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ブロックチェーン技術展開の現状と今後 (慶應義塾大学 SFC Open Research Forum 2018)

orf.sfc.keio.ac.jp

(撮影・録音禁止のため文字のみです)

村井:インターネットアーキテクチャから見ると世界がつながっているグローバル空間に通貨ができる役割は非常に大きい。データの流通がインターネットというグローバルな一つの空間で、正しくカバレッジ100%、永続、ホープフリーに管理できる、そこに大きく踏み出した。インターネットの世界では動いていないものを信用しないが、ブロックチェーンはすでに使われている技術である。

岸上:クロスチェーンが中心テーマ。BASEというアライアンスがあるが、その関係者がアメリカに居るので、そちらとつないでいます。ご承知ください。

最初に私からイントロということでクロスチェーンとはなにかお話したい。

ブロックチェーンといいながら、世の中でお金が動いて多くの人たちが関わっているのはビットコイン。それに対してEthereumなど、いろいろな技術を使ってそれ以外のお金または貨幣以外の流通サプライチェーンなどをブロックチェーンで行おうという話がかなり出てきている。これまでそれら(流通サプライチェーンなど)は何故か独立して動いていた。ところがここへ来て、それらをどうつなぐかという話が出てきています。

われわれはブリッジという、AブロックチェーンとBブロックチェーンをつなぐことは重要になりますよねと言い続けてきたが無視されていたが、それがここへ来て注目されるようになったので開催に至りました。つなぐとは、インターネットがつながっている。それぞれのAS(Autonomous System=自律システム)と呼ばれるものがつながる大きなプロトコルがBGP(Border Gateway Protocol)。それぞれの違うポリシー、独立したものをシステムがつなぐということでインターネットが全世界相互運用性を持って繋がっている。これと同じことがブロックチェーンでも必要になるんじゃないかというのが、インターネットになぞらえた現在のブロックチェーンの位置づけというと、分かりやすいかと思います。

IETFなどが非常に大きな役割を果たし、みんなが安くつながっています。ひょっとするとブロックチェーンでもそうした事が必要かなということです。

標準化するかどうかは置いておいても、相互運用性を用意しないと、自然にはチェーン同士は繋がりません。インターオペラビリティをどうつなぐかは、ここのところ急にいっぱい出てきている。

中間にHubみたいなものをつなぐ、COSMOS HUBとか、WANCHAINとか、Relay Chain、Nijiとか、いろいろ出てきている。つなぐことになるのかもしれないし、乱立したままかもしれません。

Niji以外海外から出ていますね。このままだと日本からも技術でないことになるが、そうはしないように、していきたい。このあとは日銀の方、NTTの方、それから村井先生と、それぞれどのようにアプローチしているか伺いたい。


奥地:本日は発表機会いただきありがとうございます。Project Stellaのインターオペラビリティについて紹介します。

Project Stellaは、日本銀行欧州中央銀行が共同で金融市場インフラへのDLT(Distributed Ledger Techonology:分散型台帳技術)の応用可能性に取り組む、発表当初は世界唯一の取り組みです。分散型台帳システムが広がっている中で、どういうものかきっちり理解しておかないと、ということで調査を行うものです。2016年開始。

これは新技術の動向、潜在力について深く理解するための一環です。日銀ネット(日本銀行金融ネットワークシステム)などもそういう取り組みから生まました。普段の検討は続けている。そういうなかで出てきたのがブロックチェーンや、分散型台帳技術。そこで調査をするというモチベーション。

StellaのPhase2を今回話すが、去年9月まではPhase1として、日銀ネットのようなリアルタイム決済システムを実現できないか、どのような効率性が達成できるかを調査しました。その調査から、Phose2を、今年の3月まで行いました。

デリバリーVSペイメント、証券の購入時に、「お金を渡したけど証券が渡されない」、「証券を渡したけどお金が渡らない」というようなことが起こらない、アトミックな方法をDLTを使ってできないか、Corda v2, ElementV2, HyperLedger Fabric v1などでやった。

