暗号通貨、ブロックチェーンの限界とその先
(休憩から戻るのが遅れ冒頭聞けず)
斉藤
スケーラビリティ、技術のガバナンス(進化させるときにみんなで同時に変えないといけない) ビットコインの市場価値に依存している
価格が安定していないことが欠点とおっしゃっていたが法定通貨を置き換える、と言う人も居ますが、どのような意見を持っていますか
多分会場で最高齢でございます。
マクロ経済・世の中をどう変えるか
ビットコインとかに関心を持ち始めたのは2013年暮れあたりからマスコミの方がどう思いますかと効かれるようになって、いやいや調べ始めて、最初に来た記者に出来が悪いと言ってしまった。
出来が悪いというのは2つの意味です。
ひとつは価格が安定しない。ビットコインの価値の背景はマイニングや電気消費に依存する。
それでトランザクションを動かしているのは無駄。
値段がつくとそれに相応の電気代が必要になってしまう。ずれた価格が付くからバグ。あらゆる価格が合理的なので価格が安定しない。そして無駄。
中央銀行通貨に替われるかというと無理だろう。ほかでできるかと言うと作り方次第。法定通貨に代わろうと思って作られたというより、面白いから作られたと思っている。
斉藤
野心的な取り組みだと思ってみているが、実験的になってしまう。
さっき言ったブロックチェーンの課題にEthereumは取り組んでいる。取り組んでいるが、新しい方法でやっている。これは実験だと思ったほうがいい。
本人たちも実験と言っているが、大きなお金が乗ってしまっているのが不幸かと思う。
Casperはある程度ファイナリティを設けることで時間制を入れている。1時間ぐらいでファイナライズされると思うが、そのときにネットワークが分断されていない前提だと思う。ネットワークが分断されていたらファイナライズが別々のところで起きる。統合されたときにどっちが正しいのかということが起きうると思う。
Ethereumであれば価格の安定性はEthereum自体にはそこまで重要ではないと思っている。
法定通貨に替われるか、というのが6/20に書いた本で、異次元緩和批判を書いた本だが、仮想通貨についてちょっと書いてる。
- 作者: 岩村充
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2018/06/21
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岩村教授の「中央銀行が終わる日」は日本の経済学者がビットコイン、暗号通貨について書いた本で一番良いです。おすすめ。#HashHub2018 https://t.co/6Sbx5tkI7s
— Junya Hirano 平野淳也 (@junbhirano) 2018年7月21日
ネットワーク分断はこの手のネットワークなら必ず起きる。ビットコインキャッシュも。しかし、ビットコインならそんなに深刻に考えなくていい、ただのお金だから。
ところが、Ethereumはお金以外のものを乗せてしまっている。矛盾した歴史が2つ存在すると困る。記録を重視すると分断は困る。
価値だと思えば、分岐するリスクを確率として織り込める。私達も普通のお金の中にも偽札が入っていても普通に使うでしょう。私なんかは自販機とかSUICAで返されたお金は出来るだけ早く他のところで使うようにしている(会場笑)。
お金なんて本質的には分断しても関係ない。Ethereumは他のものを乗せていて、そのことをそこまで、重要に考えていない。
斉藤 ブロックチェーンを破壊するためにはネイティブトークン総額を払うと出来る。マイニングするタイプのチェーンはマイニングコストとトークン総額が均衡する。額面がEthereumの総額を超えたとき、マイニングコストより大きな借金をしている状態になり、マイニング以上のコストを(攻撃のために)払うことが合理的なので、51%攻撃をするのが合理的になってしまう。
斉藤先生とは一緒に論文書くので、二人で勝手にわかり合ってる部分があるので、他の人にわからないかもしれない。
Ethereum上で1000万借金したとき、それを取り消そうという攻撃をすることが合理的になってしまわないか、ということを考えているかという話。昔出した署名を無効にしたいというとき、前提を壊す。
ここにいる方ご存知だと思いますが秘密鍵と公開鍵がある。秘密鍵は隠す。財産を保持したいから隠す。ところが、債務超過になってしまうと秘密鍵を隠す必要はなくなる。秘密鍵はこれですよと、ネット上の掲示板なんかに書ける。
そうすると、債務負担が本当にその人が借金した、正しい負担なのかそうでないのかわからない。そうすると困る。
困らない方法があって、斎藤さんがやっているやつのコンセプトに入っている。
パブリックチェーンの課題を話してもらったが、プライベートならマイニングコストを掛けないとか、ステーブルコインを発行したり出来る。
斉藤
(プライベートは)意味がないと思っている。ブロックチェーンである必要がない。
コンセンサスみたいな印象が強いが、設計する立場からするとコンセンサス(のアルゴリズムがビットコインの実装に含まれているの)は事故みたいなもので、設計上無いと正しく作れないから仕方なく入っているみたいなものだと思う。
誰にも送金を止させたくない。システムが止められないようにする。各ノードが自律的に動作する、というようにしたい。そういう動作をさせると矛盾するトランザクションが投入されると困るので、ナカモトコンセンサスがある。
プライベートチェーンなら、すでにノードは管理下にあるので、自律的に動作させる必要がない。ノードが動作しないとすればそれは障害で、従来からの障害対応を行う、対策を行うだけ。
