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金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」(第4回)

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開会

資料1 「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」メンバー名簿

ただいまより暗号資産制度に関するワーキンググループの第4回会合を開催いたします。

皆様ご多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。最初に事務局から冒頭ご案内の通り、今回は紙媒体での資料配布に変えて資料を格納したタブレット端末を配置しております。ご不明な点がございましたらお近くの事務局職員へお声掛けください。

また前回の岩下委員からのご指摘を踏まえ、今回から消費者庁にオブザーバーに変わっていただいております。消費者庁を加えたメンバー名簿を資料1として配布しておりますのでご確認ください。

それでは議事に移ります。はじめに事務局より暗号資産のセキュリティ確保に向けた対応についてご説明をいただきます。続けて日本暗号資産等取引業協会より今回の規制見直しを踏まえ、協会の体制強化に向けた取り組みと適時情報提供の現状についてご説明をいただきます。最後に事務局より今回ご議論いただきたい事項についてご説明をいただきます。その後メンバーの皆様にご討議をいただくという流れで進めさせていただきます。それでは事務局よりご説明をお願いいたします。

事務局説明① 暗号資産のセキュリティ確保に向けた対応について

それでは事務局より暗号資産業界含め金融庁におけるサイバーセキュリティに関する取り組みについてご紹介ご説明させていただければと思います。

  • P.1
    • 金融庁では2015年の金融分野におけるサイバーセキュリティ強化に向けて取り組み方針なども含めまして、こちらにありますようにガイダンスの提供、モニタリング、それ以外の公助の取り組みということで取り組みを進めてきております。
    • ガイダンスの提供にいたしましては、例えば上から2つ目にありますような各業態向けの監督指針、あるいは金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン、これは業界横断的なものとして策定をしております他、個別の脆弱性に関する事案については、内閣官房などとも連携しながら各業界に対する注意喚起を行う、あるいは各種事案に対しては要請を行う、またグローバルとの関係ではG7サイバーエキスパートグループに、こちらも2015年から設立当初から参画をして議論に貢献をしてくる、あるいはモニタリングといたしましては、暗号資産業界も含め各業態に対しては実態把握、オンオフの検査、モニタリング、あるいはシステム障害などが起きた場合の対応、こうしたものを重ねてきております。
    • またこのガイダンスの提供、モニタリングといった一般的な監督とはまた別の公助の取り組みとしては、業界横断的な演習、デルタウォールというもの、こちらも今年で10回目になりますけれども進めてきております他、サイバーセキュリティセルフアセスメントということである意味アンケート的なものを渡して自己点検をしていただく、あるいはTLPTと言いまして、脅威ベース、攻撃者目線で各金融機関のシステムをシナリオを作って攻撃をしていく、ホワイトハッカーが疑似攻撃のようなことをして脆弱性を洗い出す、こうした取り組みがありますけれども、こうしたものの取り組みの事例の還元であるとか、実際に地域金融機関向けには予算を取ってこういう実証事業をやったこともございます。
    • またこれらの取り組みについては一番下にありますけれどもレポートということで、ホリゾンタルに分析した結果を還元させていただく、こうした取り組みを進めてきておりまして、2025事務年度 、今事務年度の金融行政方針におきましても、一番下にありますように 地政学的な緊張も背景としながら、サイバーセキュリティリスクが高まっているということで、横断的なサイバーセキュリティ演習も含め取り組んでいくということを指摘させていただいております。
    • 特にこのデルタウォールについては、今年度の実施におきましては、暗号資産業界については暗号資産業界特有の暗号資産の流出事案を念頭に置いたシナリオで実施することにしていると聞いております。
  • P.2
    • こちら、金融分野におけるサイバーセキュリティガイドラインということで、こちらは暗号資産業界に限らず業界横断的なものでございますけれども、こちらは昨年の10月に監督指針などとは別にですね、(音声途切れ?)管理体制といったことで管理体制の構築、リスクの特定、防御検知、インシデント対応復旧、そして(音声途切れ?)金融業界では特に重要になってくるサードパーティーリスクの管理を挙げております。
    • これらの思想としては右側中段にありますけれども、金融機関によっては当然それぞれシステムリスクも異なりますので、一律のものではなくてリスクベースアプローチ、かつ自助、共助、公助、これらを組み合わせて対応していくということで、暗号資産業界に対するモニタリングにおいても、これをベースに取り組んでいるということになっております。
  • P.3
    • ではこの暗号資産業界についてはどうかということで、暗号資産をめくるサイバー攻撃の状況ということですけれども、こちらの大変残念ながらビットコイン誕生以降ですね、日本に限らず全世界で暗号資産の流出につながるようなサイバー事案というものは数多く発生しているのかなと思っております。
    • 例えば2011年、後に2014年に破綻するこのマウントゴックス社の2011年の流出事案においては秘密鍵の盗難が原因ではないかといったことが指摘されております。
    • 他方で直近の事案では、こうしたより直接的なものだけではなくて、ソーシャルエンジニアリング、様々な人的なものに対する関わり、攻撃なども含めたものになってくるなど、手口がより巧妙化してきているのかなというふうに考えております。一番下に直近の大規模な攻撃事案に関わる各種プレスリリースを切り貼りしておりますけれども、一番左側にあるのが自主規制機関が出したものですけれども、これに対して警察庁の方ではより具体的な攻撃者なども含めて攻撃を解説をしてくれております。
    • こうした取り組み、動きについては一番右端の公安調査庁が出しておりますサイバー空間における脅威の概況といったものの中でも、一部の国が大量破壊兵器開発の資金源として暗号資産を窃取しているのではないかといったことも指摘をしているということですので、こうした攻撃者が個人などではなくて、国家も攻撃、国家単位で攻撃をしてくるという状況になっておりますので、国内外の投資家において暗号資産が投資対象と位置づけられる状況が生じていることを踏まえますと、業界個社のサイバーセキュリティ体制の継続的な強化、これに対して官民で対応していくということが不可否ではないかというふうに考えてございます。
  • P.4
    • 今お話した直近の大規模な流出事案を踏まえましては、以下のような対応をさせていただいているところでございます
    • 金融庁としてはまずは注意喚起をさせていただいた。
    • こうした特殊な手口も出てきてますよということも、注意喚起させていただいた上で、自主点検を要請しております。
    • その中では経営陣の認識、関与、そこのリテラシーが一番必要であるということを指摘しつつ、暗号資産の管理体制としては、もちろんこの体制構築だけではなくて、実際にその三線管理の体制が有効に稼働するかといったことも含めて、点検していただくことが必要ではないかといったことを指摘しております。
    • また下の方ですけれども今回の不正流出事案においては、具体的なソーシャルエンジニアリングの手法が使われたということが分かっておりますので、こうした手口の例などを示した上で、注意喚起を、金融庁だけではなくてですね、金融庁や内閣サイバーセキュリティセンターとの連名で行った上で自主点検をお願いし、またこれらのフォローアップもしながら当庁としては継続的なモニタリング、監督対応を今後も行っていく必要があるというふうに考えております。
  • P.5
    • こうした取り組み先ほど自助・共助・公助ということも申し上げましたけれども、行政のモニタリングだけ、あるいは個社の取り組みだけで足りるものではないというふうに考えております。そうした観点からは、こちらサイバーセキュリティガイドラインにおきますように、共助の取り組みということで、銀行・証券・保険などの金融分野では金融ISACという共助の機関がワークしております。
    • このワークしている状況としては技術的な課題への対応、ベストプラクティスの共有、そして最新のサイバー攻撃の動向分析、こういったものが共有されていくことが、この金融ISACなどを通じてですね、重要だということを記載しております。
    • またJVCEAさんの自主規制の中でも、情報共有体制、情報共有機関を通じた情報収集といったものも加えていただいているということだと思っております。
    • サイバーセキュリティにおきましては、攻撃に対応できる各社におけるセキュリティの観点を盛り込んだシステムの設計であるとか、あるいはそこで働く方、あるいはサードパーティーを通じた、社会とのつながりを通じた攻撃に対する防衛策、あるいは常時ログや活動記録を観測することで、予兆をしっかり見ていくということ、そしてインシデントらしきものを見つけた際には、現場が責任追及などを恐れて報告相談がしないということがないような内部での環境をきちんと整えていただくということ、そして発見されたインシデントに対しては、ビジネスを遂行されている経営陣が責任を持ってその影響を、評価をしていただきながら、私どもも含めた内外との連携を進めて対処していく(音声途切れ?)ということが重要であると考えております。
    • こうした自助だけでは対処しきれないような、少なくともこうした攻撃者的なことですね、あるいは脆弱性のようなもの、こうした日々(音声途切れ?)動いていくような対象について、こういったものも重要になってくる、そうした観点では必ずしもこれは競争領域ではなくて、業界横断的に、あるいは業界をさらに超えたような形で共同戦線を張っていくということが、極めて重要であるというふうに考えております。
    • そうした点では多くの重要インフラにおいても多社間で協調していくべき環境では、協調していくという、ISACのような取り組みは進んでおりますので、暗号資産業界においても、こうした取り組みが今後深まっていくということが大事だろうというふうに考えておりますし、私どもパブリックセクターとしても、こうした取り組みについて必要に応じて後押しをしていくということが求められますし、実際にやっていきたいというふうに考えております。

ヒアリング 日本暗号資産取引協会 小田

資料3 ヒアリング資料

それでは暗号資産取引協会より説明させていただきます

  • P2
    • 本日2つ、暗号資産情報の確認体制、またJVCEAの体制強化に関して、その2つに関して当協会より説明させていただきます。
  • P3
    • まず第1点目、暗号資産情報の確認体制についてでございます。
  • P4
    • 前回、第3回ワーキンググループでIEOに関する情報を説明させていただきました。実際にIEOに関するものが、どういう情報が、どういう内容が適時開示されているのかという点、それをこの4ページ目まとめさせていただきました。このページでいただいて分かる通りですね、比較的情報の内容、情報開示の変更の内容がたくさんある銘柄、たとえばPLTに関してはですね、全部で9通ほど、適時開示されているんですけれども、それ以外あまり適時開示、情報がない銘柄に関しましては、情報開示がないもの、また1つないし2つという風になっていることが確認できるかと考えております。
  • P5
    • IEO案件以外の情報開示なんですけれども、どういったものが情報開示、適時開示されているかという点なんですけれども、主に暗号資産がですね、ハードフォーク等でブロックチェーンが変わるもの、もしくはブロックチェーンが分岐するもの、またはそれに関連する内容でですね、暗号資産の送付移転に制限がかかる情報、そういう内容に関しましてIEO案件以外で情報開示、適時開示として情報を発信していただいております。
    • JVCEAの方なんですけども、まずIEO案件に関しましては情報開示、情報の適時開示に該当するものに関しましては、会員企業に対して適時開示を、共有を促すとともにですね、またそれ以外の銘柄に関しましても、グリーンリリスト、CASC制度といいまして、こちらの一定の暗号資産審査ができる企業に関してはですね、3ヶ月に1回、何らか情報変更がある場合に関しては、その情報の開示適時開示を求めていると、適時開示情報があるかのモニタリングをしております。
  • P6
    • 協会の方で今求めているもの、暗号資産の会員企業に求めているものなんですけれども、暗号資産取扱いに関する規則に基づきまして、原則として第2線分野、つまりコンプライアンス部門が独立して、取扱い暗号資産に関してチェックをするということ、この体制を求めております。
    • また適時開示に関する体制等に関しまして、取扱いリスクまた暗号資産の価格に影響を及ぼすおそれのある情報に関しては情報の収集また公表に努めなければならないとされておりまして、会員ではモニタリング担当部署を設置していただいております。
    • こういう体制で暗号資産情報を確認しているということを共有させていただきます。
  • P7
    • 続きましてJVCEA体制強化に関しまして説明をさせていただきます
  • P8
    • これまでの5年間のですね協会JVCEAの収入支出の状況等を記載させていただいております。
    • このページを見ていただいて分かる通り、当協会ですね、今現状で会員数が32社でございます。会員数がまだ限定的ということもありまして、収益状況、財務状況は決して順調ではないと。収益に関して収支均衡という状況が続いております。現状で会員企業が32社ということもありまして、収支均衡するためにですねこの下の方の下ポツの一番上なんですけども、暗号取引業、会員企業から普通の会員の年間費720万円、暗号資産デリバティを行う場合は960万円と、比較的年間費が他の業界団体と比べても高い金額をいただいているという状況でございます。
    • この年会費が収益の中心で、会員企業が増えていくという流れになった場合には、もう少し収入が入ってきまして、より安定した協会活動ができるんじゃないかなと考えております。
  • P9
    • 協会がどういう体制で運営されているのかということを、こちらの表にまとめさせていただいております。
    • こちらはご参照までに確認いただければと存じます。
    • これまでのワーキンググループでも様々な指摘をいただいたという認識をしております。
  • P10
    • これまでですね我々暗号資産等取引業協会の方でですね、大きく5つほどの点をですね、特に重要な点と認識いたしまして、これまで対応してまいりました。
    • 特に重要な点が上から上の2つ目、セキュリティ関係、金融犯罪対策、この2つがですね、特に重要な点と認識をしております。
    • それ以外にもですね、暗号資産審査、不公正取引の監視、利用者保護ですね、この点も当然重要な点として、これまで対応してまいりました。
    • 特に上から2つ、セキュリティ関係、金融犯罪対策に関しましては、この次のページ以降で詳細の説明をさせていただきたいと存じます。
  • P 11
    • この業界、これおそらくしっかり対応しているのは日本だけと考えているんですけれども、今現状で日本の暗号資産交換業者なんですけれども、まず前提としてお客さんの資産ですね、これは100%分別管理しております。 -またその上でなんですけれども、お客さんから預かっている暗号資産、こちらに関しましては、もう実質100%ですね、コールドウォレット、つまりインターネットにつながっていない状態で管理をしていると、こういう状態をとっております。
    • 残念ながら昨年ですね、また大規模なハッキングが発生してしまいましたけれども、一方でコードウォレットで管理しているということによって、ホットに比べて一定以上のセキュリティ対策、体制をとっているということ、これに関しましては改めて皆さんにも共有させていただきたいと考えております。
  • P12
    • 続きましてマネーロンダリングですね、マネーロンダリング対策に関しましても、これも最重要事項の一つとして考えております。
    • 2023年、改正犯収法が施行されたことを踏まえまして、FATFのガイドラインに基づくトラベルルールの対応、こちらを暗号資産業界の方で対応実施しております。
  • P13
    • こちらの暗号資産というとですね、簡単にどこにでも送ることができると考えていらっしゃる方、多分多くいらっしゃるかと思うんですけども、実際に日本のですね、国内の暗号資産交換業者に関しましては、今現状どうなっているかというとですね、簡単にどこでも送れるというわけではなく、あらかじめここに送りますということをですね、お客さんに設定、登録していただいております。
    • その内容をですね、その送付先がこれがいわゆる問題あるところじゃないか、ブラックリストに登録されてないかという点、これをですね暗号資産交換業者の方でちゃんとモニタリングをして、問題ない先にしか登録・送付ができないと、そういう形でですね、暗号資産交換業者の方はですね、こういう対応をしてですね、マネーロンダリング対応しているということ、この点を共有させていただければと存じます。
  • P14
    • これ以外の取り組みとしてもですね、様々な取り組み、暗号資産業界としては対応をとっております。
    • 先ほどFATFトラベルルールの紹介もさせていただいたんですけれども、トラベルルールに関しましても、確か2023年6月に施行されたのですが、その前に業界としてしっかりと対応していこう、という形で法令改正前に、これを施行する、対応するという取組をさせていただきました。
    • またそれ以外にもですね、当局と連携していきながら、いわゆる暗号資産を騙る不正案件、投資詐欺案件等に関してですね、情報発信注意喚起をしていくと、こういう対応させていただいております。
    • また警察庁とも連携していてですね、不正アカウントの凍結フロー等の構築、こういう対応を今現状で行っております。
  • P15
    • 先ほど当局の方からもご指摘ありましたけれども、セキュリティ強化に関しましては、セキュリティ委員会を中心として、以下の取組を実施しております。
    • まず1点目、こちら第3回目で松尾委員の方からも提言ありましたけれども、JP Crypto ISACと連携していく、ここに関しましてもJVCEAセキュリティ委員会における議論の取組として、こういったCrypto ISACを作っていくこと、これが必要なんじゃないかという 提言をさせていただいて、この設立に至っているというところ。
    • また2番目、安全管理標準、これはすごい大事なとこだと思っておりまして、先ほどの当局の方からですね、昨年のハッキング事案に関して少し説明がありましたけれども、ただコールドウォレットで管理するだけではですね、十分ではないと業界は考えておりまして、どういう対応をとっていったか、それが管理体制だけではなくですね、どうオペレーションを運用していくのか、こういう点を含めて安全管理標準ですね、これを常に見直しをやっておりまして、こういう点を含めて、今この業界としてセキュリティ対応に関しましてはさせていただいていることをですね、本日私の方から改めてご案内、紹介させていただければと思います。