他にも、各国中央銀行、ユーロ圏、イングランド、カナダ、シンガポール南アフリカなど、いろいろなところの中央銀行がDLTに取り組んでいます。

今回お話する内容は、シンガポール通貨庁の証券分野の実証実験が、同じような取り組みと言えると思います。

DvP(Delivery Versus Payment)をどう実現するか。信頼できる第三者を置かずに資金と証券のDvP決済を実現する複数の方式を提示しました。

  • 単一ネットワーク上の台帳を使う方法
    • 銀行2つそれぞれの台帳でA→B、B→Aをそれぞれで同時に行う
  • 複数ネットワーク上の台帳を使う方法
    • ネットワーク感で複数台帳があって接続されていて、連動するパターン(今回はこれでない
    • ネットワーク間で接続のない複数台帳方式

f:id:niwatako:20181123190747p:plain ⽇本銀⾏・欧州中央銀⾏、「Project Stella:分散型台帳技術によるDvP決済の実現」 より類似の図

利用した基盤は3種類、Corda release-V2(金融向け)、Elements v2.14.1.1(パブリック型に近い)、Fabric v1.1.0-alpha(汎用)、特徴の異なる複数のDLTを用いることで、それぞれのDLTの特徴とDvP可否の関係性を調査した。実験環境はAWS上。

一番左が比較的容易そうだと言っていた、単一台帳に全て乗っている方式(当事者が同一台帳に参加している)。左側Aと書かれている方が証券を保持して、Bが資金を保持している。AがBに証券を送って、BがAに資金を送る、という契約を作る。契約をBが確認して署名、それにAも署名すると、その契約を実行できる。

システム間インターフェースを作って間に信頼できる人が入ってそれぞれ操作できれば容易(図の中央)だが、そうでない場合ということでクロスチェーンアトミックスワップ(図の右)。

HTLC(Hashed Time-Locked Contract=ハッシュタイムロックコントラクト)を利用。シークレットXのハッシュ値Yを利用する、YからXを推定するのはほぼ不可能。この2つを組み合わせる。LightningNetworkなどでも使われている。

証券の持ち手Aが、証券とYを含む契約を作り、もしXがあれば証券を渡すという契約を作る。このままだとAの証券がロックされて動かせないままなので、一定時間BがXを提示しなければAに戻ってくるという条件をつける。

これで、ネットワーク間の接続がない複数台長間方式でどうするかと言うと、Aがこの契約をBに送りつけて、Bはお金を渡して証券がほしいので、AがシークレットXをバラしたくなる仕掛けを作ればいい。Bが資金をAに送るが、その条件にはYに対応するシークレットXを示さなければいけない、という契約で、Aが作った契約よりも短いLockTimeを設定する。AがBへ証券を渡すという契約のLockTimeが期限を迎えるより前に、AはXを提示してBからの資金を得なければならない。Aがそうすると、Bは示されたXを使って、Aから自分宛ての証券をXを使って手に入れることができる。

DvPが成立した状態。ただし、資金の移動と証券の移動が、タイミング的に完全に同時ではないという問題と、BがシステムトラブルによってXを提示して証券を得られないことがありうるという問題はある。

というわけで、2つの方式、単一台帳方式と複数台帳方式を検討しています。

単一台帳方式では、取引が同時に行われるので、どちらかがない場合には、Bが資金を使い込んだら取引は実行されない。ロックされていなかったら取引自体が成立しない。ところが複数台帳では、Bのロックをしておかないと、資金がもらえないとか、Aが先に誰かに証券を売っぱらってしまったということが起きる。資金証券の流動性という観点では、ロックが必要になります。

処理時間は、手順が長い分だけ、複数台帳方式のほうが処理に時間がかかる。

秘匿性で言うと、単一台帳方式ではコンセンサスメカニズムに提示する段階まで、A, B以外に取引をやるということがばれない。しかし複数台帳方式では、今回利用した基盤は取引によって情報公開範囲が異なる。シークレット共有に第三者を介する必要がある。

ネットワーク間での相互依存性、複数台帳でHTLCを使うとすると、相手のネットワークの信頼性とかが重要になる。タイムアウトが、例えば片方のDLTだけ時間の流れが違うと困る。ある程度相互に予測できる時間になっていないといけない。想定する時間精度が良くないと極端に長い時間を設定する必要がある。