あまりそういうことは、いくらなんでもブロックチェーンの人が可愛そうすぎるので、プライベートの肩を持つと、私達は順序とかを、当然わかっていると思っている。オンラインシステムは順序がある前提で設計されている。東さんから100万円もらって、そしたらすぐに斎藤さんに渡したいと思っている。
センターがあると順序の管理が出来るが、広がったネットワークで考えれば同時という議論をしてもしょうがないので、目的に合わせた時間ぐらいは、ひとかたまりだと捉えたほうが合理的といえる。
センターにメッセージが到着した順序で順序を決めるが、分散処理でそんな事はできないのだから、ブロックを作ることには合理性がある。チェーンがいいかは微妙。チェーンはブロックとブロックの順序性を意識している。
(ブロックタイムは)Ethereumは契約を維持しようというので1時間なのでしょうけど、通貨として考えるとFinalityに1時間は困りますね。夏の鯖寿司だと本当に大変(会場笑)。1秒ならいいですかというと、1秒でもまずいものもある。1秒は大変長い時間です。仮想通貨で駅の改札を通ろうとするとき、1秒改札が開かなければ大変なことになりますから。
Ethereumが面白いのは、目的をはっきりしないで、あまり意識しないでやっている。一生懸命考えているが、世界は見渡せていない、チャイルディッシュ(?)だと思うところですね。
Lightningネットワークとかで外側で早くしちゃおうというのもいいのだけど、どこかに引き受ける主体が必要になってその信用どうするかという問題になる。ペイメントシステムの安定性と同じ問題になる。
斉藤
ペイメントチャンネルまではわかる。Lightning Networkになると、Rootingするので故障点が増える。安価な夢のようなペイメントネットワークは無いんじゃないかと思う。
ここまでパブリックプライベート両方指摘されていたと思いますが、ブロックチェーンの先の話し、どのように課題は解決可能か
一つのアイディアとしては履歴交差、古文書モデル。
サトシ・ナカモトもブロックチェーンに相当するのは新聞モデル。みんなが見てるから改ざんできない。新聞を改ざんできなくするためにPoWしている。
コストと関係ないものでどうやって改ざんすることが難しく出来るか。
古文書モデルというのは、ある古文書が、より新しい古文書から参照されるからあったかもしれない、ほかからも参照されているとあったかもしれない、参照モデルで存在を証明していく。
IOTAのタングルは一つの空間の中でそういうことをするので攻撃しやすいと思っているが、攻撃を避けるためには、アプリケーションごとにプライベートなチェーンを持っているだろうから、それらを無関係なところと交差させる。
そうすると矛盾なく書き換えるには書き換えまくる必要があるので難しい。
DAGというと皆さんわかりやすいかもしれないが、DAGはただの有向非巡回グラフという意味で、ビットコインのチェーンもDAGと言えるので、(みなさんがDAGで想像するものだけを指すつもりで)DAGとは言わないほうがいいと思う。
私達は源氏物語があると思っていますね?「いずれの御時にか」で始まらない源氏物語は存在しないと思っている。
でもどこにも原本はないわけです。でも「いずれの御時にか」が源氏物語だと考えられているのは、それはそういうふうに転写されたものがたくさんあるから。
人間も、ミトコンドリアを調べていくと、全人類はアフリカのある女性にたどり着く、だれもその助成が誰か知らないけど、そういうひとがいたに違いないということがわかる。
他の台帳なり要約値を集めてきて記録しあう、ブロックチェーンというよりブロックメッシュのようになると、全体を改ざんすることは難しくなる。これを斎藤さんがBeyondBlockchainと言っている。
コストを掛けることでナカモトコンセンサスしているが、お互い支え合うのは面白いと思う。しかしこのままだとブロックチェーンがボコボコですが、私は、コストを掛けても維持されている誰にも管理されないチェーンは新しいものになると思っています。お二人は、勝手に発行できる通貨と違ってコストを掛けて発行される通貨に価値はあると考えますか
斉藤
アンカリングする先にパブリックブロックチェーンを利用する。
モナコインやビットコインゴールドがセルフィッシュマイニングによる攻撃をやられたのは、ハッシュレートが波打っているから。
ビットコインのハッシュレートは指数関数的に上がっている。ということは限界がある。だからビットコインはここ数年かなという感覚はあります。
ハッシュレートが上昇し続けない限り攻撃されるって、どういう理屈だろ? #HashHub2018
— mosa (@mosa_siru) 2018年7月21日
一つのものは持続しなくても、“そのような現象”は繰り返すと思う。全体としては何かはサポートできる。普遍の価値や全体の安全は無い。すべてのものは一定の可能性の中で育ったり消えたりしている。
ビットコインが本当に安定的に作られていたら、だれもビットコインに注目しなかっただろう。
パブリックチェーンと言うかは別として、ある程度は自分が持っている情報を開示して、パブリックでアクセスできる状態には持っていって、一定時間ごとにハッシュを開示する、お互いに引用しあう、そいう言ったものはできてくるだろうなと思う。
1974年に日銀に入って97年末まで居たが、法定通貨の体系を作る人達の頭の中に、景気対策に貢献しようとか、選挙対策に貢献しようとすると、コストが懸かっても、やろうということが大事になる。
それで、いまも金やビットコインに価値を見出す人はいる。でも金もビットコインもどうでもいいもの。ところがどうでもいいものに価値が見出されているという意味で、ビットコインは究極の貨幣かもしれない(注: このあたりの言い回しを正しく記述できているか自信がありません)