事務局説明②

資料4 事務局説明資料②

  • P1
    • 資料4に沿って説明させていただきます。
  • P2
    • 1枚進んでいただきまして、目次でございます。今回ですけれども、業規制の各論について、またそれに関連する無登録業者への対応、海外業者、DEXへの取り扱いということ、そして不公正取引制の各論、そして最後に暗号資産投資に係る金融リテラシーの向上について取り上げさせていただいております。
  • P3
    • 業規制に関するこれまでの議論でございますけれども、第2回のワーキンググループにおきましては、以下の基本的な方向性については、おおむね賛同いただいているものと理解しております。
    • まず、基本的に第一種金商業に相当する規制を課すということ。
    • 次に、金商法では法令レベルで定められている規制が自主規制で義務付けられていると。そういったものにつきまして、普遍性の高い規制につきましては法令レベルに引き上げる。
    • また暗号資産の安全管理措置等に関する特別の規制につきましては、引き続き同様の規定を整備していくと、そういった内容でございました。
    • そうした第2回のワーキンググループにおきましては、以下のようなご指摘があったものとして整理させていただいております。
  • P4
    • 業規制の整備の基本的な方向性でございますけれども、基本的に第一種金商業に適用される規制と同様の規制を適用するということとし、第一種金商業には相当する規定がなく、現行の資金決済法に設けられている暗号資産の性質に応じた規制については、金商法に新たに設けていくと、そういった考え方で整理させていただいておりまして、その下次のページに渡って○×書いた通りの方向で規制していくということでどうかということにしております。
  • P5
    • 業規制に係る個別の論点からご説明させていただければと思います。まず兼業規制についてでございます。
    • 第一種金商業では他業での失敗が経営の基礎を危うくすることのないようにするなどの観点から兼業規制が設けられております。
    • これは業務の範囲を一定の範囲内に制限するということではなく、他業を営んでも問題がないかということを確認する、そういった趣旨でございまして、具体的には付随業務、届出業務、承認業務、そういった分類がなされておりまして、本業からの関連性に応じて規制が設けられておりまして、承認業務として事前に承認を受けること、こういったことを要することとしております。
    • 暗号資産交換業者につきましては現行法上兼業規制は設けられておりません。このため、金商法で規制する場合に現行と同様に兼業規制を設けないということも考えられますけれども、
    • 利益相反の観点も含め、他業のリスクによる投資者に不測の影響が生じることのないよう、行政による一定の事前チェックを行うことが適当ではないかとさせていただいております。
    • 例えばということで、暗号資産交換業では、第一種金商業の場合と比べまして、これを本業としない業者の参入も想定されることを踏まえ、特段の手続きを経ずに行える付随業務として法令上に列挙した業務以外は、事前承認ではなく事前届出を求めることなどが考えられるかとしております。
    • また一番下の※でございますけれども、第一種金商業など、暗号資産交換業以外の業務を行う金商業者が、暗号資産交換業を行おうとする場合には変更登録を要すると、そういったことが考えられるのではないかとさせていただいております。
  • P7
    • 次の論点といたしまして利用者財産の管理についてでございます。現行の資金決済法では流出リスクを低減させる観点から、顧客の暗号資産をコールドウォレット等で管理し、原則としてコールドウォレット等で管理し、ホットウォレットで管理する顧客の暗号資産については別途見合いの弁済原資を履行補償暗号資産として保持することが義務付けられています。
    • また現行の資金決済法では情報の安全管理のために必要な措置を講じる義務が設けられています。
    • 他方で先ほど来説明がありましたように、最近の流出事案ではソーシャルエンジニアリングが用いられるなど、手口がより巧妙化しているということで、こうしたことへの対応するという観点から新たに法律上の義務として利用者財産の安全管理義務を定め、サプライチェーン全体を含めたより包括的なセキュリティ対策の強化を求めることとしてはどうか。
    • その際具体的な対策については技術の進展等を踏まえて柔軟に対応できるようガイドライン等で定めることが適当ではないかとしております
    • その下の※でございますけれども、利用者の暗号資産の移転するために必要な秘密鍵の一部を預かる、そうしたサービスも現状提供されているものと承知しております
    • この場合、暗号資産の管理を行っているものではないため、暗号資産交換業の登録は不要とされていますけれども、仮に秘密鍵の紛失が生じた場合には、移転できなくなるリスクがあるということでございます。
    • 現状では一般投資家は国内の暗号資産交換業者が提供するウォレットを利用することが中心と思われますので、そうしたサービスについて直ちに規制を設ける必要性は低いと考えられますが、当該事業につきまして暗号資産交換業の対象とすることは規制が過重なものとなり得るとの指摘もあることを踏まえ、どのように規制をしていくべきか将来的な課題として検討していくことが適当ではないかとさせていただいております。
  • P9
    • 責任準備金についての論点でございます。金商法では第一種金商業が証券事故発生時の顧客への賠償金の支払いを円滑にするために、責任準備金の積み立てが義務付けられております。
    • そして業者側の違法、不当な行為について損害を補償する場合以外には、行政の個別の承認を受けなければ使用できないこととなっております。
    • 暗号資産交換業者につきまして、現行のこの規定をそのまま適用することになりますと、ハッキングにより顧客の暗号資産が流出したとしても、業者の違法性不当性がない場合には個別に行政の承認を受けなければ補償を行うことができないということになりますので、こうしたことも踏まえまして、ハッキングによる顧客暗号資産の流出事案に備え、過去の流出事案の発生状況等を踏まえ、一方で過度な負担とならないようにも配意しつつ、適切な水準の責任準備金の積立を求めることが適当ではないかと。
    • また流出事案の原因究明に時間を要して、迅速な顧客対応を損なうことのないよう、行政の個別承認を受けずに責任準備金による補償を可能とすることが適当ではないかとさせていただいております。
    • これはホットウォレットで管理する暗号資産については履行保証暗号資産として保持することは義務付けられておりますので、コールドウォレット等で管理する暗号資産についての流出リスクに対応するものとすることが想定されます。
    • またでございますけれども、補償の原資を確保するための選択肢を拡大する観点に代え、またはその積立と合わせて保険加入による補償原資の確保を認めるということとしてはどうかとさせていただいております。
  • P11
    • 業務管理体制の整備についてでございます。現行の資金決済法では利用者の保護を図る、そして暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行を確保するために、一定の必要な措置を講じることが義務付けられているところでございます。
    • 金商法では(音声途切れ)例えば取扱う暗号資産の審査体制、顧客がリスク負担能力の範囲内で取引を行うことを確保するための確認を行う体制、売買監視体制、暗号資産の発行者が情報提供規制に違反した場合には当該暗号資産を取り扱わないようにするための体制、こういった体制の整備を求めたらどうかとさせていただいております。
  • P13
    • 業者の退出時における顧客財産の適切かつ円滑な返還についてでございます。金融審議会の市場制度ワーキンググループにおきまして、現在顧客財産の預託等を受ける金商業者全般につきまして、退出時における顧客財産の適切かつ円滑な返還を確保する観点から、現在の経営陣には適切な業務運営が期待できない場合に行政に委任し、当該経営陣に代わって業務及び財産を管理すること等を可能とする仕組みの導入が検討されているところでございます。
    • 暗号資産交換業者が破綻した場合等の業者の退出時において、履行保証暗号資産の返還も含め、顧客財産の移管や返還が適切かつ円滑に行われるよう、暗号資産交換業者もこうした仕組みの適用対象とすることが適当ではないかとさせていただいております。
  • P17
    • 仲介業の規制に関する論点でございます。本年の資金決済法改正におきまして、電子決済手段や暗号資産の取引の媒介のみを行う事業者によるサービスの提供を行いやすくする観点から、電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の類型が創設されております。この仲介業につきましては、金商法上の金融商品仲介業と基本的な規制の立て付けが共通しております。
    • 暗号資産取引を金商業規制の対象とすることに合わせて、暗号資産取引に係る仲介業も金商法上の仲介業規制の対象とすることが適当ではないかとさせていただいております。
    • その場合必要な経過措置を設けた上で、基本的に金融商品仲介業に適用される規制、例えば外務員制度などですけれども、同様の規制を適用することが適当ではないかとさせていただいております。
  • P19
    • 続いて銀行・保険会社における取扱いについて説明させていただきます。19ページ目が現在の整理ということになっております。
    • 銀行・保険会社本体及びグループが暗号資産交換業を営むことについては、マネーロンダリング等に利用されるリスク、暗号資産の管理に関するシステムリスク、保有に関する価格変動リスクのほか、これらのリスクが顕在化した場合のレピュテーショナル・リスクというのが想起されたため、現行は許容はされていないということでございます。
    • それから銀行が暗号資産の取得、保有することは法令上は禁止されておりませんが、監督指針において取得保有は必要最小限の範囲にとどめ、投資目的の保有は禁止するといったことが記載されているところです。
  • P20
    • 次のページで見直しの方向性について整理しております。まず1.で銀行保険会社本体における取扱いということで、(1)が暗号資産の発行・売買ということでございますが、これについては過去の整理における懸念点で挙げられた各種リスクについては、一定の規制監督対応というのはされておりますけれども、これらの懸念点は引き続き残っている、払拭はされていないのではないかということでございます。
    • 特に銀行・保険会社本体が扱っている商品であることをもって、暗号資産のリスクですとか、自らのリスク許容度を精査せず取引してしまう顧客というのは一定数生じてしまう恐れがあるということですので、まずは今般の規制の見直しによって投資商品としての規制をきちんと整備するということで、投資者保護の充実が図られ健全な取引環境が整備されるということが先決であって、その後に対応と検討すべきではないかとさせていただいております。こうしたことで銀行・保険会社本体による発行・売買については慎重な検討が必要ではないかと考えております。
    • (2)が暗号資産の仲介ということでございまして、仲介業の場合は銀行・保険会社の本体に与える財務の健全性に与える影響は限定的なものと考えられるわけですけれども、先ほど申し上げた顧客による誤認取引といったリスクについては、変わらずに存在しているということでございますので、こちらも慎重な検討が必要だというふうに考えております。
  • P21
    • 暗号資産の保有についてです。
    • 現在、投資目的での保有は禁止されていますが、こちらについては、今回暗号資産が金商法の規制対象となることを踏まえまして、市場の情勢とともに、銀行・保険会社に分散投資の手段を提供するという観点から認めることとしてはどうかと考えております。
    • ただしその場合はその十分なリスク管理体制整備が行われていることは前提であると考えられて考えられます。
    • それからの投資運用業を行うことについてはその現在はその投資対象の種類にかかわらず一律禁止されていることを踏まえまして、暗号資産についても同様に禁止すべきではないかと考えております。
    • (音声途切れ: 銀行・保険会社の子会社については、?)銀行・保険会社本体との関係で一定のリスク遮断が図られるということで、取扱を認める余地はあるのではないかと考えております。
    • 具体的には子会社である金融商品取引業者には暗号資産の発行・売買及び仲介を認めるということで、一般の金融商品取引業者とのイコールフッティングを図ることが適当ではないかとさせていただいております。
    • 投資運用業についても同様に認めることが適当ではないかと整理させていただいておりまして、兄弟会社、関連会社についても同様の取扱いとすることが適当ではないかとさせていただいております。
  • P23
    • 無登録業者への対応についてでございます。
  • P24
    • 無登録業者による金商業を行う旨の表示等の禁止の規定や、裁判所による緊急差し取り命令、証券取引等監視委員会による緊急差止命令申立権限とそのための調査権限を暗号資産に係る無登録業者に対しても整備していくことが適当ではないかとさせていただいております。
    • 注でございますけれども、金融審議会市場制度ワーキンググループにおきまして、無登録金商業と不公正取引の複合事案への適切な対応等の観点から、無登録金商業について、証券取引等監視委員会による犯則調査の対象とすることが検討されております。
    • 続きまして次の四角でございますけれども、株式等につきましては、無登録業者などによる未公開株式等の売買契約等は、暴利行為に該当するものと推定し、売買契約等を原則として無効とする、いわゆる民事効規定が設けられているところです。
    • 暗号資産につきましては、海外の業者との取引もある中で、一律に暴利行為に該当するものとして推定して良いかにつきましては、慎重に検討する必要がありますが、一方で無登録業者による詐欺的な勧誘等による投資者被害が生じていることも踏まえながら、民事効規定を創設することが適切か否かを検討すべきではないかとしております。
    • また投資運用等に係る不適切行為への対応ということで、暗号資産の投資運用や投資アドバイスについても、投資運用業、投資助言業の対象とすることで、業務の適切な運営を確保することが適当ではないかとしております。
  • P25
    • その他の暗号資産をめぐる利用者被害への対応でございます。
    • 前回のワーキンググループにおきまして、最近のトラブル事案への対応を行っている専門の方のお話も伺いながら対応を考えるべきではないか、とのご指摘がありましたことを踏まえまして、事務局においてヒアリングを実施し、それに基づくスライドを用意しているものでございます。
    • 最近のトラブル事案では無登録業者による暗号資産投資勧誘のほか、何らかの詐欺的な投資商品勧誘に伴う支払い手段として暗号資産が利用されるケースが増加しているということでございます。
    • こうしたケースでは交換業者に口座を新規開設・入金して暗号資産を購入させ、そして加害者側のアンホステッドウォレットに暗号資産を移転すると、そういったケースが多いことが指摘されております。
    • 現状では一部の暗号資産交換業者では、例えば新規口座開設や取引時に不審な点がある場合や、顧客が高齢者である場合には、新規口座開設や取引の動機等をヒアリングする対応や、新規口座開設・入金から一定期間は暗号資産の移転を制限する対応、海外の無登録業者も含め登録業者以外への送金を全面的に禁止する対応などが行われているものと承知しております。
    • 暗号資産が支払手段として詐欺的な投資勧誘において利用されることを未然に防止するため、暗号資産交換業者に対し、金商法における法令上の義務として、顧客がアンホステッドウォレットや無登録業者のウォレットに暗号資産を移転する場合に警告を行うことや、移転目的の確認、取引モニタリングの適切な実施、新規口座開設直後及び新規ウォレット先への移転について、一定の熟慮期間を設けるなどの対応を求めることが適当ではないかとしております。
    • また海外の無登録業者への対応として、後に出てきますけれども、そうした対応も講じていくべきではないか、としております。
  • P29
    • 海外の無登録業者への対応でございます。
    • いわゆるクロスボーダー取引に対する金商法の業規制の適用につきましては、行為の一部が国内で行われれば金商法令を適用するという考え方、いわゆる属地主義を基本としつつ、金商法令の目的が十分に達成できない場合には、国外でなされた行為が国内に一定以上の効果を及ぼす場合にも金商法令を適用するという、いわゆる修正効果主義の考え方がございます。