インフラ全体のデザイン

DvP以外の機能、流動性節約、口座間ネッティング、担保としての証券の効率的な利用の実装が容易。ただ、ひつの台帳でいろいろ何でもやるのは安定性や柔軟性、頑健性、スケーラビリティに問題があるかもしれません。

単一 複数
インフラ 1つのネットワーク上で様々ん資金のやり取りが行われる 複数ネットワークが互いに一切の接続無く併存
メリット 流動性の利用効率、処理速度 柔軟性
課題 課題、柔軟性スケーラビリティ頑健性 課題流動性利用効率・処理時間

課題認識: 分散と集中の使いわけが必要、分散が良いところで利用する。

DLTを使ってサービスを提供するのが動き始めている。BOE(Bank of England)次期RTGS Blueprintでの言及

DLTは十分成熟していないので時期RTGS(Real Time Gross Settlement)システムでは利用しない、次のシステムはDLTを用いたシステムと柔軟に連携できるようにする

村井:これは取り組みとしては、今課題みたいなのがあって不可能なことを解決できるのか、それとも、今やっていることがどう変化するのか、早くなるのかとかの検証なのか

奥地:今やっていることが成立するかはPhase1でやっている。ネッティングは一部しか出来ていないが、実現はできるだろうというところまで確認できている。

村井:課題解決が目的ではないということですね

奥地:まず何か知らないとスタートに立てないので、この技術は何か、というところですね


渡邉:NTT研究所の渡邉です。NTTグループは様々なソリューションで取り組んでいます。その中でもインターオペラビリティ、クロスチェーンに興味を持って取り組んでいる。

何故必要になってきたのか、技術を俯瞰する形でお話したい。

ブロックチェーン技術の期待が高まっている。分散性が特徴。特定管理者がいなくても動く。様々な領域への期待が高まっている。

実験から次のフェーズへ。

エンタープライズ実証実験は次々行われている(外航貨物保険の保険金請求へのブロックチェーン技術適用に向けた実証実験の完了)。

仮想通貨流出事件が起きたりもしている(仮想通貨交換業者|仮想通貨流出事件まとめ | CoinChoice)。

だんだん幻滅気に入ってきているかな。現実的な課題が見えてきたかな。というところ。

特に、スケーラビリティ。あとはセキュリティ&プライバシーは重要ですよね、そして、分散性が重要ということがだんだん広まってきているかと思います。

仮想通貨の事件等では、中央集権的な取引所に鍵を預けている。せっかくのトラストレス技術なのに攻撃の対象になってしまう。技術の本質を理解した運用が重要。

Vitalikが提示するブロックチェーンのトリレンマ、「スケーラビリティ、セキュリティ、分散性のうち3つ満たすものはなく、2つしか満たせない」、銀の弾丸はない。

多様なブロックチェーンの形態が出てきている。どのような形態があるのか

f:id:niwatako:20181124152944p:plain

はっきり分けられるものではない

プライベートで検証者の少ないエンタープライズ向けHyperLedgerなど、バリデータはある程度規模が必要、権限は分散しているが取引を高速に行えるリップル、COSMOSなど、セキュリティ上がってスケーラビリティ下がる匿名性のある通貨、Bitcoinなどのグローバル仮想通貨など

カンブリア爆発のように種族が多くなっている

そもそもこれらのブロックチェーンの種族は互いに連携することを考えて開発されていなかった。これらのチェーンの連携自体を生存戦略とするチェーンも現れている。

相互運用性が必要とされる場面を紹介したいと思います。

たとえば分散型の取引所でのパブリックなブロックチェーン間のエクスチェンジ。背景には集中型取引所のハッキングの多発や、より低い手数料で行いたいというのがある。

もう一つはパブリックとプライベートの取り組み。なぜか。パブリックとプライベートを組み合わせることで、各チェーンの欠点を補完できる。パブリックチェーンはスケーラビリティーを上げたい。プライベートチェーン側は、自身の分散性が少ないので信頼が少ないから、ビットコインやEthereumの力を借りたい。

もっとさらなる効果もあると言われている。インターブロックチェーンを用意することで流動性を確保、取引所同士を結ぶ、BitcoinでEthereumのスマートコントラクトが使える、など。

