは増やすことが簡単なんでしょう。安倍元総理大臣の発言、「紙とインクでお金を刷るんですよ。20円で1万円札が発行できるんですから。」
宮原:イージーマネーの流通量が増えるとハイパーインフレにたどり着く
練木:貨幣供給量があまりにも増えすぎると、お金としての信用を失う。ベネズエラとかではお金が紙くずのように路上に捨てられていたり、お給料をもらったらその足でトイレットペーパーやバナナに変える。物質に変えておかないと明日になったら何も変えないという恐怖からそうする。ハイパーインフレは歴史上57回あった。56回が法定通貨制度になってから起きている。ビットコインスタンダードでは法定通貨時代の経済的人災だといっている。
宮原:金の流通量を見ていくとこちらもハードマネーなのかイージーマネーなのか。本当にインフレを防げるのが疑問
練木:1681年からのチャート。さっきよりスパンが長いので同じとは言えないが。金は歴史上長くお金と認識されてきた。金本位制の時代は繁栄と平和の時代と記憶されている。それでも増えている。価格が上がれば利益目的で増産に走る。あとはこれだけ時間をかければ技術革新が起きて採掘が安く楽にできるようになる。希少ではあるが、先行きが読めない。供給量を予測できない。予期せぬインフレが起きる可能性がある。
宮原:それに比べてビットコインの流通量は
練木:マイニング報酬はどんどん半減していく。2100万枚の供給キャップがあるから希少と言われるが、もう一つ重要なのは、不確実性がない、予期せぬインフレがない。安心して、確実に自分の将来設計ができる。法定通貨は、お子さんが生まれたときに18歳になったときのための学資を蓄えなければならない。しかし0歳から預金しても価値が下がって追いつかないので投資をしなければいけなかったりする。ビットコインなら予期せぬ価値の切り下げが起きない。価値貯蔵手段としての機能に優れている。不確実性を排除して長期的なビジョンを持って生活できるようになる。
宮原:みなさんも自分の人生でなにかの目標に向けてお金をためたりしていると思うのですが、子ども2人いてどうしたらいいか悩んでいたが、ビットコインでアセットを守れる安心感が出てきた。
練木:ビットコイナーになると消費欲、物欲が薄れるという経験をした人がいると思う。1/3ぐらいですね。ビットコインのまま保有していても価値が希釈されない、減価しないものを価値貯蔵手段として手に入れたことで、特にいらないもの、来年いるかも知れない今いらないものは買わなくていいんだと、重圧感から開放されたのだと思います。時間選考が低下してこういう結果になっている。
宮原:焦りが薄れると感じています、個人的に。アルトコインとの比較の話をしたいと思います。
練木:2020年前後、ビットコインがsound moneyと言われていた頃、Ethereumは供給が減るからUltra Sound Moneyだといっていた時代がある。ただ、その時問うべき質問は、ハードマネーだというのであれば、その生産は難しいですか容易ですか、コストは高いですか低いですかということを調べてほしい。供給は予測可能ですか、予期せぬインフレは起きませんかということを聞きたいです。
宮原:イージーマネーを選択した社会では何が起きているのか
練木:マイクがお金になったとします。いままでステージ上で声を覚醒するという実用価値があって価格がついていました。そこに、これを、コーヒースタンドに持っていくとコーヒーをもらえるということになると貨幣プレミアムが乗ってくる。それを欲する人が増える。いままで声の拡声器としてしか求めなかったのに、コーヒーを買いたいからマイクをほしい人が増えてくる、そうすると需要が増えて価格が押し上げられる。価格が押し上げられるのを見たマイクの生産者は増産を始める。利益が伸びる、その利益を設備投資にまわしてもっとマイクを作る。となると市場がマイクであふれる。そうするとある一定の境を越えるとマイク価格は暴落する。この一連のプロセスで何が起きているかというと、貯蓄化・消費者である私達から富の移転が起きている。
これに気づき始めている人たちが増えている。そういう人たちが金やビットコインに逃避している。消費者だけではなく企業の間でもこの動きが始まっている。去年1年だけでコーポレートトレジャリーに取り入れている企業が3割も増えた。 企業がお金を全部キャッシュで持っていた場合と、MMFで持っていた場合と、キャッシュと3%ビットコインにした場合で比べると、ほかはマイナスリターンだが、ビットコインを3%いれると+7.31%のリターン。こういう事に気づいた企業がビットコインを取り入れている。
ブラックロックのCEOは2017年にビットコインのことを資産洗浄需要指数だなど、手を変え品を変え悪く言っていた。それが、今年1月、ETFを自社から出して、180度逆の発言をするようになりました。「みんな見直すべき」「金のようなもの、あなたを守る資産」等と言っている。
宮原:みなさんにもっとじっくり考えてもらいたいのはインフレ、お金ってなんなのか。
練木:ビットコインはただそこに存在している。使いたいと思えば使えばいいし、使いたいと思わなければ使わなければいい。ただ、ビットコインで生活できている人達がいる。そういう人たちのことを邪魔しないでほしい。使いたくなければ使わなければいい。ただ、妨害しないでほしい。