    • 海外所在業者であっても日本居住者のために、または日本居住者を相手方として金融商品の取引を行う場合には、原則として金商法上の登録が必要と考えられます。
    • 登録を受けていない海外所在業者がインターネットに日本語ホームページを開設する等により、勧誘を行っていることが確認される場合には、行政において警告を行うとともに公表を行っているところでございます。
    • クロスボーダーの暗号資産取引については、現行の制度運用上、無登録の外国の事業者が日本語のウェブサイト等により本邦居住者向けに暗号資産取引等の勧誘を行っている場合には、警告公表やアプリストアへの削除要請といった対応を行っているところでございます。
    • 欧州のMiCAでもEU域外の事業者によりEU域内の顧客に勧誘が行われる場合には、規制対象とされているところでございます。
    • こうしたことも踏まえ、引き続きこうした対応を行うともに、無登録業者への対応や外国規制当局との調査協力、こういったものの強化を講じていくべきではないかとしております。
    • ※の下で書いているところでございますけれども、なお金商法上は外国証券業者が勧誘することなく国内の顧客の注文を受けて売買等を行うことが認められておりまして、暗号資産取引についても同様のルールを整備することで、規制の適用関係を明確化してはどうかとさせていただいております。
  • P32
    • DEXについてでございます。DEXの一般的な性質としましては、一般的に以下の性質を有することが指摘されているところでございます。
    • 従来の中央集権型取引所のように取引所運営者が管理・仲介するのではなく、利用者同士がスマートコントラクトを通じてPtoPで暗号資産の交換を自律的に実行することができる。
    • あるいはガバナンストークの保有者による投票を通じて運営方針を決定しており、中央集権的な管理者がいない、または特定しがたいと。
    • 一方でDEXと称するサービスの中には、実際には中央集権的な性質を維持している場合もあることが指摘されているところでございます。
  • P33
    • DEXへの対応としまして、DEXに係るプロトコルの開発・設置は、利用者に暗号資産同士の交換を可能とするものであり、その点では暗号資産交換業への該当性が論点となり得るというところでございますけれども、自らは顧客への勧誘は行わない、あるいは開発後はプロトコルでサービスが提供され、人為的要素が少ない等の特徴があり、欧米におきましては一定のDEXについて規制の対象外との整理がなされているところでございます。
    • 一方DEXにはプロトコルの不備等により利用者が不測の損害を被るリスクがあるほか、マネーロンダリングに利用されるリスクも存在しているところでございます。
    • これらを踏まえ現状ではDEXについて明確な規制の手法が確立されていないところではございますけれども、現在の暗号資産交換業に対する規制とは異なる技術的性質に合わせた過不足のない規制の在り方について、今後各国の規制やその運用動向を注意しながら継続して検討を行うことが適当ではないかとしております。なお適切なマネーロンダリング等の対策の在り方等の論点を中心に、国際的な議論を行っていくことが考えられるか、とさせていただいております。
  • P34
    • DEXに接続するユーザーインターフェースを提供する事業者への対応でございます。
    • そうしたユーザーインターフェースの提供により利用者がDEXでの暗号資産の交換を行うことに容易にすると、そうした事業者も存在しているところでございます。
    • 国内の利用者は基本的にユーザーインターフェースを通じてDEXに接続すると考えられます。このため、利用者保護を確保する観点から、DEXに接続するUIを提供する事業者についても、今後の検討次第によっては一定の行為規制を求めることも考えられるかとさせていただいております。
    • その際接続先にリスクについての説明義務でありますとか、反収法上の本人確認義務を含むマネーロンダリング等の対策といった、リスクに応じた過不足のない規制を課すことを念頭に、各国の規制動向を注視しながら、まずは係るサービスの実態把握を深めていく必要があるのではないか、とさせていただいております。
    • なお足元の対応としては、DEXを含め日本で登録を受けていない業者での取引を行う場合に、利用者が不測の損害を被るリスクを行政や暗号資産交換業者等において十分に周知することが適当ではないかとさせていただいております。
  • P37
    • 不公正取引規制につきまして、これまでの議論でございます。
    • 前回第3回のワーキングループでは暗号資産に係る不公正取引規制を整備する方向性について概ね賛同いただいているものと承知しております。
    • また主に以下のご指摘があったということで整理させていただいております。
  • P38
    • インサイダー取引規制の検討の方向性についてでございます。
    • 国内の暗号資産交換業者の提供する取引の場の公正性、健全性に対する投資者の信頼を確保することという保護法益を確保するためには、対象暗号資産について重要事実に接近できる特別な立場にある者が、当該事実の公表前に取引の場に対する投資者の信頼を損なうような売買等を行うことを禁止する必要があるのではないかとしております。
    • その際、規制の明確性が重要かと思います。そうした観点から、上場有価証券等のインサイダー取引制の枠組みをベースにしつつ、暗号資産の多様性等からその性質を踏まえて規定振りを調整することが適当ではないかとしております。
    • 以降ですね、それぞれの論点について整理しているところでございます。
  • P41
    • まず対象とすべき暗号資産についてでございます。
    • 先ほど申し上げたような保護法益を考えますと、規制対象の暗号資産は国内の暗号資産交換業者において取り扱われる暗号資産としつつ、上場有価証券と同様に、暗号資産交換業者に提供する取引所での取引か否かを問わず、いわゆるDEXでの取引やPtoP取引を含めてインサイダー取引規制の対象とすることが適当ではないかとしております。
    • また国内の暗号資産交換業者で取り扱われる前でも、以下の理由から取扱いの申請がなされた暗号資産については、規制対象に含めることが適当ではないかとしております。
    • まず有価証券との比較ということで、非上場の間でも流動性が高いということ、海外で取扱前の情報に基づいてインサイダー取引違反として執行している事例があること、また海外のMiCA等の法制においても承認申請がなされている暗号資産についても規制対象とされていること、そういったことを踏まえますと、取扱い申請がなされた時点で規制対象に含めることが適当ではないかということでございます。
    • また一番下でございますけれども、規制対象を明確にする観点から、どの暗号資産が取り扱われているのか、国内暗号資産交換業者で取り扱われているかにつきまして、JVCEAにおいて一覧性を持った形で分かりやすく情報提供することが適当ではないかとしております。
  • P44
    • 重要事実につきましてでございます。
    • 上場有価証券等のインサイダー取引規制では重要事実につきまして、発行者内部の情報と外部の情報の両面から規定されております。
    • そして内部の情報につきましてはできるだけ個別列挙し、バスケット条項で補完している状況でございます。
    • 暗号資産につきましては重要事実に該当する事象の蓄積が現状では十分にない一方、規制の予見可能性、透明性を確保する観点から、上場有価証券等のインサイダー規制も参考に、重要事実に当たることが明確なものを個別列挙した上で、バスケット条項で補完することについてどう考えるか、としております。
    • 具体的には、以下の3つの類型について重要事実に当たることが明確なものを個別列挙しつつ、バスケット条項を規定することが適当ではないかとしております。
    • まず(1)としまして、中央集権型暗号資産類型1の発行者の業務等に関する重要事実と。これにつきましては、例えば発行者の破産でありますとか、重大なセキュリティリスクの発覚等があると思いますけれども、どのような重要事実を列挙することが考えられるか、ご議論いただければと思います。
    • また2つ目としまして、暗号資産交換業者における暗号資産の取扱い等に関する重要事実、暗号資産の新規上場や上場廃止、また暗号資産の流出等を個別で影響することは考えられるか。
    • (3)としまして、大口取引に関する重要事実でございます。暗号資産の価格等に著しい影響を与える取引の決定、またその中止の決定を重要事実とすることは考えられるかとしております。その場合の大口取引として、どのような線引きが考えられるかということでございます。
    • 例えば企業会計上、持分法が適用される影響力基準とも参考に、発行済み暗号資産の20%以上の売買等が考えられるか、ということを書かせていただいております。
    • なお、これは公開買付等に関するインサイダー取引規制と同様に、その大口取引を行う者自体を規制対象とするのではなく、その関係者が大口取引が行われることを知って取引することを規制するということであることにご留意いただければと思います。
  • P48
    • 規制対象者についてでございます。
    • 上場有価証券等のインサイダー取引規制は、内部情報を知り得る特別な立場にある者が、当該特別な立場にあることに起因して内部情報を知った場合を規制対象としております。
    • 暗号資産案につきましても同様に重要事実に接近できる立場にある者がその特別な立場にあることに起因して内部情報を知った場合を規制対象とすることが適当ではないかとさせていただいております。
    • 以下の【1】から【3】のような規制対象者が考えられるのではないか、としております。
  • 51
    • 公表措置についてでございます。
    • 上場有価証券等のインサイダー取引規制では、個々の取引が処罰等の対象となるか否かを明確にする観点から、重要事実の公表につきまして、重要事実に応じて特定の主体の公表措置によることとしております。
    • 暗号資産につきましても同様に以下に記載のとおり、重要事実に応じて公表主体を定めることが適当ではないかとさせていただいております。
    • 公表方法につきましては、投資判断に資する情報がSNSを中心に発信されているケースもあるものの、様々な種類のSNSがあり、また投資者が把握できるとは限らないこと、発信された情報の削除改変が容易であること、発信主体、発信内容の真実性が確保されていない、そうしたことを踏まえると、SNSを公表方法に含めることには課題があるのではないかと考えられます。
    • そのため暗号資産交換業者やJVCEAへのウェブサイトを用いた公表等に限ることは適当ではないかとさせていただいております。
  • P52
    • 禁止行為につきまして、上場有価証券等につきましては売買等を禁止行為として規定し、売買、交換、現物出資等の所有権を移転する行為を規制対象としている。
    • 一方 会社法の諸規定による保護が図られているため、新規発行に対応する原始取得は禁止行為に含まれておりません。
    • 暗号資産につきましては、上場有価証券と同様に売買等を禁止行為とするとともに、会社法と同様の規制がないということも踏まえまして、暗号資産の新規発行とそれに対応する原始取得も禁止行為に含めることについてどう考えるか、とさせていただいております。
    • 適用除外につきまして、上場有価証券等のインサイダー取引規制では、重要事実、未公表の重要事実を知って取引した場合を規制対象としつつ、保護法益に鑑みて、規制対象とする必要性がないと考えられる取引の類型が具体的に適応除外として列挙されております。
    • 暗号資産につきましては保護法益に鑑みて規制対象とする必要がないと考えられる取引類型について十分な事例の蓄積がなく、また、上場有価証券等のインサイダー取引規制で規定されている適用除外の類型を規定するだけでは不十分な場合もあり得るかと思います。このため、例えば未公表の重要事実を知って取引することを規制対象としつつ、取引に関する証拠が行為者側に偏在していること等を踏まえ、重要事実を知らなくても取引をしたことを行為者側が立証した場合には、適用除外の類型として追加すること等によって、適切な規制対象を捉えるということが考えられるのではないか、としています。
  • P54
    • インサイダー取引制に関するその他の論点としまして、上場有価証券につきましては、未公表の重要事実の伝達、取引推奨行為も禁止されておりますので、暗号資産についても同様の規制を入れてはどうか。
    • また罰則につきましては、上場有価証券とインサイダー取引規制と同様に、合わせていくことがいいのではないかとさせていただいております。
    • また反則調査課徴金、これにつきましても、上場有価証券等のインサイダー取引制度と同様に整備していくことが適当ではないかとしております。
  • P55
    • その他の不公正取引規制でございます。
    • インサイダー取引規制以外にも、例えば黒四角で書いておりますような安定操作取引の禁止のような相場操縦行為など、暗号資産にも妥当すると考えられる不公正取引規制については併せて整備すべきではないかとしております。
    • その下でございますけれども、それら以外にも暗号資産特有の不公正取引が行われる可能性もあります。そうした不正行為につきましては、既に現状金商法で規定があります暗号資産の不正行為の一般禁止規制や偽計等の禁止、こうした規制により対応する余地があるのではないか。
    • その上で今後そうした事案の発生状況に応じて類型的に抑止を図っていく必要性が認められた場合には将来的に検討を行っていくことが適当ではないか、とさせていただいております。
  • P57
    • 課徴金制度その他のエンフォースメントでございます。課徴金制度につきましては、違反行為への抑止力を高めていく観点から、上場有価証券等の不公正取引に係る課徴金制度と同様に、暗号資産に係る不公正取引についても課徴金制度を創設することが適当ではないか。
    • その際、暗号資産についてはPtoP取引やDEXでの取引もあり得るなど、その特徴を踏まえた制度設計が必要と考えられます。それら以外にどのような点に留意する必要があるかご意見いただければと思います。
    • 市場監視体制につきましてでございますが、有価証券の場合を参考に、暗号資産取引についても実効的なエンフォースメントのため暗号資産交換業者による売買審査や自主規制機関による市場監視体制の抜本的強化が必要ではないかとさせていただいております。
    • 犯則調査権限、課徴金調査権限につきましても上場有価証券と同様に証券取引等監視委員会における反則調査権限を創設するとともに、課徴金制度の創設に伴う調査権限を設けることは適当ではないか。
    • また外国規制当局に対する調査協力につきましても、金融取引のグローバル化等を踏まえまして、また暗号資産は容易にクロスボーター取引も可能であることも踏まえまして、外国規制当局との協力情報交換は必要不可欠と考えております。
    • このため暗号資産取引についても相互主義のもと、外国規制当局に対する調査協力の対象とすることが適当ではないかとさせていただいております。
  • P62
    • 暗号資産投資に係る金融リテラシーの向上についてでございます。
    • まず投資者の慎重な取引を促す方策として、投資者がリスクと商品性を十分に理解し、リスクを許容できる範囲で投資を行うことができるようにするため、暗号資産交換業者に対しまして
    • 徹底等を求めることは適当ではないかということで、①暗号資産の価格推移の実績や将来予測をことさら強調するなど、リスクを正しく認識することを妨げ、投機的な取引を誘引するような表示を禁止する。また顧客がリスク負担能力の範囲内で取引を行うことを確保するための確認を行う体制を整備する、また自主規制規則に基づく取引開始基準や取引・保有限度額の設定等に係る運用の徹底等を求める、こうした対応が必要ではないかとさせていただいております、
    • またDEXや海外無登録業者でも取引に係るリスク周知、こうしたものにつきまして、行政や暗号資産交換業者等においてしっかりと行なうことが適当ではないかと、また金融リテラシーの向上に向けた方策として、現状J-FLECにおいて詐欺的な勧誘等による金融トラブルを防止する観点を踏まえまして、社会人向けの教材に注意喚起するような文言が盛り込まれているところでございます。J-FLECの提供する教材の改定等を通じて、詐欺的な暗号資産の勧誘等による金融トラブルの防止にとどまらず、例えば以下に記載のような暗号資産のリスクや特性について啓発することが適当ではないか、とさせていただいております。