ここまでなぜ相互運用性が必要か、それに対する効果みたいなお話をしました。

ここからは様々な技術を紹介します。

  • クロスチェーンの形態(以下、オレオレネーミングです)
    • 直結型: P2Pの価値交換、Atomic Swap, X-Relay(BTC Relay)
    • 中継型: 真ん中にブロックチェーン同士をつなぐブロックチェーンを置く(COSMOS、Polkadot, Liquid, InterladgerProtocol/XRP
    • 階層型: BitcoinやEthreumなどのRootChainに信頼を寄せて小チェーンがぶら下がる(Plasma、Ethreum2.0、Drivechain)完全な採用にはハードフォークが必要なため提案段階のものも多い。
  • トラストレスな接続を可能にする要素技術
    • どうやってブロックチェーン間の資金移動を保証するか。送って戻せなかったらしょうがない
    • どうやって他のブロックチェーンの入金を確認するか
    • どうやって相手の裏切りを防ぐか

マルチシグを利用方法

調整役を担うのがフェデレーションノード。複数ノードが集まって連合を作っていて権限が分散されているので、複数ノードでエスクローを組ませることができる。

SPV Proof vereficationを使う方法

Bitcoinへの着金をEthereumでどう認識するのか。ビットコインの中にトランザクションが含まれたことを確認するために全部のチェーンを舐めるのはコストが高い。SPV Proof vereficationはマークル木を使った高速なトランザクション検証方法。RelayerがBlockヘッダを誰かがEthereumに刻み続ける。提出されたSPV Proofと照合する、という方法。


Hashed Time-lock contract

相手の裏切りを防いでいかに通貨を交換するか。

  • AとBの間で交換しようとする。BがHashパズルを作る。答えはBだけが知っている。
  • BがLitecoinをパズルでロック。
  • 同じパズルでAがBTCをロック。
  • BがBTCをアンロックするためにパズルのピースをはめる、公開ネットワークなのでパズルのピースがAから見える
  • AがLitecoinにピースをはめてLTCを得る

相手が裏切ることをどう防ぐか。Time Lockがかかっているので音信不通なら自分に資金が戻る。

実際にどういったプロジェクトにこうしたものが使われているのか。

Interledger Protocol に使われている。

Ripple社提案のもの。HTLA(Hashed Lock-time Agreements)というプロトコルと定義している。

私はブリッジ通貨が必要なのではないかと考えている。オープンな台帳同士なら良いが、レガシーな銀行台帳などを想定するとそこでブリッジ通貨が必要。リップル社はそこに狙いもあるのかなと思う。

多くのクロスチェーンが出ている中で基本となる接続にはこれらの要素技術が使われています。

  • Federated peg (Sidechain)
  • SPV Proof verification
  • Hashed Time-rock Contract

階層型ブロックチェーンへの期待

Rootブロックチェーンにぶら下がる形のPlasma, Ethereum2.0が出てきている。プロトコルのアップデートは難しい。TCPがずっとそのままみたいに、入れ替えることはなかなか難しい。

f:id:niwatako:20181124160140p:plain State of Ethereum Protocol #2: The Beacon Chain – ConsenSys Mediaより

NTTの取り組み。Scaling Bitcoinで発表したもの。 NIJI

[1810.10194] Niji: Bitcoin Bridge Utilizing Payment Channels

普通、ペイメントチャネルをオフチェーンに張るが、これをブロックチェーン上で張る。ブロックチェーンの中でチャネルを張っていて高速に取引を行っている。ペイメントチャネルとクロスチェーンを組み合わせたはじめての取り組み。


村井:いま私はそういうプレゼンの話じゃないが、最初の岸上さんがおっしゃったBGPとのアナロジーの話をすると、設計をしたときはそもそも一つの中で、IGP(Interior Gateway Protocol)しかいない中で決めている。インターネットはネットワークが繋がって動いていく、というのはゲートウェイプロトコルで動いてる、データをリレーする。一つのネットワークでどう動くか、を決めているのがIGP(?聞き取り自信なし)。自立性のあるネットワーク、インターネット、ネットの相互接続、これがIGPの相互接続で出来ている。これをつなぐのにEGP(Exterior Gateway Protocol)を考えた。ISP(Internet Service Provider)同士をつなぐのを決めているのがEGP。これを考えようと、インターネットは2階層になっている。BGP(Border Gateway Protocol)は二階層が必要じゃないか、という話だったと思う。