討議

永沢裕美子委員 Foster Forum(良質な金融商品を育てる会)世話人

  • 事務局からご説明いただいた内容について全体として賛成
  • 自己責任を全うできる者のみがこの市場に取引に参加することが、経済、それからこの業にとってもいいのではないかという立場から、事務局資料1,2,5,JVCEA様に質問。
  • 事務局資料の業規制の箇所
    • P.5 兼業規制
      • 全部賛成
      • 行政・金融庁がこれから起こり得るリスクを検討する機会が持たれることがとても必要、事前チェックは極めて妥当
    • P.9 責任準備金
      • 過去大型の流出事案があり泣き寝入りに終わってしまった残念な事件を踏まえ、流出事案への速やかな対応は大変重要
      • 保険加入義務付けはそのような保険が成り立つかという重要な問題があるが、そのような保険の仕組みを作り対応が必要
    • P.16 業者の退出時に行政が選任する管理人
      • 極めて重要、速やかに対応する体制整備が必要。
    • P.11 業務管理体制
      • 1〜4すべて重要だと思っているが、特にその中でも極めて重要なのが2
      • 伝統的な金融商品とは大きく異なる商品性であることを鑑みると、2を、適合性の原則など、どう具体化していくか
      • 法律より下のところで決めていくことになるかと思うが十分に検討が必要
    • P.13 退出時における顧客財産の適切かつ円滑な返還
      • P.16と関わるが、重要。
    • P.21 銀行保険会社本体の業務に関わることについて
      • 強く賛同
      • 銀行・保険が揺らぐことがあってはならない
    • P.24 無登録業者への対応
      • 一番強く求めてきたところ。すべて賛同。
      • 刑事罰強化について、5年のところ10年にならないか
        • 被害救済に当たる弁護士の話を聞くと5年では執行猶予になっており、もう少し厳しい刑罰でないと実効性のある取締はできないのではないか。
      • 民事効規定の創設はたいへん望ましい
        • 未公開株詐欺のときに作っていただいたもの
        • 実効性のある被害者に寄り添った対応と評価する
        • この分野の被害は未公開株詐欺の被害に勝るとも劣らない状況
        • 被害トラブルから早期に気の毒な方を解放するために意味のあること、ぜひ入れていただきたい
    • P.25 その他の暗号資産を巡る利用者被害への対応
      • ヒアリングでいろいろな取組を自主的になさっているご紹介があった
      • 法律で求めることは難しいと思うが、市場参加者・利用者保護のためにより良い取り組みをされているところは名前を公表し、取り組みを推奨していくことが必要
      • 自主規制機関の方で法律に頼らずそういったことを応援し、市場を浄化、より良いものにしていただきたい
    • P.27 犯則調査権限の追加
      • 強く賛成
      • 29ページ、欧州のMiCAが進んだ対応をされているようだが、日本でも同様の対応を可能にすることに賛成
    • P.62 金融リテラシー
      • 賛成
      • 一文違和感を持っている
        • 需給関係によって価格が決まる傾向が強いという一言が書いてある
        • 一部裏付けのあるものは認めるが、基本的に需給関係によって決まるのであって、「この傾向が強い」という一文が強い違和感を覚えました。
      • この分野は教育というよりも啓発
        • 自己責任が全うできない人が入らないようにすること、無登録業者への注意喚起ということを考えると、特別な教材開発も、特別といっても大したものを作る必要はないが、JFRECや金融教育に関わっている人々と協議をして、今までの伝統的な金融商品とは違うということも踏まえて、実効性のある教材を開発していくことが必要かと思っている。
        • この点については私は金融経済教育推進会議の委員をしている立場でもございますので、ぜひこれはJFRECとも相談させていただきたいと思っております
  • JVCEAに2点質問
    • P.10 適合性確保の強化とあるが、具体的にどんなことをされているか
    • テレビ広告やつり革広告について、勧誘ではない広告であるから自由に作って良いと思うが、昔で言えばファジーな広告で、「なんとなく良さそう」みたいな感じで自己責任を全うできるとは言えないような方を広く誘うようなテレビコマーシャルや吊り革広告が見られる。
      • こうした広告について協会はどのように考えて対応されているのか

JVCEA回答

  • 顧客の適合性の確認の強化
    • 自主規制の中で、取引限度額、保有限度額を定めることになっている
    • 会員監査やモニタリングの指導において、遵守されているか確認する
    • 2022年成年年齢引き下げの民法改正を契機に各社の状況を確認したうえで監査先対象とうに役立てている
    • 監査リソースの関係でテーマを絞った監査をせざるを得ないが、この中でも利用者保護ということで取引開始基準、保有限度額について確認し規則の要求事項が満たされているか、各会員の他の状況から見てもう少し努力してくださいというアドバイスも含め指導している。今後も強化していきたい。
    • 取引限度額や保有限度額は利用者の方のそれぞれにあったものを考えていく世界かと思う
    • 一定のところでとどまるのではなく引き続き各会員のビジネスの問題にあった体制運営が出来るかどうかを指導していきたいという意味で強化という言葉を使っている
  • 広告について
    • つり革広告まで逐次把握しているものではないが、週次で各会員ホームページなど確認している
    • 自主規制規則の中にも広告規定があるので満たしているか、誤認を招きやすくないか、注意喚起を行っている
    • 今後そうした取組をふくめもう少し強化していきたい

永沢委員

  • わかりましたとはなかなか言えないので、ぜひ、世の中の皆さまが結構厳しく求めてらっしゃるということで見直しをしていただきたいと思っている。

河野 康子委員 一般財団法人日本消費者協会理事

  • 事務局資料でご提案いただいた内容に関しては消費者の立場から大筋として賛同している。
  • 一般消費者としては提示された個々の対策が、物理的実体のない暗号資産の規制として必要かつ十分であるかどうかの判断はとても難しい
  • 資料で整理いただいたように資金決済法と金商法を合わせ技として適用することで、決済手段としての規制と資産運用としての規制を講じることが今できる精一杯の対策であって、そうした規制の下で暗号資産取引や投資において今後起こり得る様々な事態に対して監視体制とフォローアップをしっかりと行うことで暗号資産制度の効力を高めていくということが大事だと受け止めている
  • 個別論点3点について申し上げる
    • サイバーセキュリティ − サイバーセキュリティに関する取り組みに関しては、このところ企業へのサイバー攻撃が頻発し事業活動や社会生活に不安を与えている
      • ブロックチェーンという特別な技術は安心の源であると同時にリスク要因でもあると思っている
      • ではどこまでやるのかと考えると、資料2で示されているように流出事案対策である三線管理の徹底など、ガイドラインでの注意喚起と個別の対策強化によることを着地点とすると妥当ではないか
    • 銀行保険会社等の子会社による暗号資産の取扱いについて
      • 2020年に金融庁の監督指針で銀行グループなどが暗号資産を投資目的で取得することなどを事実上禁止とされているところでの今回の方針転換のご提案
      • 従前からのリスクは変わらず存在しており危惧は残っていると思っている
      • 他方海外の無登録事業者やDEXなどを通じた暗号資産取引などと比べコンダクトリスクなどへの取り組みが進んでいる銀行・保険会社グループなどにおいては相対的に社会からの信用度が高いと思われる
      • 参入に当たっては財務内容や既存の金融システムとしての社会への影響を十分に考慮していただいて、一定の規制をかけつつ、健全な体制整備を行ってほしい
    • 暗号資産投資に係る金融リテラシーの向上について
      • 金融リテラシーの向上というよりは、スマホ一台で簡単に取引が成立する暗号資産に対しては、その特性に留意しての啓発をしっかりと進めるべき
      • 既存の金融商品においても詐欺的な投資勧誘によるトラブルや被害は頻発していて、暗号資産にフォーカスするというよりは、決済手段それから投資対象どちらにおいても、様々なリスクがあることに対して注意喚起と啓発を粘り強く行っていただきたいと思っている
      • 事業者側の健全な事業姿勢は当然として、先ほどの金融経済教育推進機構様での取り組みにとどまらず、今回から参加してくださっている消費者庁や国民生活センターを起点とする自治体の消費生活センター、銀行や保険会社様など既存の金融サービスを提供している企業の皆さん、加えて暗号資産での決済を導入している大手デジタルプラットフォームなどにも協力を仰いで、他方面からのアプローチをしていただくように期待したい。

有吉 尚哉委員 弁護士(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業)

  • 資料4の内容について、それぞれに項目についてコメントをさせていただくとともに、最後に少しだけサイバーセキュリティについてコメントを差し上げたい
  • 資料4に書かれている内容について基本的には私も賛成
  • 業規制との関係について
  • 第一資金商品取引業と現行法の資金決済法の暗号資産交換業の規制をミックスするような、合算するような方向性というのは賛成
    • ただ規制の内容というか条文自体は既存の金融商品取引業と共通になるということであるとしても、やはり暗号資産交換業特有の状況もあると思いますので、規制運用はそういった部分をよく反映した対応をしていただく必要がある
    • これは暗号資産固有の状況というのもあると思いますし、先ほどの長沢委員の方からご指摘があったように、宣伝広告のあり方もだいぶ既存の証券会社とは違う方向でなされているということもある
    • 今後金融商品と位置づけていくにあたって、そういった広告のこれまでのあり方がどうなのかということも含めて、規制運用については暗号資産業界の特殊性を考慮してご検討いただきたい
  • 今回の資料の中で業規制との関係は、暗号資産の売買等を行う場合の規制について中心に言及されているように思うが、証拠金取引など暗号資産デリバティブを行う場合や、投資運用の対象として暗号資産への投資も行うといった場合についても、暗号資産特有の事情を考慮した規制を検討していく必要がある。 − 例えば、暗号資産デリバティブを行う場合についても、新規取扱暗号資産の事前届出の規制というのは加えてもいいような気がしますし、一方で、暗号資産デリバティブのみを取扱う業者がいた場合には、兼業規制との関係で売買等の場合と同じように事前届出に規制緩和するということも検討してよろしいのではないか。
    • 暗号資産投資を行う投資運用業についても、セキュリティ体制などは売買の場面と類似の体制とするということも検討されるべきではないか
  • 資金決済法上の暗号資産交換業の規制と金融商品取引業の規制を足し合わせた結果重複が生じて過剰規制にならないようにする、こういった配慮も必要
    • 例えば責任準備金の規制を及ぼすこと自体は反対するものではないが、暗号資産交換業者には履行保証暗号資産制度もすでに適用されているといったことも踏まえて、責任準備金の金額なのか積み方なのか、どうすればいいのか具体的なアイデアがあるわけではございませんが、規制の合理性を確保する必要がある。過剰規制にならないようにする必要がある。
  • 無登録業者への対応の関係
    • 資料4にお書きになっているような対策をぜひ進めていただきたいと思いますが、今回の制度改正にあたって改めて海外の業者を含めて無登録業者による暗号資産の販売が違法行為であるということは強く周知をしていただきたい
    • そういった活動を通じて無登録営業そのものだけではなくて、それ自体は暗号資産交換業や投資業に該当しないような行為であったとしても、SNSとか書籍とかで、無登録業者からしか入手できないような暗号資産の紹介などをするような行為が、違法行為の片棒を担ぐような不適切な行為であるというようなことの認識が世の中に広まっていくということを強く期待したい。
  • DEXの関係について若干ご説明があって現時点では制度的な手当までは行わない方向性だと理解した。その点については賛成。継続検討をしていくべき論点だと思う。
    • 現行の暗号資産交換業の規制との関係でも、具体的な状況次第ではDEXの開発者とか設置者とか、あるいはDEXにつなぐ業者とか、こういった業者の行為が暗号資産交換業に該当する場合もないわけではないと思いますので、取りまとめの報告の際には、DEXについて現在の規制が全く及ばないというニュアンスにならないように表現を注視していただきたいと思います
  • インサイダー取引規制の関係について2点
    • 取扱い申請段階の暗号資産もインサイダー取引規制の対象に含めるという方針について、その背景の問題意識は十分理解いたしますし、政策的にも合理性はあると思う
    • ただそういった暗号資産を取引する者からすると、業者が取り扱っていない暗号資産について、それが今取扱い申請がされているのかされていないのかということを確認することは事実上不可能なのではないかと思う
      • 取引をする人が、インサイダー取引規制の対象になる暗号資産なのかそうでないのかが、判定できないという事態が生じかねない。それは規制としていかがかという気がするのでそのあたりについてご検討頂く必要がある。
  • 暗号資産に関する重要事実の関係について
    • 暗号資産が定義上決済の手段の性質があるということも意識して重要事実を考える必要がある
    • 例えば発行者以外の者が営む特定のサービスの決済にだけ使われる暗号資産があった場合に、そのサービスについてサービス廃止や大きなアップグレード等の大きな変動が生じると、事実上暗号資産の価格にも大きな影響を与え得る
    • そういった情報も重要事実として取り扱うべきだと思うが、今の資料4の44ページの1から3の類型で拾えるのかというと、1で無理やり拾えるのかもしれませんが、やや疑問。
    • 重要事実について、もう少しご検討いただく必要があるのではないか。
  • 金融リテラシーの関係
    • 暗号資産に対する啓発活動は、ぜひ進めていただきたい
      • その意味するところは、いわゆる貯蓄から投資への流れの中で、投資商品の一類型として暗号資産投資を促すということでは全くなくて、基本的にはトラブル防止、自己責任の観点から説明されるべきものなのではないかと思う。
      • そういった意味で暗号資産が投資信託などの他の伝統的な金融商品と同等のもので、リスクを理解した上で積極的に投資してほしいという、誤ったニュアンスにならないように啓発活動を進めていただく必要があると私も強く思うところです
  • サイバーセキュリティの関係
    • 先ほど資料2(事務局説明資料①)のご説明の中で今泉さんの方からご説明があった通り、サイバーセキュリティについては自助と共助をうまくバランスをとって対応していくということが非常に重要であるというふうに思います。
    • どこまでが自助でどこからが共助なのか、これは場合によっては各業者の利害関係と正面から衝突するという話なのかもしれませんが、この部分についてぜひ当局とそれから実施規制団体の皆様にリーダーシップをしっかり発揮していただいて、うまい形で収めていただいて業界全体としてうまく進むように取り組んでいただきたいと強く思います。

小川 恵子委員 公認会計士(EY ストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)

  • 本日私からは3点
    • まず1つが損害の補填について。2つ目が業務管理体制について、3つ目が銀行などの暗号資産の取扱いについて、コメントさせていただきます
  • 1つ目の損害補填について
    • 暗号資産の信頼ある社会実装は、ハッキングのみならず、交換業者の破綻・倒産、サイバーアタックなどによるシステム障害・アクセス不能といったところから生じる損失、こういった多方面の損害を補填する仕組みというのは極めて重要と考えている
    • 補填手段として3点あると思っている
      • 責任準備金: 各業者の社内留保
      • 保険: 各業者の社外での補償原資確保
      • 投資者保護基金: 業態で共通のバックアップ
    • 準備金については賛同する。では何パーセント積んでいくのか、といった議論がより重要になってくると思っている。
      • 暗号資産の場合、伝統的な証券とは異なる非常に多岐にわたる、また拡大性がすごく大きいといった特質がありますので、このリスク比率、積み立て比率をいくつにするのかの議論は非常に重要
      • 過度に積み立てた場合には経営を圧迫する。
      • 一体何パーセントにしていくのかという議論はきっちりと実態調査、それから実効性を踏まえてガイドライン等で明確にしていただきたい。
      • そこで決まった比率部分の相当額の保有資産については実効性を含めて流動性、安全性、運用性の観点から、きっちりと定義付けていっていただきたい
      • 責任準備金の各業者での社内の資金留保というのは一定限界が出てくると思っている。
        • 資料では保険については認めるといったような記載になっているが、むしろこういったサイバー等保険は積極的に活用すべきであるといった記載も必要かと思う。
  • 投資者保護基金について
    • 証券取引法では既に定めがある
    • 暗号資産の特性を十分に織り込んだ制度設計というのはかなり多くの論点があると想定されていますので今後十分に議論をしていただきたい
      • 従来のこの制度自身は企業の破綻倒産に生じるリスクを想定している。
      • 先ほどからお話がありましたハッキング、不正流出、それからサイバーアタックなどのシステム障害といったものもどこまで保護対象とするか、範囲の明確化
      • 保証額の特定についても価格変動のボラテリティが非常に大きな暗号資産が対象になるため、どの時点を評価確定基準日とするのかといった議論
      • それから暗号資産交換業者自身に瑕疵が明らかに認められるような場合でのハッキング流出の場合に、どこまでこういった共通基盤で補填するのか
      • 論点を洗い出していただき、実効性を確保するための明確な制度化をお願いたい。
  • 2点目の業務管理体制について
    • 賛同している
    • 特に②番について顧客がリスク負担能力の範囲内で取引を行うことを確保するための確認体制
      • 最終ページの金融リテラシーの向上と合わせて、暗号資産の特性を踏まえてより実効性ある具体的な制度整備の検討が必要だと考えています
      • 本日資料の最終ページにJVCEAの自主規制ガイドラインについて、すでに年齢、収入、経験の確認がある。モニタリングはすでに実施されていると理解している。
      • 一方で統制には事後的なモニタリングで発見する発見統制と、それとそもそもリスクの顕在化を未然に防ぐ予防統制といったものがある。
      • 特に暗号資産のように影響の拡大速度が早いデジタルトランザクションに関する統制については、有効な予防統制の実装が極めて重要と考えている
        • 例えば取引条件、保有限度があったかどうかという事後的な発見統制ではなくて、そういったものをトランジョクション自身ができなくなるような機能が有効に実装されているかといったところの確認
        • さらには日時取引のキャップもしくはレバレッジの上限、あるいは短期多頻度取引による過剰損失発生、もしくは深夜連続アクセス等の一定のリスクトリガー、こういったものと連動した制御機能の実装、または自己排除機能実装などデジタルリスクの特性を踏まえて、一定のリスク制御機能の実装を求める必要があるのではないかと考える。
      • 一方で英国など導入しているクールオフ機能の議論にもあったように、投資の自己責任もしくは市場効率、機会損失、金融の国際競争力といったものの阻害要因になってもならないと考えている
      • 我が国としてどこまで実装・整備していくのかは、デジタル特性においてより議論を深めていく必要があると考えいるし期待をしている
  • 銀行など、あるいはそのグループ企業による暗号資産発行・売買仲介もしくは保有について
    • 起草の案を一定賛同いたします
    • 一方で同時に 他のG-SIFIs(Global Systemically Important Financial Institutions)などの動向を踏まえ、ステーブルコインとトークンの経済化における、銀行、証券、信託といった業態を超えたデジタル統合金融サービスの議論がすでに始まっているといったところも しっかりと考えていくべき
    • セキュリティトークンなど、トークンビジネスは既に幅広く始まっているのはご理解の通りかと思いますが、同時にデジタル決済手段としてステーブルコインが今後一気に広まると、同時にオンラインのデジタル上での全ての金融サービスが完結し、スピーディーで安く利便性が高い金融サービスの新規創出が国際的にも競争が加速していくと考えている
    • したがって我が国としてもビジネス競争の中でどういった形でそれをしっかりサポートしていくのかも同時に考えていく必要があるのではないか
    • 多様な裏付け資産を有するクリプトに加えて、クリプトレンディング、もしくはクリプトトレーディング、トークン化の預金ですとか、MMFのトークン化など、いわゆるリアルワードルのアセットがブロックチェーンに載せられてトークン化されていくといったところは、日々金融サービスとして開発が進められている分野になります
      • この場合、トークンに多種多様な価値が載っていきますので、今回議論の対象となっている暗号資産は何を指すのかしっかりと明確に議論をしながら分析を進めていく必要があると思っています
    • セキュリティートークンなどは今回の暗誤資産の定義で第一類型に該当するのではないかと考えています。
      • そうした場合に銀行法の業務範囲規制、利益相反規制、資本規制、こういったもとの銀行法、証券法、取引背反などの背景から、既存の銀行証券の間のファイアウォールの観点は矛盾なく守るべきと考えています
    • 一方で先ほど申しましたデジタル統合金融統合基盤の議論はもうすでに避けられない状況と考えておりますので、金融グループでの分業モデルもしくは信託モデル、グループ共有の金融プラットフォーム型のビジネス開発など一定の制度的にも各種明確に整備して金融サービス発展の観点からもきっちりと明確にしていく必要があると考えています
    • 一方横断して検討すべき課題も今後考えられますので、デジタルトークン市場での統合監督体制も新たに新設するなどの検討も考える必要が出てくるのかなと思っている
    • リテールビジネスとコーポレートビジネスではリスクが許容範囲も含めて大きく異なると考えている
      • 新規のこういった新しいビジネス、海外では特にまずリテールには手が届いておらず、コーポレートから始まっていますので、リテール、コーポレートビジネスを一体で考えるというよりも、そういったところがきっちり分けてリスクの許容度も含めて規制も整備していく必要があるというふうに考えています
    • いずれにしても新たな金融サービスの競争力、これは制度上十分加味して合わせてリスク制御機能、損失補填、マネロン、サイバー対策等、規制もしっかりした整備した上で社会的信頼ある金融基盤の整備を実証していくということがより重要になっていくと考えている