インターネットはそれをどう決めたか。(先程)岸上先生はBGP(と呼んでいたが)、僕はEGPと言っている。

IGPとEGPは概念で、この中の一つの提案として、淘汰されて選ばれたプロトコルがBGP。

なんと驚いたことに、アナロジー的には、携帯電話のモバイルフォンがBGPでつながっている。インターネットが作った網間の仕組みを、携帯電話間の課金のポリシーに使っている。携帯電話は課金があるので、今日の話により近づいている。

どこを標準に抑えたいのか。ここだけは世界で一個にしようという話を何度もして生き延びたのがインターネット。

私は最初から居るからよく知っているのだけど。一つだけインターネットに大事なことがあるとしたら、IPアドレス。中身のペイロードはデジタルデータ。そのディスティネーションとしてIPアドレスが振られている。それを運ぶのにIGP, EGPを利用している。ここにはすごいリスクが有る。どこをとっておくべきという議論は何度もされている。

神戸でインターネットの会議をしときにIPを変えようという話があった。IPはNSAP(Network Service Access Point)アドレスに変えようということが決まっていた。CLNP、OSI Layer3にしようと決めていた。実は今の形ではなくてOSIで電話番号と共通、電話と完全にマージするという提案ができていた。IPv3と言う。92年にみんな日本に来て、無理だと、これはコアの部分のIPのアドレスの仕組み自体をすり替えて生き延びる、持続することは無理だから、IPだけは変えるのをやめようという大きな議論をした。技術的にフェアでやろうといって、FTP...etcとかがちゃんと動くか、全部すり替えてCLNP、IPで動くのか、検証した。全部作らせて動くか。この2つの検証を開発グループでやった。両方共完璧に動いた。

(何で判断して選べばよいか)これは困った、となったが、今までの延長で大事なのはIPだというのと、CLNPもちゃんと動く。その時何を決めたか。IPv5は可変長アドレス。IPv6は固定長アドレス。可変長アドレスは頭に何桁か書いてあって、ここまでがヘッダだから、ここからがペイロードだとなる。そこで決め手は"ソフトウェアが増える"こと。馬鹿なプログラマでもソフトウェアをつくれるというのを最終意思決定につかった。可変長だと実装を間違える可能性がある。固定長なら間違えにくい。

コアのIPだけは守って、ほかはいろいろ競争していけばいい。すべての人が開発に関われること。作り続けようと思った人がずっと関わり続けて運用できる、ちょっとのシンプルさが、スケールと永続性に意味があるという話をした。

その時の選択が正しかったから少なくとも2018年にインターネットは動いている。

アナロジーとしては似たようなことがあるのかなと思いました。持続可能でオペレーションが出来ないといけない。

分散化台帳は世界中にオペレータが居る。エラーを起こしてはいけない。エラーの最大の原因は複雑化。検証も含めて単純さの中で自信を持って運用していくことがものすごく大事だなと思いました。

インターネットのペイロードはデジタルデータだと言いました。ブロックチェーンペイロードは貨幣ですか、価値ですか、それとも別のものなのですかということがあって、そのことがインターオペラビリティとか、複数の自立したものを相互接続してどういう価値観と重要性でやるかというときに重要性を持ってくると思います。

どういう価値に相互接続を考えるのかが重要なのと、アトミスティの話をされていて、Atomic Transactionをどうパッキングして矛盾が起きないようにするかはものすごく重要。BGPの話に戻るとルーティングテーブルは、NTTのとKDDIがくっついているとしますね、その間でデータをやり取りするとしたとき、このトラフィックKDDI経由で行くぞ、これはソフトバンク経由で行くぞということを考えたときに、ここはポリシーと契約。これをインターネットで始めると矛盾が起きる。ポリシーとオペレーション上の動きに矛盾が起きるのでそれを検証することが必要になる。エスクローなどがグローバルネットワークを形成するのでその系で矛盾が起きてそれをどう解決するかの課題もあるなと思いました。たいへんワクワクする。課題だらけという意味で。


岸上:会場の皆さんにも参加していただきたい。結果クロスチェーンにかなり絞った会にしました。それも含めて最初会場に振りたいですが、コメントや、3人が言っていたことへの質問などがあれば受けたいと思います。