大槻 奈那委員 名古屋商科大学大学院マネジメント研究科教授

  • まず第一に議論の方向性について、私の理解をお伝えしたい
    • あくまでもこの市場というのはある程度確立しているところであって、そもそも過度な負担を業者にかけることで減衰させるということがこの議論のスタート地点ではないというふうに理解しています
    • 市場の健全な発展と利用者保護、この両方を目指すということであった
    • それから国際競争力の維持向上という点にも配慮しつつ議論を進めていくべきだということを改めて申し上げたいと思いました
    • 先ほど広告の話があったが、私は個人的に今の時点で過度なものになっているとは思えない
      • むしろ日本は今、株式以外は本当に個人の方々が投資する対象が、他の国に比べても先進国の中だと少なくなってしまっている
      • その行き先が暗号資産かどうかというのはもちろん議論はあるが、より広い投資機会を与えるという観点も重要だと思う
      • 広告の話というよりも、後でもお伝えしたいところだが、今日の論点でもある無登録業者の勧誘とか勉強会、そこら辺のエンフォースメントについては課題が多いにあるとは思っている
  • 5ページ目の事前届出について
    • 他業態のこれから先の参入について、ご指摘のとおりだと思う。この趣旨で賛同する。
    • これに加え、他業態からの参入の場合については、その業界が既に許認可を受けている、あるいは管轄であるところの、他省庁との連携もしていくべきだと思います
    • これまでも出てきているように極めてリスク特性が特異なものであることは間違いないので、そこについての喚起を他業態、他省庁とも連携をとって行うべき
  • 責任準備金について
    • 原則賛同する
    • 投資家保護という点でも重要ですし、業界の方としても、この保証等の整備状況が他の交換業者との差別化要因にもなり得るという意味でも、これをプロモートすることが両方にとってベネフィットがあると思うため。
    • 確かに、準備金でやる場合にどういう両立にするのか、例えば銀行でも保証上限があるわけなので、保証上限をどのように考えるかということも含めていろいろな観点から適正なレベル感ということを議論する必要がある。
    • 有吉先生がおっしゃった過剰規制については慎むべきというところでも賛同いたします
    • 準備金を整備する場合、その運用についても短期で流動性を確保すべきということは言うまでもないことかと思いますが、改めて意見として申し上げる。
  • 銀行及び保険会社の子会社の暗号資産の仲介等について
    • イコールフッティングの観点で賛成
    • ただ、銀行にとってみると連結のこのオペレーショナルリスクについてどういうふうに考えるのかということについて、ガイドラインなり、どういう形で考えていくかという指針によっては銀行にとって同じく負担が大きくなる可能性もありますので、そこについても併せてご検討いただきたいと思う
  • エンフォースメントについて
    • 54ページ目のインサイダー取引の実効性確保について
      • 提案のところについては賛成
      • 人的その他の設備、キャパシティの観点については、金融庁さんおよび業界団体の皆さんについてもよく考えていただきたいと思います
    • 投資運用助言業務
      • 投資セミナーやオンラインサロン等について、これらが投資運用助言業務に当たるかどうかということについて
      • 今見えているだけでも相当動画等でも配信されていると思いますので、こちらについてはガイドラインをしっかりと設けるとともに調査権限の付与によってエンフォースメントを確保していただければと思います
      • 1点だけ質問としてはどの程度のキャパが今見えている中で必要で、今のキャパシティがそれに対して何号目ぐらいまで準備できているのかということについて教えていただければと思います
  • 31ページ目の無登録業者について
    • 調査協力の強化ということは非常に重要、必須だと思っているが、相対(あいたい)で各国との取引交渉というのだと限界もあるかと思いますし、新興国等も対象になるかもと思いますので、これについては広範な国際的な組織化・対話が必要なのではないかと思います
  • リテラシーについて
    • 私も伝えるべきこと、ということについてはやや違和感があるところである
    • ただ違う観点で、受給関係によって決まるという傾向についてはこの記述に対して私はその通りだと思う − ただそれよりもこの業界の特徴というのはおそらく市場の経験値が非常に低いのでボラティリティが高い。
      • 実際ボラを計測してみると、2013年とか当時のボラティリティに比べれば相当小さくなってきている
      • 市場が若いく経験値が低いことに伴うリスク面ということも併せて啓蒙していただければと思った

事務局 回答

  • エンフォースメントに関連して、どの程度の人的物的なキャパシティが必要か、あるいは今何合目か
    • 具体的な数字でどの程度というのは申し上げづらいが、やはり株式などに関する取引に係るエンフォースメントの現状の体制と比べますとかなり差があると思っている
    • 株式等と全く同じ程度まで必要かということについては、また一つ暗号資産の特性を踏まえてということであると思う
    • いずれにしてもエンフォースメントの人的・物的体制の強化はかなりやっていく必要があるものと考えている

松尾真一郎委員 ジョージタウン大学研究教授/バージニア工科大学研究教授

  • 今回資料が膨大で全てのコメントをここで申し上げることが難しいので、4点だけコメントを行って残りはまた書面で提出させてください
  • 1点目はセキュリティの話
    • まずは事務局資料2において共助の大切さを強調いただいてありがとうございます
      • システムセキュリティの基礎を学んだ人であれば世界共通の認識が、ここで共有されたことに感謝いたします
    • 資料4の7ページ目において、委託先とサプライチェーンのセキュリティについてご明記いただいたことについて、前回の私の説明を取り入れていただき感謝いたします
      • こちらについては引き続き、事務局、金融庁の方での検討をお願いしたいと思います
    • その上で今回JVCEAさんからの説明資料について大きな危惧を感じた
      • 正直前述した金融庁で進んでいる検討のレベルに事業者がついていけていないと感じている
      • 例えばJVCEA資料の10ページ目で、これまでの取り組みとしてチェックリスト化というのが書かれているが、一方でISO/IEC 27000シリーズのフレームワークを学んだ普通のセキュリティエキスパートであれば、このようなシステムのセキュリティリスク管理は画一的なチェックリストであり、目的を十分に果たせないことは常識
    • そしてJP Crypto ISACの連携のところで、意識を含めた基盤強化と書かれておりますが、それよりも広範囲で実践的なものであるということは、前回の私の発表とスライドを正しくご理解いただけてなかったなということで残念に思っている
    • 前回の私のプレゼン資料の3ページ目に書かれていたことをどう実装するか、どう実現するか、これがセキュリティ確保のための重要なことであり、他の業界であれば当たり前にやっていること
    • 今回のJVCEAの資料を見る限りにおいてそれが理解されていないことが分かる
    • JVCEAの資料のページ11で、例えば「オフライン管理されている(USBやペーパーウォレット)」と書かれているが、例えばこのようなハードウェアウォレットがサイドチャンネル攻撃に対して耐性があるということをどのようにチェックしているかご存知でしょうか。
      • たぶん皆さんは世の中で売られているハードウェアウォレットはセキュリティレベルが確認済みだと思っているかもしれないが、それは事実ではない。
      • ISO/IEC 15408やFIPS 140-3というのがその認証の仕組みに当たるが、そのセキュリティ評価に必要なST、PPと呼ばれる基準の定義が必要なのにも関わらず、ブロックチェーンのハードウェアウォレットにおいては、未だにSTとPPが定義されていない
      • BGINでその議論を先週始めて、この議論にはJP Crypto ISACの方が参加されていましたが、JVCEAからは遠隔も含めて誰も参加していません。これが事実です。
    • その上で資料4、そして以前から事務局資料では様々な情報提供を暗号資産交換事業者、あるいはJVCEAが行うことが前提のように書かれております
      • しかし今の状況でセキュリティを含めてそのような能力を持ち、ガバナンス体制があるのか、その確信を持てる証拠を今まで提出してもらっていません
      • なのでそのような状況では事務局の全体の方向性の整理に今すぐ賛同できるという状況ではないと思っています
  • 2点目は不公正取引規制の各論
    • 細かいコメントを改めて書面でお送りしますが、その上でなぜ私が以前、類型1と類型2に分けずに横断的規制にした方がいいということを意見してきたのか、あるいは情報提供規制の中立性、独立性 (、利益相反の?) 話を再三再始に申し上げてきたのか、この危機感が実は事務局に伝わっていなかったように思うのでここで改めて強くお伝えしたい
    • これは極めてまず一般的な話だが、異なる2つのフレームワーク、箱ができると、この2つの箱の中のアービトラージの可能性が出てきます。
      • つまりこの2つの箱があることで経済的な新しいアタックサーフェスを作ることになる。
      • 金融庁の皆さまも日々、法律をまたがる規制のアービトラージに頭を悩ませられていると思う。
      • それがこの箱を国内に作ることによって、国内だけでもアービトラージの種ができてしまうという可能性ができる
    • 第二回WGで指摘したように類型1と類型2は、相方向かつダイナミックに類型が変わる可能性がある
      • これまでの金商法において個別の金融商品が類型を移動する中で規制のあり方を変え、その移動を動的にモニタリングしながら柔軟に対応するという経験はない。
      • そして一番の問題は類型間の移動は、個別の暗号資産についている価格に大きな影響を与える。つまりここに経済的な利害関係が発生する。
      • 今の事務局案では類型の判断に事業者やJVCEAが一定程度関わることになっている
        • ということは、既存の金商法の世界ではインサイダーとして観念できないこのような人たちが、類型を分けてしまったがばかりに新たなインサイダー的なものになるという可能性を生み出す
      • アメリカのCLARITY Actの現状の審議案では、同法案が通過するかどうかは別にして、マチュリティの判断権限を当局でSECが持っている
        • 一方で現在の事務局案では、その判断でJVCEAに大きく依存しているように見える
      • 前述した理由により、仮にJVCEAが関与するのであれば、その理事、役員、そして役員を送り込んでいる企業の役員は、暗号資産の保有の禁止や制限、そして売買の禁止を課すことが必要
        • 今、所有や売買を行っている人がいたら、明確にインサイダー的な能力を持っていることになる
      • JVCEAの体制強化だけではなく、ガバナンスの抜本的な作りも 必要です?
    • つまりは今の事務局の方向通り類型をもとに議論してJVCEAに依存するガバナンスを構築するということであれば、JVCEAとそれに関連する企業から利益相反の関係を完全に取り除く必要がありますし、それができないのであれば、私が第2回に提案したような中立で独立な情報提供主体を新たに作る必要がある
    • セキュリティの情報提供においても、JVCEAとその関係者に暗号資産を保有している人たちがいたら、保有している暗号資産の価格を気にして必要な情報提供にバイアスがかかる可能性がある
    • つまり現状の案ではこういう大きな懸念が残っているために、明確に委員として賛同できないと言うしかない状況
  • 3点目は、今回消費者庁の方がオブザーブに加わられたということで、これまでの利用者保護の事務局資料で抜けている点について指摘する
    • ダークパターンに関するもの
      • 暗号資産交換業のビジネス形態の中には取引所と販売所という異なる形態がある
      • 販売所の方がスプレッドが大きいケースが多い
      • その上で販売所と取引所の両方のビジネスを営む交換業のアプリで、取引所のアクセスより販売所へのアクセスが容易になっている、いわば利用者が無意識に誘導されやすくなっているケースがあると指摘されている
      • 金商法に移行した場合、第40条の適合性の原則、第36条の利益相反防止義務、第38条の不当表示誤認防止義務、第37条の説明義務といった投資家保護規定の問題になる
        • この点につきまして金融審において金商法の規定が厳格に適用されるということを確認しておきたいと考えている
    • 今回事務局資料でインサイダー規制について交換業者やJVCEAのウェブサイトを重要なツールとして考えていることに、私としては委員として認められない、大きな危機感を持っている
      • 残念ながら実際にそういうようなサイトの情報はほとんどの人が見ていない
      • インサイダー取引規制の一方で、利用者保護上クリティカルな情報の提供においても、このようなウェブサイトを作るという考えが引き継がれることはあってはいけない。
        • 1週間前に米国の関税政策をめぐり暗号資産のフラッシュクラッシュが起こった
          • 暗号資産の世界は24時間365日動く世界ですので、日本の利用者が寝てる間に発生したら、日本の利用者がより多くの損を被ることになる
          • このようなフラッシュクラッシュで得をしたインサイダーがいるという推測をする人もいる
          • だとすると必要な情報提供は、実は緊急地震速報や津波警報のようなものになる必要があるのではないか
        • 先週にはパクソス上のステーブルコインで400兆ドルのステーブルコインの誤発行があった
          • 20分ほどで取り消されたが、プログラムには常にバグの可能性があることを考えると、何か問題が起きたときの即時の利用者への情報提供は急務
      • もし事務局案がJVCEAや交換業者、交換業者のそれもアプリではなくウェブウェブラウザーを使ってアクセスする単純なウェブサイトの情報提供で十分であるとすれば、委員としては反対を表明
  • これまでお話した3点については、委員として現状の事務局案あるいはJVCEAからの資料について賛同できない点が多く、次回のWGの資料でこれについて概ね賛同を得られたとまとめられることに関しては極めて反対したいと思っていますので、次回までにご対応・ご検討いただけると幸いです。
    • これは今回の金商法への移行に賛成反対ということは全く関係なく、あのレベルのセキュリティとガバナンスの議論では、今の状態では到底世界の流れについていけない
    • 私としてはこの議論を機に日本の暗号資産エコシステムは世界の中で大きく飛躍することを願っており、日本の暗号資産エコシステムが世界に肩を並べるための必要条件として必ず対応することを委員として求める
  • 4点目、簡単な質問
    • 銀行の暗号資産保有について、銀行が保有した場合、同時にバーゼル規制の対象ともなり、国内実施されれば、1250%のリスクウェイトが課されることを考えると、実は銀行にとって保有するインセンティブはほとんどないと思う。
    • 一方で日本の銀行がバーゼル規制から離れるということは考えられない
    • このあたりの取扱いについて事務局のお考えをお尋ねしたい