会場:メルカリ中島です。皆様のお話の中で何度か出ていた、クロスチェーンにしろそうでないにしろ、規格がいろいろ出ていて統一するという話が出てきたかと思います。ISOやW3C、学術ではスケーリングビットコインでBIPの話がされていたりしますが、場所場所でプレーヤーが違って、(議論の)同期が取れていない割に、一つの系として動くようにするというお話もあった。現実と理想の乖離があると思うが、そこがこれからどうなっていくか。

岸上:W3C絡みも含め私からお話すると、話は始めているが、標準化が技術・発展を縛るという苦い経験を持っている。どこかが標準化して引っ張っていく動きは多分まだそんなに強くない。淘汰された結果BGPと言う話があったが、そういう意味で淘汰の途中なのかなと言う気がしました。その速さがむちゃくちゃ早いので、このような会を開催するなら、ちょっと前はタイトルはLayer2の動向だったと思うが、今回はCrossChainとした。来年になったら別なタイトルに変えているかもしれません。淘汰はインターネットより早くされるかもしれないと思います。皆さんにも振ってみます。

奥地:私はブロックチェーン関連のコアで開発している者ではないので、淘汰がどのくらい進むんだろう、というところがあるが、ビットコイン登場以来10年でインターオペラビリティまで話が進んでいる。またインターネットと違って価値を扱っているため利害関係があるので、経済的には早く進みそうという感触を持っています。

渡邉:多様な接続の仕方があって、クロスチェーンプロジェクトがたくさんあるので、どれになるとは言えない。接続だけではなくその先にも課題がある。リソースの発見をどうしているのか、DNS的なことを離れたブロックチェーン間でどうするのか。分散トランザクションをどう設計するかが非常に大きな課題。中間帯を置くのは簡単だがそこを攻撃されたらと言う課題もある。課題はまだまだたくさんあって予測はつきにくい。

村井:2つ言いたいことがある。1つはインターネットの世界でもどちらを選択するかいろいろなことがあった。インターネットはITEFやW3Cといった場があるけど、そういうプロセスがブロックチェーンでも出来ますか、という意味もあるかと思う。いちばん重要なのは、その場があったから選べたんじゃなくて、検証できたから選べた。メトリックを定めて、正しく動いているの?これよりいいの?ということをする場所が重要だと思っている。

われわれがBaseというBlockchainLabを世界中とつないでいるのは、検証したり規格をしたりが出てきたときに、自分たちはあらゆる知恵を集めて、応用を含めて、価値の意味も変わってくると思う、そういうことを含めて相互接続関係の技術が複数あるときに、どう比較できるか、課題があるか、弱点があるかの知恵を集めておくのはすごく重要。

ここにアカデミズムは相当大きな責任を果たさなくてはならないだろうと考えている。

インターネットは俺達が俺たちのために作ってきた。インターネットを使う人がインターネットを使う人のために作ってきた。しかしブロックチェーンはちょっと違う。お金の価値がある。

インターネットはICANNというのを作った。インターネットのスペースはグローバル。そこには警察がない、裁判所もない、法律もない。そういうやばい空間を作った。これが各国の経済に影響、生活に影響、安全に影響を与え始めた。ナショナルイシュー、政府の役割なんですこれは。法律が関与してくる。これは困った。政府が禁止し始めた。そこでICANNを作った。政府に集まってもらって、ガバメントアドバイザリコミッティーをつくって、ステークホルダーの一つとして、これは政府の立場からは生意気言うなと言われたが、政府はあくまで一つのステークホルダー、人間も一つのステークホルダー、ビジネスも一つのステークホルダーということをした。

EUと日銀で調査、研究会をはじめている。ナショナルバンクという政府間ネットワークがある。そこがリアルスペースとの価値との連結の責任がある。ナショナルバンクがどう参加するのか、興味深い。インターネットの歴史からだけど。こちらの場合は先に金融のレギュレーションがあるわけだから、早期の参加、それがもう一個大事。

岸上:BASE Alliance について オープンで国際的なブロックチェーンの学術研究、東大慶應が主としている。ホームページに乗っているので詳細はあとから見ていただければ。

いろいろな会社と一緒に技術的にブロックチェーンをもっと成熟させないと使えないよね、安全にスケーラブルにするにはということで、広く開発研究をしていきたいとはじめました。

あと、10分弱、ほかにご質問あれば


会場:SFCを10年前に定年退職しました。おかげさまで私の生活は一変してインターネット中心になりました。私はそういう意味でインターネット末端ユーザーとしてお聞きしたいことがある。

インターネットの非常に大きい影響がLong tail effectだと思っています。アマゾンのようなところが儲かるビジネスということだが、ブロックチェーンの端にいる人たちのことを考えてみたいと思います。今までなかったようなことをしている気がしますが、コミュニティでなにかそういう議論はされているのでしょうか

岸上:玉石混交というか、そういう段階にはまだなってなかった、Bitcoinありきで、それからずっと来て、裏にあるブロックチェーンの技術は他にも使えますよねと、Bitcoinは限定的なことしか言っていない。みんな拡大解釈して、ちゃんと設計しない、Fiatと交換できないと脆弱性を突かれた人たちも居ますが、そういう経験をしながら強固でSafetyなものを作りつつあると思っている

奥地:ブロックチェーンで重要なところをおっしゃっていただいたと思う。ブロックチェーンはシステムを中央から個人のところに持ってきた。信頼を自分自身で守らないといけない、自分がしっかりしないとお金を取られてしまう。このまえも取引所を信頼していたら盗られてしまった。そうなると一般の、ロングテールなのかわかりませんが、使っていくということにならないと、通貨として使われないと思っている。ビットコインは使いにくい。ブロックチェーンを全部ダウンロードしてくるのに2日3日かかり、自分でトランザクションを発行するのはハードルが高い。ユーザービリティの観点が非常に重要、そういう取り組み、機関も重要じゃないか。

村井:僕はそういうのに対して結構楽観的な気がしている。ディフィー、Diffie-Hellman公開鍵暗号を作った人にこの前会うことが出来た。インターネットを最初に作ったSteve D. Crocker、Leonard Kleinrockというパケット交換を作った人、この人達が今、全員ブロックチェーンをやっている。インターネットを作ったときの志で、暗号とセキュリティの専門家がやっている。これはどういうことか、すべての人が使う技術であり、考え直さなきゃだめだと思っている。暗号の強度も考え直さなきゃだめだと、あのディフィーが言っている。分散処理の中で一人ひとりが意識してトランスペアレントな技術に、ということでみんな努力している。比較的オプティミスティックな思いを僕は持っている。

会場:スタートアップ経営している佐藤です。ビジネス観点なのでイメージの回答で良いのですが、今ビジネスにおいて、契約書を作るのに1000ぐらいのページを印刷している。もしこうした分野にブロックチェーン技術を使って、紙がいらないと言うと、4千億5千億のビジネスだと思うが、そういうことを研究されている方がおられたら紹介いただきたい

岸上:すぐ答えられる人いますか

村井:NTTのでしょ?

奥地:スマートコントラクトが自律的に動くことに大きな夢を見ていて、取り組んで居るところがございます。紙に頼っているところは技術ではないところもある。信頼の真偽として、どうもコンピューターの中のデータじゃなくて、紙を信じたいという障壁があるのかなと思っていて、そう簡単には変わらないと思う。ただデジタル化になれた人たちが、ビジネスをしていく上でそうしたところが削減されていくかなとも思います。

村井:楽観的な私が申し上げると、安倍総理がデジタルファーストと言いました。今まで紙や手でやっていたのをやるようなIT政策を辞めて、まさか使っていたら許認可でいうよ、という、紙を使うなと言っちゃった。それが国の政策です。地方行政の取引を全部デジタル化しろということを飛び越えて、ブロックチェーンでやれ、ということをしています。NTTでしょと言ったのは、多分関与されているのでは?という思いです。

一番の僕の悩みは、そうやって日本中動かすことを内閣がやっている、デジタルファーストと言ってやっている。ところが、慶応大学に戻るとみんな紙使ってるんですよ。。。

岸上:技術者、リサーチャーが少ない。日本からのこうしたムーブメント、コミュニティに入っていただいて、よりよいものを作っていきたいと思います。今日はご参加ありがとうございます、パネリストの皆さんありがとうございました。