事務局回答

  • 銀行のバーゼル規制のリスクウェイトについての質問
    • ご指摘のように国際合意の中で1250%のリスクウェイトを課すということは合意されているところ
    • これを国内実施するかどうかについて、今担当部局で検討をしているところでありますけれども、普通に考えれば国際合意でございますので、それを国内規制としても実施するというのが基本的な方向性になろうかと思う

 松井 智予委員 東京大学大学院法学政治学研究科教授

  • 2つに絞って発言
  • 1つ目の発言事項は業規制及び業際規制について
    • 暗号資産交換業者の業規制の性格については、利用者の財産管理及び退出時の資産の返還、また流出などに対応する補填のための責任準備金という形で払い戻し対応と自己対応ということで性格が異なる資金を区分けしつつ、いずれにしても責任資産を業者・業種単体で確保するということを基本思想とするものであり、この水準についていろいろなご意見はありましたが、方針自体は妥当なところかと思った
    • 他方、業規制の中で重要な論点として、既存の金融業すなわち保険や銀行が金融資産として暗号資産にどう取り組むかということについて、今回の資料の20ページ、現行の監督指針では、投資目的保有を禁止するという形が取られているのに対し以下のようになった
      • 金融機関本体においては、発行者となること、売買、当事者としてのディーリング、さらに仲介を制限する。
      • 自己ポートフォリオの一環として投資目的で保有するということについてはリスク管理体制の下で認める
      • 子会社金融業者による参入、金商業者による参入は全面的にOK
    • この方向性について異論があるわけではないが、このロジックについて整理をしておきたい
    • 第一に銀行本体についての健全性のリスク、第二に銀行だからということで購入者が安易に暗号資産を買ってしまうという社会的リスクに分けて整理をされている
    • 制度が定着し、あるいは銀行が暗号資産を扱っていることで投資者のリスクが少なくなるのを逆に積極的に利用するんだという政策的な考慮によって、第二の社会的リスクが解決されたとしても、まだ第一のリスクが残るという整理になる
    • 第一のリスクが解決不能であるとなってしまえば、およそ銀行が暗号資産を取り扱う余地がないということになる
    • この点は、業規制においてそれぞれの資産の中身、性格で区別をしながら保護措置を利用したように、リスクごとに資産と体制があるのかという形での検討をすることが必要かと思う
      • 事業の返済原資や流出資産の填補という流動性の面での対応
        • 暗号資産交換業者になるということによりその規制のもとで賄われる部分がある
      • 価格変動リスク等
        • バーゼル体制のもとでのリスクコントロールという観点から最大限のリスクウェイトが積まれ、それによってこれを扱う経済的合理性がなくなるのではないかというご指摘がありましたがそれは別として、こういった体制がある
      • レピュテーションやシステムリスク、それからマネーロンダリングなどに巻き込まれるリスクというのは、突発的に、扱っている資産の価値を大きく超えて事業分野を超え、企業全体に波及する損失が発生するようなイベントのリスクということを意味する
        • こういったものは例えば決済システムの不具合であるとか、扱っている金融商品に悪評が立つなど、既存のサービスにおいても起きるもの。
          • そういった損失は現在、銀行の一般的な経常の損失リスクとして扱われると思う
        • これに対して暗号資産というのが特別に不確実要因があるであるとか、あるいは被害が非常に大きくなるような特殊な特質があるため、何か別の手当がないと従来の体制ではその損失のバッファーは吸収できないということであれば、この部分が非常に強い障壁になる
          • マネロンリスク等の水準が経時的に見極められて、コントローラブルであるとなった場合には、この第1の部分の懸念点というのは解消ができるものであるというふうに理解するのではないか
  • 第2にインサイダー取引の規制方法について
    • 44ページで重要事実につきバスケット条項を置くことについて了解
      • この形では、またあるいはガイドラインなど他の形を取る場合でも、暗号資産が類型1の暗号資産なのか類型2に当たるのかによって、重要事実が何なのかが変わってくる上、それぞれについて外側にバスケット条項で拾われる内容が出てくる
        • この類型の判別が大きな分岐になる可能性がある
      • 例えば国内業者が取り扱う、あるいは取り扱う予定がある暗号資産であれば、DEXやP2Pを含め規制の対象とするという適用範囲もこれは適正と思う
        • しかし、規制の適用範囲となるかどうかという点で、買う側について可視性がそれほど高くなくなってしまうということはあると思う
    • この2つの可視性の低さへの対処として、適切なのかというところがあるが、41ページの一番下にある情報提供ということがひとつ重要になる
      • 情報提供に際して規制の対象となるかどうかに加え、どのくらいその発行数、分散、流動性等があるのか、どういう性格の資産なのかといった情報もあるといいかと感じた
      • とはいえ今しがた松尾委員からJVCEAに依存するということについてのリスク、その主体の中立性のほか情報を閲覧する可能性など、いろいろなリスクというものがあり得るというご指摘があった
      • こういった形での情報提供を充実させるという方向性を取るかどうかということも含め、制度設計についていろいろと工夫をいただくということが、このインサイダーの中身の情報提供については非常に重要かと思う

岩下 直行委員 京都大学公共政策大学院教授

  • まず最初に今回から消費者庁さんにオブザーバーで参加していただくことになった
    • 前回の私の提案を受け入れていただきどうもありがとうございます
    • これからの議論は消費者庁さんにとっても大事な議論が繰り広げられると思いますので、ぜひ行政の内部でしっかりとした情報共有がなされることを期待するところ
  • 今回の金融庁の見直し案 資料4について
  • 業者規制を、特に伝統的な金融機関と暗号資産交換業者との間でどのように棲み分けるか、コミングルするかという部分についてかなり具体的な案が出てきた − 5ページでは既存の証券会社、金融商品対象の開業者について、再登録を前提としてほぼ全面的な暗号資産への参入を認めるということだと思う
    • 20ページでは、銀行や保険会社の投資としての保有はなんとなく容認する方向である、ただ株式と同じように募集取扱いはできないというのは自然、子会社ならOK、そういう整理
  • 従来暗号資産というのは伝統的金融からは隔離されてきて、資金決済法に基づく暗号資産交換業者がオフチェーンの顧客との取引を行うことがほぼ唯一のルートであったのに対して、伝統的金融に段階的に統合していこうという提案に思う
  • 私自身は暗号資産の構造的リスクを考えれば、全面的な制度統合はもっと慎重に考えた方がいいんじゃないかという視点からいくつか申し上げたい
  • 今回の見直しの線引きをよく見ると、従来の伝統的金融と分散型金融という言い方をして暗号資産と伝統的な銀・証・保の領域を分けていた。
  • 今回はその中でも証券会社というのを間に置いて、両者の間の統合を進めようということのように見受けられる。
    • 値動きのある商品という意味では、暗号資産と株式などの有価証券は共通している部分がある
    • しかし証券市場というのは、これは教科書的な話ですが、本来企業の成長とか社会的価値の創出を資本の力で支えるという理念的な基盤があったはず
    • 実際に証券会社さん、大手の証券会社さんや、証券取引所さんのIR資料、あるいはテレビの広告などを拝見しても、社会に資する投資であるとか、持続的成長への貢献であるといったような言葉が繰り返し強調されてきた
    • それに対して暗号資産市場は値上がりしているという意味では投資家にとってリターンを与えるものとして良い投資という言い方もできるが、結局匿名性を持ったよく分からないものが価格変動するということであって、そこに投機的に値上がり益を狙って投資をするということなので、どうも経済的な性格はこれまでの伝統的な株式などとは根本的に違うもののように思う。
    • 果たして証券業界さんは、これまでの理念を保ったまま分散型の新しい暗号資産というものを自分たちのビジネスの中に統合していけるんだろうかというのは、なんとなく私自身もちょっと証券業界さんの立場に立ってみると不安、制度改正は非常に大きな転換点を示しているように見える。
  • ただ今回の提案は、なんとなくスパッと全部統合しますよというふうに書いていない
    • 伝統的金融に暗号資産のリスクが波及しないように制度上の防御線みたいなのをなんとなく残したまま限定的にちょっと関与させていく、特に銀行保険の領域はそういうことで、非常に微妙なバランスの上に立っているように思います。
  • 技術的に制約も多い
    • 銀行・保険、あるいは伝統的な証券会社さんも暗号資産交換業者さんと同じ技術を持っているわけではないので、そこに制約もある
    • そもそも伝統的金融機関側が暗号資産に深くコミットしようとするインセンティブはそんなにないように思う
    • いわゆるステーブルコインで云々という話も、新しい分野へのチャレンジとして多くの選択肢の中に入ってくるかもしれませんが、メインの部分を分散型のブロックチェーンの上に置きましょうという話は私は寡聞にして聞いたことはない − 暗号資産の値上がりによってそこが目移りしてしまう部分があるかもしれないが、伝統的金融はこれまでのスタイルを基本的にしていると思っている
  • そう考えると、なんとなく今回の事務局提案自体が、本当に完全に統合して良いものかというためらいを感じるところ
    • そういう意味では制度として包摂しながらも業務的には実際に距離を置くというさじ加減の難しさというのがあるかなと思う
    • なぜこうなるかと言うと、暗号資産を既存の金融秩序の中に取り込むには必然的に構造的な限界があると考える
    • この点を理解する上で社会的な背景を触れておきたい
      • 最近アサヒビールとかアスクルとかがいわゆるランサムウェアの被害に遭って社会全体に大きな不安が広がっている
      • 報道の多くは被害の実態を伝えるにとどまっているが、こうした犯罪の背後には匿名での身代金受け渡しを可能にした暗号資産の仕組みがあることは明らか
        • 暗号資産はマネーロンダリング、身代金の決済やテロ資金の調達の手段として、実体経済の裏側で犯罪を支える基盤的な仕組みとして定着してしまっている
        • このことだけを見ても暗号資産が社会にもたらした負の影響の大きさというのは明らか
      • 一般投資家が国内の暗号資産交換業者を通じてオフチェーンの取引の世界で保有している暗号資産というのは別にこうした反社会的な行為に直接利用されるわけではない。
        • しかし制度的に監督可能なオフチェーン取引は暗号資産市場全体のごく一部に過ぎない
      • 膨大な暗号資産がアンホステッドウォレット上で流出しており、そこでは誰が保有しどこに送金してるか把握することはできない
        • しかもオンチェーンとオフチェーンというのは別に遮断されてるわけじゃなくて、利用者の間で日常的に様々な階層において資金の移動が行われている
      • このため、監督可能な部分だけを切り取って、きれいな箱庭を整備しようとしている − しかし結局は匿名で流通する暗号資産の全体構造から切り離すことはできない
      • むしろ制度的に整備された交換業者が結果としてオンチェーンの資金洗浄や不正な行為の入り口・出口として利用されてしまうリスクもある
        • これについて先ほど協会さんの方から対策を講じていますというご説明があったところだが、残念ながら現実にはその対策がほぼ機能していないと考えている
        • 実際に世の中で大量の交換業者さんを通じた形で不正な送金が行われて、後手に回る形でそれが規制されているというのが実態だと私は考えている
      • したがって暗号資産市場の整備をどんなに進めても犯罪利用を完全に遮断することはできず、市場をクリーンなものにすることは現実的にできない
    • 現在の政策はこういった構造的なリスクを前提としつつ、少なくとも伝統的金融システムがその影響を受けて汚染されないように防御線を引く、防御的な判断に基づいているというのが今これまでのところだと思う
      • 銀行は膨大なコンプライアンスコストをかけてマネロン対策に大変な費用を投じている
      • 伝統金融機関の人たちの立場にすると、暗号資産ビジネスそのものに慎重な姿勢をとっているのは割と当然なことだと思う
      • 制度としてそういう取り組みと矛盾する方向に誘導することは適切ではないと私は考えている
      • 今後は規制当局のさじ加減が非常に重要であると指摘しておきたい
  • 資料の41ページ、インサイダー取引の規制
    • DEXやP2Pといった分散取引環境も規制対象に含めるという大変威勢の良い発言があるが、この方向に実効性を持たせることは不可能 − そもそも取引主体が誰なのか、どこで取引が行われるか不明確であって、実態把握さえ困難
      • 暗号資産の価格形成自体もグローバルかつ匿名的に行われる以上、国内法制だけでインサイダー取引とか価格操縦などの不公正取引を完全に防ぐことはもともと不可能
    • 現実的に国内法で対応できるのは多分、国内で発行され国内で売買されるICOトークンとかの一部の発行体が特定できる領域に限られる
      • もちろんこういった対策を講じることには一定の抑止効果があると思いますので講じること自体反対ではありません
      • ただ暗号資産一般において不公正取引を制度で根絶するということはできないと私は考えています
    • このあと報告書を作成することになると思うが、その時に「これによって根絶できます」みたいな誤解を与えないようにした方が良い
      • 制度の持つ限界を明示的にディスクレーマーとして記載するということが誠実な委員会としての対応ではないか − サイバーセキュリティについて
    • もともと暗号資産交換業が抱えるリスクというのは伝統的な金融とは根本的に違う
      • 暗号資産というのは匿名性を前提する仕組みですから、犯罪取引に容易に利用されている
      • 攻撃者にとってはものすごく格好の標的
      • 一度システムが突破されたら交換業者が預かっている顧客資産が一気に流出してしまって実質的に回復不能になる
        • これは銀行や証券も確かに最近サイバー攻撃を受けていろいろな被害が出ているが、それはある意味で一部の取引、一部の顧客に対して限定的に発生している − たまにシステムが停止等あるが、顧客の預かっている資産全部が一気に失われるなどという攻撃は今のところ銀行や証券は受けていない − その意味では暗号資産交換業は従来の金融機関とは比較にならないほど高いサイバーリスクを内包している
      • 証券会社でほふり(証券保管振替機構)に預けているというよりは、銀行のように自分のところで顧客財産をすべて預かっている立場
        • もし仮に問題があったら投資家保護の観点から顧客資産が全部が消失してしまうというリスクがある
        • 非常に厳格な、銀行・証券よりもはるかに、同等以上の、厳格な管理が必要とされる
      • この観点からすると、軽々しくこれは安全だというメッセージを規制当局が発することはあまり良いことではない
        • 前回制度改正でコールドレッド管理を義務付けるという議論があった
        • 今日も資料2、資料3、資料4でもコールドウォレットという言葉が何度も出てきたが、実は厳密に言葉として定義されていないと私は思っている。
        • 元々リスク分離を目的としたものだったが、定義自体が曖昧なので、いろんな人が、うちはコールドウォレットです、私もコールドウォレットですと言い出した。
        • 結果として我が社では全ての取引をコールドウェッドで取引してますから絶対安全なんですっていう暗号資産交換業者が現れた。 − DMMビットコインがこのコールドウォレットという言葉を宣伝文句に用いてバンバンに広告を打っていたが、攻撃を受けて結局最終的には事業廃止に至ってしまったということは非常に象徴的な事件である
        • 言葉が安全性の保障と誤解されて、結果的に非常に大きな被害をもたらしたという意味では、制度設定の難しさというのを如実に表している
  • 今回の資料全体を通して、現行制度の中で可能な限り一生懸命なんとか整備しましょうと考えている
    • その方向性自体は、ある意味でそうするしかないようなことなので私自身は何がしか全体的に賛同したとまとめられてどうかと言われると、しょうがないかなと思う
    • ただ暗号資産の構造的に抱えるリスクを完全に制御することはできないということ、制度で制御する領域と、制度が制御できない領域というのは、ちゃんと明確に区別した方が良い − それをしっかり透明性を持って説明していくことが不可欠
  • 制度の限界を正直に示して、そのリスクと責任の所在を明確にする透明性こそが今後の暗号資産という不安定な領域における健全な政策運営への礎になるのではないか。

松尾 健一委員 京都大学大学院法学研究科教授

  • 事務局資料の4についていくつか申し上げます
  • まず銀行・保険会社による暗号資産の取り扱いについて
    • 今岩下先生からは伝統的な金融商品とは違うというご指摘もありましたが、金商法はすでに(暗号資産の)デリバティブ取引について規制対象としている。
    • デリバティブの中には金融資産を原資産としないものもあり、もっぱらそのリスク分散、リスクコントロールの観点からその取引をするというものも含まれている。
    • 銀行や保険会社というのがポートフォリオのリスクコントロールの観点から暗号資産の保有を望むと、どこまでニーズがあるかは分かりませんが、のであればそれを禁止するということはないのではないか
    • 一方、仲介の方ですが、こちらについては松井委員からご指摘があったが、銀行や銀行の関連会社等が扱うと消費者がそれを安全だと誤認するというリスクはなお残る、いくら(銀行)本体でなくても残るということはあるかと思う。
      • 一方で自主規制機関が脆弱であることを考えると、こういった資力のある業者がもし入ってくるのであれば、銀行保険会社の子会社として仲介とところに入ってくるのであれば、そういった自主規制機関の基盤の強化につながるという意味では消費者の保護につながる点もあるのでそのあたりのバランスかなというように感じた
  • 無登録業者のところ
    • ぜひ犯則調査の権限を監視委員会に与えるといったところも含めてご提案の方向で進めていただきたい
    • 特に民事効については、なかなか説明が難しい部分もあるかとは思うが、ぜひ実現していただきたい
    • そのこととの関係で29ページ、海外の無登録業者をどう扱うか − 少し難しい問題として残っている
      • 勧誘することなく、つなぐ行為自体は株式等でも規制対象となっていないということですが、例えば暗号資産ですと海外で取引されているところにつなぐインターフェースのようなアプリの提供をするというような行為は例えば勧誘には当たらないのか
      • 当たらないとしても、何かこれまでにはなかった暗号資産特有のものとして独自の規制の対象にする必要があるのではないかと感じた
      • これはDEXのところでユーティリティのインターフェースの提供行為について何か行為規制を課すべきではないかという問題提起をされているところにも通ずる
      • 例えばそういったアプリの提供を国内の業者がやっているのであれば、何かそこに規制を課すことで間接的に止められないかなというようなことを考えた
  • 最後にインサイダー取引
    • 概ね方向性に賛成
    • 1点少し細かいがIEOのところで、第2回でご説明があった際に、一旦発行すべき暗号資産は全部発行してしまって、ある者に全て割り当て、その人が徐々に市場に出していくというようなケースもあるんだというお話があったと記憶している
    • そのような全てを一旦取得した人が暗号資産を市場に出していくという行為も、発行に準じて扱う必要があるのではないか
    • これは売り出しは株式の場合は重要事実にはならないわけですけれども、どうもそのIEOに特有の、あるいは暗号資産にそういう現象があれば、発行に準じたものとしてインサイダー取引の重要事実との関係でも捉える必要があるのではないか

河村 賢治委員 立教大学法学部教授

  • インサイダー取引のところに絞って発言をしたい
  • 私自身は、不正行為の一般的な規定とガイドラインの組み合わせによって、ガイドラインで処罰範囲の明確化と、暗号資産市場の特徴であったり変化に迅速に対応していくということを確保しつつ形式犯ではなくて実質的に悪質な行為を刑事罰の対象にしていく、課徴金についてはもしかしたらその形式犯的な要件を対応していくという考え方もあるのかなというふうに思っている
    • 今回のご提案というのはそのあたりのことは理解しつつも、やはり日本の法制では難しいということかなというふうに思いながら聞いておりました
  • 必ずしも海外と同じような法制にする必要はないということも理解しつつ、43ページの欧州のインサイダー取引規制との比較という観点から、少し発言する
  • 内部情報の定義のところで、「直接的または間接的に、単数又は複数の発行者、募集者若しくは上場申請者」というところと、「又は単数若しくは複数の暗号資産(筆者注:「に関連する、」と続く)」ということになっていて、「又は」でそこが区切られていますので、要するに発行者等にひも付かない者であっても、暗号資産そのものに関連するのであれば、内部情報になり得る定め方になっているのかなと思います。
    • ちょっと不勉強なので間違った理解をしているのかもしれないが、そうだとすると、例えば公表されれば価格に重大な影響を及ぼすような暗号資産の機能の変化であったり、暗号資産の数の増減、あるいは暗号資産の取引状況、取引情報であったり、有吉先生が言われたような暗号資産の利用状況、あるいは暗号資産に関する国の政策なども、ここでいう内部情報に含まれる可能性というものがあるのかなと。
    • 仮にそうだとすると、44ページで今回ご提案いただいている【1】,【2】,【3】の重要事実の中に、今言ったようなものが含まれるのかどうかというのが気になっている − 暗号資産の取引情報のうち、例えば大口取引に関してはこちらの提案の中に入っている
      • 先ほど例えばということで申し上げた機能の変化であったり、数の増減であったり利用状況であったり国の政策であったりが入ってくるのかどうか
  • 43ページに戻っていただいて対象者のところ
    • ③のところで「雇用、職務若しくは任務の遂行を通じて」というのと、「又は分散型台帳技術若しくはこれに類する技術における役割」というところがある
    • もう一つ④のところで「犯罪行為に関与していること」というのがある
    • このうち③の分散型台帳技術もしくはこれに類する技術における役割、というところに関して
      • これも私が間違った理解をしているかもしれませんけれども、もしこれの中に例えばマイナーですとかバリデータが暗号資産の取引情報というのを知って当該取引承認する前に自分の取引を行うという、いわゆるフロントランニングみたいなものも含まれてくるのかと思う
      • もしそうだとすると必ずしもマイナーとかバリデータというのは業者であるとは限らないわけですから、業者規制を通じてフロントランニングを、先ほど申し上げたようなものを規制できないとすると、ここですごく意味を持ってくることになるかと思った
    • そうだとすると例えば48ページ目のご提案について
      • 今言ったような行為というか、規制対象者が、ここでいう規制対象者案の中に、入ってくるのかどうか − 犯罪行為を通じてというのもあったが、こちらの案では「上記のものが職務等を通じて」と書いてあり、この「等」の中に犯罪行為みたいなものも含まれるのかどうか、そのあたりも少し比較法の中で気になったところ
  • 同じにする必要はないと思うが、違うのであればなぜ違うのか、何かしら説明、理由があってよいのかと思った

伊藤 亜紀委員 弁護士(片岡総合法律事務所)

  • 私からは1点だけ質問とコメントをさせていただきます
  • その前提として総論ですが事務局資料については大きく異論はございません
  • 現状の資金決済法の記載からは随分厳しくなるというような印象を持つが、暗号資産を金融商品と位置づける上で必要なことと理解
  • 厳しい規制をしたからといって、暗号資産への積極的な投資に国のお墨付きを与えたような誤ったメッセージにならないように、というのは注意しなければならないことを重ねて、改めて申し上げておきたい
  • 資料4の21ページ、銀行・保険会社による投資目的での暗号資産の保有について
    • 先ほどバーゼルについてご質問とご回答があったが、事務局資料の中で十分なリスク管理・体制整備等が行われていることを前提として、分散投資の対象として認めるというふうになっていると思う
    • これは先ほどの銀行に関するバーゼル規制以外で、どのような方式で、どのようなレベル感で体制整備を求めるかというイメージがございましたら教えていただきたい
    • それに関する意見として、先ほど今回の改正によって暗号資産が投資先として国がお墨付けを与えたというような誤解を与えてはいけないと申し上げたが、そうは言っても今回金商法で位置づけられたことによって、暗号資産を分散投資先にしたいという機関投資家が現れることは想定される
      • そう考えた時に銀行や保険会社といった、経営健全性、公共性がかなり求められる業界の分散投資先として、暗号資産をどのような、どの程度の制約を課して認めるかというのは、国の暗号資産に対する投資商品としての位置づけを示す一つのメッセージになり得るのではないか
      • ここでの議論は金融法の改正ということで、銀行、保険会社を対象とした議論になっているが、他の公共性を有する機関投資家、例えばGPIFのような機関が、今後暗号資産投資に踏み出すのか、できるのかといった議論にも波及し得ることかなと考えている
      • 銀行や保険会社に関する制度設計に際しては、他の機関投資家へのメッセージになり得る、横展開があり得るということをしっかり意識して検討いただければなと思う

事務局回答

  • 銀行保険会社が暗号資産を保有する際のリスク管理・体制整備のイメージということでご指摘がありました
  • 先ほどからございますようにバーゼル規制の中でのリスクエイトというのが一つ大きな要素としてはあると思っている
  • その他どのようなリスク管理体制整備、具体的なものは今この時点では検討中でございますので、具体化するのはこれから
    • ご指摘いただいたように特に中小の金融機関において過大に保有をするということはあまり適切ではないと思っている
    • 銀行のサイズ等も勘案しながら、具体的に体制整備等の基準を考えていくことになろうかと思っている

佐古 和恵委員 早稲田大学理工学術院教授

  • 私からは1点だけコメントさせていただければ
  • 今回の資料は利用者保護に向けて、できることをいろんな方面からされている資料だと理解
    • 私の勉強不足もあると思うが、この資料からはどういう人を守ろうとしているのか、守ろうとされている人の像があまり見えてこず、具体的にちゃんと守られているかどうかというのを個人で判断するのが難しい
  • 実際にどういう人が被害を受けているのか、困っているのか
    • 先日の10月10日のトランプ発言で、うちの学生がやられたといううめき声を言っているのは聞いてはいる
    • 例えば前回委員会で発言の上がった消費者センターの中で、実際に本当に困られている人、私たちが保護しなければいけない人たちの声を聞いて、今回の施策がこれから将来そのような人たちを生まないように、どういう不正の発見ができて、どういう対策ができているのかということを考えていきたいというふうに思った。

オブザーバー意見

  • JBA代表理事 加納
    • 資料4の方は概ね賛成で、今回資料2のサイバーセキュリティに関してコメントしたいと思います。
    • 監督される立場でありながら意見をすることについてはお許しいただきたいと思っております
    • まずクリプトのサイバーアタックというのは大きく2つに類型されていると考えている
      • フィッシング
      • 不正なアドレスに改ざんをする − 同時にセキュリティも大きく2つある
      • コモディティ化された一般的な金融のセキュリティ
      • ブロックチェーン特有のセキュリティ
    • その共助の概念でサイバーセキュリティを防ぐというのに賛成しております
    • ただ一方、共助というのが本当に共助なのか
      • JP Crypto ISACは、大手2社であるビットフライヤー、コインチェックが入っていない。
      • これまさにセコムとアルソックが入ってないような業界団体になっている。
      • 共助と言いながら、一方的に機密情報を取得されるというリスクを恐れていることが考えられる
    • セキュリティ、最重要機密事項がですね、強制的に競合他社に流れるような仕組みというものに関しては反対します
      • なぜ反対するかというと、そのような社会主義的な組織、社会というものは技術の発展はない
      • セキュリティエンジニアは非常に採用が難しくて、こういったセキュリティエンジニアの努力を無下にしてセキュリティ対策は発展しない
      • また投資をする意味もない。
    • なのであくまでも共助の部分というのを明確にしていただいて、一般的なコモディティ化されたセキュリティを共有するという部分に関しては賛成です
    • ただ最重要機密情報の共有を強制されるような仕組みというのには反対をいたします
    • 特に警察組織のJC3であったり金融ISACといったより中立公正である組織と連携をして国家単位でクリプトのサイバーセキュリティを向上するということが求められていると考えております

閉会

次回はこれまでの議論の状況をまとめた資料もご用意できればと考えております。